「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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12章 災厄再来

159、覚悟

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「え? お父さんが……?」

 レッドはグルガンと共にスロウの元を訪れ、デザイアとの初絡みについてを報告した。この一件で確実に戦闘に発展する旨を添えて。

「またこのパターンだよ……」
「デザイア様も懲りないよねぇ……」

 デザイアの執着と横暴な行動、そして関心と共感と妥協点の無い自己中心的な考えがすべてを失った原因であるというのに、まるで反省していない。
 やり方や考え方に多少の違いはあれど、やっていることは結局わがまま。これには極戒双縄も苦笑いである。

「だが、前と決定的に違うのは力だろうな。その我儘を押し通せるだけの力を兼ね備えている。その証拠に今周りを固めている魔神たちはデザイアの意向に逆らえていない。我々が反逆する度に目を丸くしていたのは滑稽ですらあった」
「そ、そんなこと言っている場合じゃ無いですよ。俺たち完全にお父さん……デ、デザイアさんを怒らせちゃったんだから……」
「そうだぞグルガン。ふざけている場合ではない。事は急を要する」

 オリーが嗜め、レッドは恐怖に慄いている。
 しかしスロウは機嫌が悪そうにムスッとした。

「……ほんとにちっとも変わってないよ。周りのことなんてお構い無しにどんどん進んでいこうとする……私の気持ちも考えずに……!」

 スロウは寝転んでいたソファから立ち上がるとおもむろに家から出て行く。それに釣られるように2人がついていくと、スロウが空を仰いで目を瞑っているのを見た。

「私の心は私のもの……」

 ポツリと呟いた言葉にレッドは目をしばたたかせた。そして意を決してスロウに話しかける。

「……ス、スロウはどうしたいの?」

 スロウはゆっくりと瞼を上げ、流し目でレッドを見ながら悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「私がどうしたいか……かぁ。それはレッドの気持ち次第……かも?」

 レッドは心を見透かされたような気になって口を結んだ。
 スロウは普段の言動からは感じられないほどに時々鋭く、かなり頭が良い。スロウがデザイアに反抗心を抱いているのを感じ、レッドがその安心感からスロウに質問したことがバレているのだ。

「ごめん……なんていうか、その……俺は嫌われたくなかったんだ。誰かに俺の『思い』を背負って欲しくなかった。それが『重い』って思って欲しくなかった。俺なら全部背負えるから。背負わされてもどうにか出来ることならどんなことでもしてみせるから……だから俺、最初はどこかに入れてもらえたらそれで良いって思ってた。使いっぱしりで良いから入れて欲しいってさ……でもどうにもならなかった。あの時は何でか分からなかったけど、今やっと分かったことがあるんだ」
「……それは何?」
「あ、えっと……選んでいたんだよ。誰でも良かったわけじゃないんだって。俺が俺であることを許してくれる人と一緒に居たかったんだって……もうこれ以上傷付きたくなかったから……だから俺のことを知ってくれてた昔の仲間に固執してたんだなってさ……」

 レッドは無意識に『スロウの気持ち』という盾を利用しようとしていた。スロウが出て行きたく無いと自ら言ってくれればそれを錦の御旗にして戦えると考えたから。自分の手を汚すことなく大義名分を手に入れられたら楽だから。
 だがこの瞬間それは卑怯だと教えられた。自分の本当の気持ちに向き合わず『スロウの気持ち』で戦うなど間違っている。
 誰かが『こうだから』では無い。自分が『どうしたい』かなのだ。

「格好つけて『来るもの拒まず、去るもの追わず』なんて思ってたけど、そんなの嫌だ。俺は俺のものを取られたくない。たとえそれが血が繋がってても、運命だって言われても、そんなの関係ない。俺は手に入れたものを手放したくないんだ」
「レッド……」

 レッドは素直な気持ちをぶつける。その思いを聞いたスロウは目を見開く。レッドに今は亡き弟のグリードが重なった。
 『強欲』な弟。生きているだけでも迷惑極まりなかった乾きの獣。全てを欲し、全てに否定された忌まわしき存在。

 それでも唯一の弟だった。死んで欲しくはなかった。

「俺はスロウに出て行って欲しくない。スロウは俺の仲間……いや、家族だから」

 ──ドキッ

 重なったイメージは徐々に消え去り、残ったのはレッドのみ。その真剣な顔に心臓が高鳴るのを感じた。
 この瞬間、スロウの中で指針が決まる。

「……私はお父さんが帰って来てくれて嬉しかった。また会えて、触れ合えて、話が出来て……それでも私は私。誰かに左右される自分じゃなくて、全部私が決めたいから……」
「スロウ……」
「だから私はレッドと居たい。誰に止められたって、反対されたって、嫌がられたって構わない。私は今度こそ失いたくないから……」

 デザイアという悪しき存在が全てを壊していく。自分がこうあろうと決めることが許されない空気を作り、全てを奪い取ろうとしている。
 しかしスロウは決めた。レッドと共に生きていくと。
 結局スロウも不安だったのだ。自分の気持ちに正直になれば迷惑がられるかもしれない。追いすがった時に振り払われたら、もう二度と自分の意思で立てないような気がして。
 スロウの憑き物が落ちたような優しい笑顔、その言葉にレッドの不安は解消される。

「……うむ。決まりだな」

 グルガンとオリーは頷きながらニコリと笑った。



 夕暮れ時。赤く彩られた大地に巨大な影が差す。

 急に夜が訪れたのかと思うほどに日の光を遮り、現れたのは大陸並みに大きい浮遊する要塞。
 まるでビニールの壁を引き裂くように空を割って現れた無機質で刺々しい万物の塊は、何も知らない、知る由もない一般人たちに途轍もない何かがやってきたことを知らせる。

 空中に浮かぶ島など神話や絵物語でしか見たことも聞いたこともない。ある意味空が白く濁るよりも衝撃的な光景。
 女神復活以上に神の襲来を告げる浮島は1つだけでも凄まじいが、巨大要塞の背後に大小さまざまな浮かぶ要塞が5つもついてきていた。

 真っ黒で光沢のある黒曜石のような要塞。蠢く気色の悪い巨大生物を基礎とする奇怪な要塞。美しく幻想的な建物が建てられた都市のような要塞。一際目立つ一本の塔が建っている要塞。そして大地そのものを切り取って浮かせたような要塞。

「ありゃぁ……なんだ……?」
「この世の終わりか……?」

 無視することなど不可能な巨大すぎる浮かぶ要塞群は、すべての者たちに恐怖と共に世界の終焉を予感させた。
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