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5章
40、嫉妬心
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魔導国ロードオブ・ザ・ケイン。最新の魔道具や魔法が研究されている人類の叡智の結晶。魔法使いの聖地としても名高いこの国に、冒険者ギルドで名を馳せている最強のグループの一角が到着した。
「ふぅーっ。やっとたどり着いたねライト」
「まったく。あのハウザーとかいう魔族のせいでとんだ迷惑を被ってるわ。例えば、アヴァンティアからここまでの移動とかさ」
──ドサッ
ライトは大荷物を置いてグッと背筋を伸ばす。
「すまないみんな。でもみんなが傷つくのを黙っているわけにはいかない。俺は全員が無事に冒険出来る世界を望んでるんだよ」
ラッキーセブン。リーダーのライト=クローラー以外は女性で構成されたハーレムチーム。冒険者ギルドでビフレストに次ぐ冒険者チームであり、永遠の2番手と揶揄される優秀なチームである。
「……はぁ。分かってるわよライト。私たちはライトを信じてるんだから。でもあの魔族だけはどうしても許せなくて……」
「だよねぇ。ところでさ、今日はあそこに泊まらない?黒猫亭とか」
「黒猫亭ぃ?あそこはそれほどでもないでしょ?もっと良い宿があるのになんでそんなとこに……」
「節約のためだな、武器やアイテム購入の助けになる。それにあそこはハルの親戚の宿じゃなかったかな?」
「さっすがライト!あたしのこと分かってる~!ま、そういうことでおじさんに少し値切ってもらっちゃおっかなって!」
ハルと呼ばれた女性がフフンッと鼻を鳴らしながら踏ん反り返る。ライトに貢献出来たことに優越感を感じているのだ。そんな彼女に嫉妬する仲間たち。
「ほらほら、みんなそんな顔しないで。宿は黒猫亭だろ?あそこの料理は絶品だし、今日ぐらいは良いものを食べようじゃないか。俺が奢るよ」
「本当!?やったやった!」
ライトの提案に目の色を変えてはしゃぎ回るハルたち。ライトは単純な彼女たちをやれやれといった笑顔で見ていた。これがラッキーセブンの日常。
「……ん?」
その明るい彼女たちの隙間からチラリと赤髪の男が、彼女たちよりさらに陽気に歩いている姿が見えた。かなり距離があったが、男の笑顔を確信出来るほどに喜びに満ち溢れていた。何がそんなに嬉しいのか気になったが、ハルたちが感謝と催促のために腕を組んできた。次に目を向けた時には完全に見失っていた。
(……まぁ良いか)
ライトは肩を竦めて移動を開始した。
*
レッドはオリーを引き連れてルイベリアのラボに直行した。
「ルーさぁんっ!」
ゴゥンゴゥンッと金属の重い扉が軽く開いていく。力を入れすぎたためか最初にベキッという何かが壊れたような音が鳴ったが、レッドはまったく気にしていない。
(これ絶対鍵かかってたよね……)
ミルレースは金属の扉を見ながら呆れる。オリーもレッドに続いて建物内に入り、少し辺りを見渡した。レッドが呼んでいるのに一向に出てこないのを察してオリーがレッドの肩を叩く。
「レッド、今この建物に人の気配は無い。別のところに居るのではないだろうか?」
「あ、そうか。魔導局に居るのかもしれない」
『あそこに行くのですか?気が進みませんね……』
「何故だ精霊」
『精霊って……まぁいいけど。テスっていう嫌な女がいましてね。レッドの話をろくに聞かずに研究室から追い出された経緯があるんですよ』
「……許せないな」
「いや、良いんだよオリー。あの時はショックだったけど今考えると些細なことさ。じゃあ行くか魔導局へ!」
今のレッドは無敵である。昔の嫌な記憶を塗り替えられる幸福。間接的とはいえ、今の幸福をもたらしたルイベリアに感謝の気持を伝えねばならない。オリハルコンを持ってきたのは感謝の気持ちと幸福のお裾分けなのだ。
『レッド。先にオリーの服を見繕いませんか?クロークがボロボロで、はしたなく見えてしまいますよ?』
