「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
178 / 338
13章 新たなる大陸へ

178、帝国の剣

しおりを挟む
「そなたは……何者だ?」

 皇帝の質問を無視して悠然と歩く。

「止まれ無礼者!」

 皇帝は眉間にシワを寄せて漆黒の剣士を威圧する様に言葉を放つが、意に介すことなく前進をやめない。
 ほとんどが困惑する中にあって剣神は笑った。

「退がれ剣聖。これは私の獲物だ。」

 ティリオンは赤いマントを翻す。玉座へと続く階段を降りながら剣神はガルムに尋ねた。

「君がデザイアか?」

 その質問にようやくガルムは足を止める。

「……違う。」
「ほぅ? つまりこういうことか? デザイアの様に強い敵が複数居ると?」
「……それも不正解だ。デザイア様は絶対であり、何者も並び立てない。我が名はガルム=ヴォルフガング。冥土の土産に持って逝け。」
「ふふふ……良いね。私は剣神ティリオン=アーチボルト。君を斬り、デザイアをも斬り捨てる男の名だ。その矮小な魂に刻め。冥府に私の名を轟かせるが良い。」

 ティリオンはガルムとの間合いを図りながら足を止めた。

 黄金の鎧と漆黒の衣装。
 光を反射し輝く者と光を吸収する者。
 自信に満ち溢れた表情と無の表情。

 全く真逆の性質をもつ相反する2人は、唯一共通する剣を用いて生命を取り合う。

 ティリオンは錫杖の様な棒を取り出し、横にかざす。するとまるで光が収束するように光の刃が姿を現した。

 封印指定級魔剣『カラドボルグ』。
 帝国が保有する神器と称される魔剣の一つ。
 伝説の鉱物であるオリハルコンやアダマンタイトをまるでバターのように切り裂くとされるこの魔剣は、柄の先から光の刃を瞬時に無限に伸ばすことの出来るシンプルな能力。
 シンプルではあるがリーチが存在せず、重さも変わらないので、小枝のような重量のまま振り回すことが可能。
 まるでリボンのようにしならせることも出来、扱い方次第では多種多様な戦い方が出来る万能な武器だ。
 ただ万能過ぎるがゆえに逆に扱いが難しく、現状は剣神にしか扱うことの出来ない武器である。
 魔剣のランク、扱い難度共に最高位の魔剣である。

 世界一の剣と世界一の術理が合わさった時、何者も覆せない無双の剣と成る。

「君も抜いたらどうかな?」

 ティリオンは剣をかざして挑発する。
 鞘に収まった刀の長さから考えると魔剣カラドボルグの今の出力した長さと同等かもう少し長い程度。この長さをベースに考えるならどちらも必ず踏み込まなければ届かない距離である。
 しかし前述の通りカラドボルグは一瞬にしてその切っ先を無限に伸ばすことが出来る。どれほど遠くに立っていようとも、こうして剣をまとに向けている間は全て必殺の間合い。剣を自慢する様に振りかざし、隙だらけに見えるこの姿こそ最も危険な状態なのだ。
 帝国の人間であるならば知っているこの事実を知らぬのは、この場限りで言うとニールとガルムのみ。

 これはティリオンによるテストである。戦うに値する敵かどうかの認定証。
 防具や魔法障壁に頼る内は愚者。
 違和感を感じて武器を構えるのは通常の行動。
 殺気を感じてティリオンを軸に回り始めたり飛び跳ねたりすれば正しく強者。
 ティリオンでも予期しない形で間合いを詰めて来る様であるなら最高である。

 常に絶対者として君臨していたティリオンだからこその上位者目線。最強は傲慢である。

 ならばガルムはどうか。この状況をどう捉えたら良いのか。
 答えは沈黙。
 武器を構えることも魔障壁を張ることも無い。鎧も着ることのない完全な無防備。「何か出来るものならやってみろ」と言わんばかりの顔だ。何ならちょっと視線を外して剣聖の位置や皇帝に視線を移していることもある。

