「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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12章 災厄再来

165、広大

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「ここがアノルテラブル大陸……」

 船に揺られて数日。
 ニールの乗る魔法駆動機関を搭載した貨物船は、ローディウス卿の乗る強力な戦艦に付かず離れず一定の距離を取りながら後をつけ、ようやく大陸に到着した。
 港はよく整備されたもので、ニールたちが住んでいる大陸の港に比べると、その差はハッキリと浮き彫りになってしまう。殺風景の田舎と賑わう都会といった雰囲気の差に圧倒されてしまう。

「ニール、遅れるな」

 ブルックに急かされて馬車のような乗り物に乗らされる。しかし前に御者は居るものの、馬が居ないというへんてこな乗り物であり、これから馬でも繋ぐのかと不思議に思っていると急にゴトゴトと音を立てて走り出した。

「……推進力は何だ?」
「魔力だ。ふっ……驚くのも無理はない。魔石を利用した機界大国の技術が用いられている。何でも魔石をドロドロに溶かして『魔流石』と呼ばれるものに変え、血管のように張り巡らせた細い鉄管に流し込むことで魔力の伝導率を上げているそうだ。鍵となる魔石をはめ込むことで作動する仕組みで、この時はめ込む魔石に魔力を入れ忘れたら大変なことになるそうだ。だから魔力切れを起こしたときの代役に運転手は魔法使いマジックキャスターに限られている。ちなみにネックレス状に魔石を繋げた『ストリング・キー』を使用すれば魔力切れを防げるし、魔力の流し具合では馬車より速く、休みなしで走り続けることも可能だ」
「……ブルックは……こういうのにも詳しいんだな。剣にのみに生きて来たよう見えてたから何だか意外というか……悪く捉えないでくれよ」
「気にしない。不足の事態に対応するために必要なことだ。この大陸でしばらく過ごす気なら覚えておいて損はない。まぁ君が操縦席に乗ることはないだろうが……」

 港町を出て殺風景の荒野に出た瞬間、一気に景色が流れ始める。馬でこの走力は出ないし、車輪が回っているなら凄まじい振動が車内まで来そうなものだが、振動はほとんど無く、風を切る音だけが聞こえて来てストレスはほとんど感じない。

「……え? も、もしかして浮いているのか?」
「ああ、ほんの少しだけ浮かせている。速力を出すのには設置面を減らすのが良いらしくてな、これが馬車より速い理由、だそうだ。ただ速すぎるらしく運転手もかなり気を配ることになる。今日迎えに来てくれたのは帝国でも選りすぐりの運転手だから安心してくれ」
「こんなに目立つとローディウス卿にすぐにも見つかるのでは……?」
「問題ない。海では貨物船を装っていたから先んじることは出来なかったが、陸ならば話は別だ。あちらが急いでいるように、こちらも急いでいる。一刻も早く帝国に戻り、策を練らねば……」
「そ、そうか……大丈夫なら良いんだ。しかしここまで自分の生まれた場所と違うなんて驚愕だよ。まるで自分だけが時間に取り残されたような気さえする」

 ニールは流れる景色を眺めながらため息をついた。ブルックはそんな横顔を見ながらフッと微笑む。

「……大陸が変われば常識も変わる。私も君らの大陸に慣れるのに時間が……」

 ブルックはキュッと顔を引き締める。車内にある装飾の結晶に触れるとピコッピコッと点滅し、それと同時に魔動車の速度が落ちる。

「な、なんだ?」
「出るぞ」
「なに? あ、おいっ……!」

 ニールが困惑気味にブルックを止めようとするが、それを無視して車外へと出る。ニールもつられて出ると、そこには10mを超える単眼巨人サイクロプスが歩いていた。その手に握られているのは岩盤を削り出して作ったこん棒である。

「デ、デカい……」

 ニールが見たことのあるサイクロプスは半分ほどの大きさであり、どちらかというと脂肪の方が多い。しかし今目の前にいるサイクロプスは鉱石を削り出したような筋骨隆々な見た目に天を衝く巨大さ。メガサイクロプスと呼ぶにふさわしい見た目に圧倒される。
 もしニールたちの大陸で発見されたら冒険者ギルド総出で対処に当たるだろう。

「……この装備では時間が掛かるか……仕方ない。遠回りをするぞ」
「畏まりましたマキシマ様」

 運転手は右手を胸に添えて軽く会釈をしながら承諾した。

(あれにブルックは今の装備でも勝てるというのか?!……いや、それとも奴の戦闘領域を突っ切るのに時間が掛かるということか? どちらにしろ時間を稼げる時点で凄まじい強さだ……もしかするとレッドと同系統の……)

 ニールが1人想像の中で驚愕していると不思議なことが起こった。メガサイクロプスはピタリと停止し、ググゥと筋肉を鳴らして振り返る。
 直後、全身に無数の光の筋が走り、筋に合わせて肉体が左右上下にズレた。

 ──パガァッ

 体が弾け、メガサイクロプスは肉塊となってその命を散らした。

「……え?」

 突然のことに驚いていると肉塊に人影が一つ降り立った。

「随分遅い到着じゃないか。ブルック=フォン=マキシマ。……待ちくたびれたよ」

 その声にニールは困惑してブルックを見たが、ブルックは目を伏せて跪く。

「サイクロプスの撃破に感謝致します。『剣神』ティリオン=アーチボルト様」
「けん……しん……?」

 黄金の鎧に赤いマントを羽織ったハーフエルフ。帝国最強の剣士である。

「客人も連れてくるとは……お前にとってこれからのことは遊びなのかな?」
「申し訳ございません。しかし彼の潜在能力に私は期待しています。出来ますれば、帝国まで同行させたいと考えております」
「ブルック……」
「そこまで私に歯向かうか?……ならばお前の好きにせよ。客人、名は何という?」
「ニ……ニール=ロンブルス」
「ようこそニール=ロンブルス。滞在を楽しむが良い」

 ティリオンはニヤリと笑いながらマントを翻す。

 世界は広い。
 住んでいた大陸を離れて数日。技術も陸地も魔物も能力も、この一時で何もかも自分の常識を覆してしまった。
 途方もない強者は各地に点在し、仇なす者を許しはしない。

 世界各国はデザイアの侵攻に守りを固め、戦いの時を待つ──。
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