「ハッ!?確かにそうだ!すまないオリー。俺のことばっかりでそのことをすっかり……」
「いや、私のことは後で良い。先に用事を済ませよう」
「そうはいかない。俺なんかよりもお前のことが最優先だ。ちょっと銀行でお金下ろすからついてきて」
「ああ、分かった」
レッドは貯めに貯めながら使えなかった貯金を崩す。この時のために取っておいた仲間のためのお金。レッドは満面の笑みで膨らんだ財布を懐にしまった。
*
「素晴らしい!お似合いですよお客様!」
服屋で試着していたオリーを褒めちぎる店員。本来ならただのおべっかなのだが、絶世の美女であるオリーにはどんな服でも似合うことが約束されている。ここで働いて長い女性店員は、最高の着せ替え人形に出逢ったと今までの人生で一番興奮しながら服をあてがう。
「どうだろうレッド。似合うか?」
「うん。何でも似合うなオリーは。……こうなると何を買って良いのか分からなくなるな」
『基本的な形で良いのでは?ほら、外で歩いてる魔法使いたちのような出で立ちとか』
「ああ、それ良いな。オリー、魔法使いでいこう。店員さん、彼女をこの街の風景に溶け込むような衣装にして欲しいんだけど。ローブとトンガリ帽子も込みでいいから」
「はぁ?!彼女はもっとこう、派手で高級な衣装を着せるべきです!王族と見まごう素晴らしい衣装とか!」
「……いや、そういうのはちょっと……」
熱が入りすぎた店員に気圧されながらもレッドは要望をしつこく伝える。レッドが客である以上、店員は客の要望には答えなければならない。女性店員は渋々了承し、オリーを立派な魔法使いの出で立ちにしていった。
「あ、あの……興奮してしまって申し訳ございませんでした。今後も当店をご贔屓いただけますようよろしくお願いします」
店員は顔を赤らめながら謝っていた。オリーに。
『レッドに謝りなさいよ!』
「ははっ、良いんだミルレース。オリーの服が買えただけで俺は満足だから」
「ありがとうレッド。大切にする」
ヒラヒラと楽しげに布を踊らせるオリーにレッドは満足そうに頷いた。喜ぶオリーを見ているとふと大事なことを思い出した。
「あ、そうだ。忘れない内に剣を買っておこう」
今度は武器屋に移動する。レッドは折れた剣を回収してもらいながらロングソードを購入した。
『またロングソードですか?もっと強い武器があるでしょ?』
「これはちょっとしたこだわりっていうか、同じ武器を長いこと使ってたからしっくり来るんだよな。こう、握りが良いっていうか……」
「自分にあった武器を使うのは理に適ってる。こだわりは大事だな」
「んもー。全肯定じゃーん。オリー大好き」
「私も好きだぞ。レッド」
急に照れくさくなったレッド。新たな剣を腰にさしてキリッと顔を引き締めた。
「……良し、こんなところで油を売っている場合じゃないな。ルーさんに会いに行こう。話はそれからだ」
少し時間をかけたが魔導局に向かうことにした。武器屋の扉に手をかけた時、先にガチャリと開けられる。レッドは「おっとと……」とバランスを崩しかけつつも、先に開けた人物を確認した。
「ん?」
そこに立っていたのはライト=クローラー。背後にはライトを囲う女性陣。ラッキーセブンに鉢合わせたようだ。
「あ、は……す、すいません」
レッドはライトに気づいた瞬間すごすごと下がった。相手が同業でも超有名人のチーム。レッドとは冒険者としての格が違う。
「いや、こちらこそすまない。先に出てくれ。こっちの方が人が多い」
ライトはメンバーを下がらせる。女性陣はレッドを睨むように訝しい顔を向けた。針のむしろというには大げさだが、突き刺さる視線にレッドは俯く。これ以上敵意を向けられないようにレッドはそそくさと店から出た。それに付き添うオリーはレッドとは逆に、まったく非がないことを示すかのように堂々と出て行く。
「……っ!?」
ライトはオリーの横顔に釘付けとなった。
(う、美しい……)
今まで見たこともないほどの美貌。異性は好きだが、心の底からトキめいたことのないライトの心臓が跳ね上がった。2人の背中から目が離せないでいると、店の中から声をかけられた。