(……こいつは愚者か。いくら実力があろうとも私の殺気を感じ取れない間抜けと戦う趣味はない。楽しみにしていたと言うのに残念だ……。いや、あくまで私の狙いはデザイア。こいつは功を焦ったただの一般兵に過ぎまい。これで終わりとしよう。)

 ティリオンの独白が終わり、ガルムに向けたカラドボルグが火を吹く。

 ──ヒュパンッ

 そう皆が確信したその時、ティリオンの体が砕け散り、血煙となってこの世から消滅した。

「……え?」

 その漏れ出した声は皇帝のものだ。何よりもティリオンを信じ、誰よりも剣神を恐れた者から発せられた絵に描いたような疑問の声。
 それはこの場の全員の思考回路。
 ポコッと何かが欠損したような、電源をパチッと切られたような、真っ白で真っ黒な時間と思考の停止。

 そんな中で何も無かったように悠然と歩くガルム。
 自分が何をしたのか理解出来るはずもなく。

 その足で皇帝の眼前に立ち、見下ろすまでの間は誰もが思考を放棄していた。

「……な、何でしょうか?」

 いつもの威厳たっぷりの皇帝は鳴りを潜め、ただの一般人のように質問する。

「……跪け。」

 ──カランッ

 ガルムの言葉と共に体を投げ出し、皇帝は這いつくばった。
 頭から落ちた王冠はルオドスタ帝国の行く末をも表していた。



 帝国がガルムの活躍によりデザイアの支配を受け入れた頃、聖王国ゼノクルフでも事は起こっていた。

 真っ白な衣装に身を包んだ長い一本角が特徴的な空飛ぶ老人が教皇ポープガブリエル=エル=リード=リベルティアの眼前に姿を現した。

 魔神ヴァイザーは聖王国の頂点トップに直接殴り込みを掛けた。
 演出を兼ねて背に日輪を模した輪っかを背負い、テレポート魔法により玉座の間に侵入を果たす。

 こういった侵入を妨害するために魔法防壁を城に施していたのだが、ヴァイザーの前には意味を成さず、全く反応出来ないまま今に至る。

「おぉ……。」

 ガタッと立ち上がったガブリエルにヴァイザーは槍を突き付ける。
 服従を命令しようとしたその時、ガブリエルはへたり込むように両膝を床へつけた。そして仰ぎ見るようにヴァイザーを見ながら迎え入れるように両手を広げる。

「よくぞおいで下さいました。神よ。」

 ガブリエルの言葉に目を剥いて驚いたのは玉座の間に居た信徒だけではない。ヴァイザーもあまりのことに驚愕していた。
 ここに居た者たちの目に映ったのは老人の見た目をした化け物。それを指して神などと何を言い出すのか。それも聖王国の教皇トップが、だ。

 しかしそれもそのはずで、ガブリエル唯一の能力である『魔力識別眼マナアイ』で見た景色はまさに神の降臨と思える。
 その神々しい姿を目の当たりにしたガブリエルは滝のように涙を流し、人生を掛けた信仰が報われたと錯覚していたのだ。

「……如何にも。儂は神。そなたらを導き、安寧を与えよう。」
「おぉ……ありがたき……幸せぇ……。」

 感無量のガブリエルは床に額を擦り付ける。そこにヴァイザーの足があれば縋りつき、靴でも舐めそうな勢いである。
 その姿に全員が崩れ落ち、祈るように手を組んで絶望から必死に目を逸らす。聖王国の没落を予感させるこの状況にヴァイザーは破顔した。
 全員が神である自分に祈りを捧げているように感じて心が躍る。

 無血開城。
 いや、それ以上だ。
 ヴァイザーは今までの侵略行為で初めて一滴の血も流れることなく支配を完了させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
*読者のみなさま  この作品をお読みいただきありがとうございました。こちらの作品は1月10日12時をもって非公開とさせていただきます。 『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

処理中です...