「ライト?入らないの?」
「え?あ……」
レッドたちが出ていったところを見計らって女性陣は先に中に入っていったようだった。その移動に全く気づかないほどの衝撃。もう一度振り返ったがすでにレッドたちの姿はなく、完全に見失ってしまった。
「……すぐに入るよ。みんなの武器を選ばなきゃダメだからな」
ライトは後ろ髪を引かれる思いで店内に入った。先に入ったメンバーたちがひと塊りになって喋っている。それぞれの武器を物色しているのかと思ったが、話を聞いてみるとそうでないことが分かった。
「え?あれってレッド=カーマインじゃなかった?」
「……ええっと、誰だっけ?」
「ほら、ビフレストから追い出されたって……」
「あ、そっか。え?なにあいつ。魔女連れてたんだけど?もしかして初心者狩り?」
「ありえる~!どっこも入れてくんないから駆け出しのを狙ったってことでしょ~!キモォ!」
冒険者の中には自己中心的で他人と仲良く出来なかったり、宝物を独り占めしたい性分だったり、女ったらしや職業のスキルを育てられない未熟者だったりと、そこそこのベテランでも絶望的に冒険者としてセンスが欠けるものたちが存在する。
そういう者たちほど初心者を利用して旨味だけを得るダーティープレイに走りがちだ。俗に”初心者狩り”と呼ばれる割とよくあることで、まともな冒険者からは倦厭されている。
「……だとしたら許せないな。あんな子を食い物に……それは男として恥じるべきことだ」
ライトは神妙な顔つきで呟く。初めて心の底を揺れ動かした女性がレッドによって食い物にされようとしている。由々しき事態だ。
「あ、ライト」
「ほらほら、こんなところで固まってたら冷やかしだと思われるよ?ここであまり時間もかけられないしさ。さぁみんな、自分の武器を探して」
「「「は~い」」」
ようやく各々の武器を探しに商品棚に向かっていく。全員がライトから離れたところを見計らい、口の中で転がすように呟いた。
「レッド……カーマイン……」
ふつふつと湧いてくる感情。それはこの国に来た理由を忘れさせるほどの嫉妬心だった。
「ふぅーっ。やっとたどり着いたねライト」
「まったく。あのハウザーとかいう魔族のせいでとんだ迷惑を被ってるわ。例えば、アヴァンティアからここまでの移動とかさ」
──ドサッ
ライトは大荷物を置いてグッと背筋を伸ばす。
「すまないみんな。でもみんなが傷つくのを黙っているわけにはいかない。俺は全員が無事に冒険出来る世界を望んでるんだよ」
ラッキーセブン。リーダーのライト=クローラー以外は女性で構成されたハーレムチーム。冒険者ギルドでビフレストに次ぐ冒険者チームであり、永遠の2番手と揶揄される優秀なチームである。
「……はぁ。分かってるわよライト。私たちはライトを信じてるんだから。でもあの魔族だけはどうしても許せなくて……」
「だよねぇ。ところでさ、今日はあそこに泊まらない?黒猫亭とか」
「黒猫亭ぃ?あそこはそれほどでもないでしょ?もっと良い宿があるのになんでそんなとこに……」
「節約のためだな、武器やアイテム購入の助けになる。それにあそこはハルの親戚の宿じゃなかったかな?」
「さっすがライト!あたしのこと分かってる~!ま、そういうことでおじさんに少し値切ってもらっちゃおっかなって!」
ハルと呼ばれた女性がフフンッと鼻を鳴らしながら踏ん反り返る。ライトに貢献出来たことに優越感を感じているのだ。そんな彼女に嫉妬する仲間たち。
「ほらほら、みんなそんな顔しないで。宿は黒猫亭だろ?あそこの料理は絶品だし、今日ぐらいは良いものを食べようじゃないか。俺が奢るよ」
「本当!?やったやった!」
ライトの提案に目の色を変えてはしゃぎ回るハルたち。ライトは単純な彼女たちをやれやれといった笑顔で見ていた。これがラッキーセブンの日常。
「……ん?」
その明るい彼女たちの隙間からチラリと赤髪の男が、彼女たちよりさらに陽気に歩いている姿が見えた。かなり距離があったが、男の笑顔を確信出来るほどに喜びに満ち溢れていた。何がそんなに嬉しいのか気になったが、ハルたちが感謝と催促のために腕を組んできた。次に目を向けた時には完全に見失っていた。
(……まぁ良いか)
ライトは肩を竦めて移動を開始した。
*
レッドはオリーを引き連れてルイベリアのラボに直行した。
「ルーさぁんっ!」
ゴゥンゴゥンッと金属の重い扉が軽く開いていく。力を入れすぎたためか最初にベキッという何かが壊れたような音が鳴ったが、レッドはまったく気にしていない。
(これ絶対鍵かかってたよね……)
ミルレースは金属の扉を見ながら呆れる。オリーもレッドに続いて建物内に入り、少し辺りを見渡した。レッドが呼んでいるのに一向に出てこないのを察してオリーがレッドの肩を叩く。
「レッド、今この建物に人の気配は無い。別のところに居るのではないだろうか?」
「あ、そうか。魔導局に居るのかもしれない」
『あそこに行くのですか?気が進みませんね……』
「何故だ精霊」
『精霊って……まぁいいけど。テスっていう嫌な女がいましてね。レッドの話をろくに聞かずに研究室から追い出された経緯があるんですよ』
「……許せないな」
「いや、良いんだよオリー。あの時はショックだったけど今考えると些細なことさ。じゃあ行くか魔導局へ!」
今のレッドは無敵である。昔の嫌な記憶を塗り替えられる幸福。間接的とはいえ、今の幸福をもたらしたルイベリアに感謝の気持を伝えねばならない。オリハルコンを持ってきたのは感謝の気持ちと幸福のお裾分けなのだ。
『レッド。先にオリーの服を見繕いませんか?クロークがボロボロで、はしたなく見えてしまいますよ?』
「ハッ!?確かにそうだ!すまないオリー。俺のことばっかりでそのことをすっかり……」
「いや、私のことは後で良い。先に用事を済ませよう」
「そうはいかない。俺なんかよりもお前のことが最優先だ。ちょっと銀行でお金下ろすからついてきて」
「ああ、分かった」
レッドは貯めに貯めながら使えなかった貯金を崩す。この時のために取っておいた仲間のためのお金。レッドは満面の笑みで膨らんだ財布を懐にしまった。
*
「素晴らしい!お似合いですよお客様!」
服屋で試着していたオリーを褒めちぎる店員。本来ならただのおべっかなのだが、絶世の美女であるオリーにはどんな服でも似合うことが約束されている。ここで働いて長い女性店員は、最高の着せ替え人形に出逢ったと今までの人生で一番興奮しながら服をあてがう。
「どうだろうレッド。似合うか?」
「うん。何でも似合うなオリーは。……こうなると何を買って良いのか分からなくなるな」
『基本的な形で良いのでは?ほら、外で歩いてる魔法使いたちのような出で立ちとか』
「ああ、それ良いな。オリー、魔法使いでいこう。店員さん、彼女をこの街の風景に溶け込むような衣装にして欲しいんだけど。ローブとトンガリ帽子も込みでいいから」
「はぁ?!彼女はもっとこう、派手で高級な衣装を着せるべきです!王族と見まごう素晴らしい衣装とか!」
「……いや、そういうのはちょっと……」
熱が入りすぎた店員に気圧されながらもレッドは要望をしつこく伝える。レッドが客である以上、店員は客の要望には答えなければならない。女性店員は渋々了承し、オリーを立派な魔法使いの出で立ちにしていった。
「あ、あの……興奮してしまって申し訳ございませんでした。今後も当店をご贔屓いただけますようよろしくお願いします」
店員は顔を赤らめながら謝っていた。オリーに。
『レッドに謝りなさいよ!』
「ははっ、良いんだミルレース。オリーの服が買えただけで俺は満足だから」
「ありがとうレッド。大切にする」
ヒラヒラと楽しげに布を踊らせるオリーにレッドは満足そうに頷いた。喜ぶオリーを見ているとふと大事なことを思い出した。
「あ、そうだ。忘れない内に剣を買っておこう」
今度は武器屋に移動する。レッドは折れた剣を回収してもらいながらロングソードを購入した。
『またロングソードですか?もっと強い武器があるでしょ?』
「これはちょっとしたこだわりっていうか、同じ武器を長いこと使ってたからしっくり来るんだよな。こう、握りが良いっていうか……」
「自分にあった武器を使うのは理に適ってる。こだわりは大事だな」
「んもー。全肯定じゃーん。オリー大好き」
「私も好きだぞ。レッド」
急に照れくさくなったレッド。新たな剣を腰にさしてキリッと顔を引き締めた。
「……良し、こんなところで油を売っている場合じゃないな。ルーさんに会いに行こう。話はそれからだ」
少し時間をかけたが魔導局に向かうことにした。武器屋の扉に手をかけた時、先にガチャリと開けられる。レッドは「おっとと……」とバランスを崩しかけつつも、先に開けた人物を確認した。
「ん?」
そこに立っていたのはライト=クローラー。背後にはライトを囲う女性陣。ラッキーセブンに鉢合わせたようだ。
「あ、は……す、すいません」
レッドはライトに気づいた瞬間すごすごと下がった。相手が同業でも超有名人のチーム。レッドとは冒険者としての格が違う。
「いや、こちらこそすまない。先に出てくれ。こっちの方が人が多い」
ライトはメンバーを下がらせる。女性陣はレッドを睨むように訝しい顔を向けた。針のむしろというには大げさだが、突き刺さる視線にレッドは俯く。これ以上敵意を向けられないようにレッドはそそくさと店から出た。それに付き添うオリーはレッドとは逆に、まったく非がないことを示すかのように堂々と出て行く。
「……っ!?」
ライトはオリーの横顔に釘付けとなった。
(う、美しい……)
今まで見たこともないほどの美貌。異性は好きだが、心の底からトキめいたことのないライトの心臓が跳ね上がった。2人の背中から目が離せないでいると、店の中から声をかけられた。
「ライト?入らないの?」
「え?あ……」
レッドたちが出ていったところを見計らって女性陣は先に中に入っていったようだった。その移動に全く気づかないほどの衝撃。もう一度振り返ったがすでにレッドたちの姿はなく、完全に見失ってしまった。
「……すぐに入るよ。みんなの武器を選ばなきゃダメだからな」
ライトは後ろ髪を引かれる思いで店内に入った。先に入ったメンバーたちがひと塊りになって喋っている。それぞれの武器を物色しているのかと思ったが、話を聞いてみるとそうでないことが分かった。
「え?あれってレッド=カーマインじゃなかった?」
「……ええっと、誰だっけ?」
「ほら、ビフレストから追い出されたって……」
「あ、そっか。え?なにあいつ。魔女連れてたんだけど?もしかして初心者狩り?」
「ありえる~!どっこも入れてくんないから駆け出しのを狙ったってことでしょ~!キモォ!」
冒険者の中には自己中心的で他人と仲良く出来なかったり、宝物を独り占めしたい性分だったり、女ったらしや職業のスキルを育てられない未熟者だったりと、そこそこのベテランでも絶望的に冒険者としてセンスが欠けるものたちが存在する。
そういう者たちほど初心者を利用して旨味だけを得るダーティープレイに走りがちだ。俗に”初心者狩り”と呼ばれる割とよくあることで、まともな冒険者からは倦厭されている。
「……だとしたら許せないな。あんな子を食い物に……それは男として恥じるべきことだ」
ライトは神妙な顔つきで呟く。初めて心の底を揺れ動かした女性がレッドによって食い物にされようとしている。由々しき事態だ。
「あ、ライト」
「ほらほら、こんなところで固まってたら冷やかしだと思われるよ?ここであまり時間もかけられないしさ。さぁみんな、自分の武器を探して」
「「「は~い」」」
ようやく各々の武器を探しに商品棚に向かっていく。全員がライトから離れたところを見計らい、口の中で転がすように呟いた。
「レッド……カーマイン……」
ふつふつと湧いてくる感情。それはこの国に来た理由を忘れさせるほどの嫉妬心だった。
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