43 / 54
第2章
最終話 未来の獣医へ
しおりを挟む
1ヶ月後、ラースの体調は完全に復活していた。
病院業務にも戻っている。
唯一、変化した点としたらクレインと結婚した事だろうか。
結婚式も半年後に挙げる予定である。
「院長、今ので最後の患者さんです」
「ありがとう。では、今日は終わりにしましょうか」
最後の患者さんの治療を終えると、病院を閉める準備をする。
「こっちもやらなければですね」
ラースが立ち上げた地域動物医療ネットワークも徐々に機能するようになっていた。
地域動物医療連携室の職員の働きのおかげで、加盟してくれる開業医さんの数も増加している。
これで、もっと増えて行けば地域の動物医療は大きく発展する事だろう。
「院長、そろそろ帰りませんか?」
「そうですね。帰りますか」
夜もだいぶ更けてきた。
書類のチェックは明日にでもやるとしよう。
病院業務を終えて、ラースたちは帰路に就く。
♢
「クレイン、お前は本当にいい妻を持ったな」
辺境伯邸。
バーロンは酒を煽りながら口にした。
今日は親子2人で酒を飲んでいる。
「はい、私にはもったいないくらいですよ」
「一時は婚約者も作ろうとせず、どうしたものかと思ったがな」
クレインはずっと婚約者を作らなかった。
貴族というのは大抵は、16歳までに婚約者を決めるものである。
辺境伯の後継ぎということもあり、バーロンはずっとそこを危惧していたのだ。
「父上には色々とご心配をおかけしました」
「いや、あんな素晴らしい婚約者が居るならいいじゃないか。立派だよ彼女は」
ラースはまだ若い。
しかし、その肩には大きな責任が乗っている。
医者というのは、命を預かっているのだ。
そこでミスをしたら、命を失ってしまう。
そんな、命の最前線で戦っているのである。
「私も、負けてられませんね」
「人間というは今は見えているが、10年後は見えていないものだ。しかし、10年後を見える優れた目の持ち主がいる。それがラースさんであったり今は亡きベルベットであると私は思うな」
今日救えなかった患者も対策が見つかれば、明日は助けられるかもしれない。
そうしたら、1日分多くの患者さんたちをたすける事が出来るのだ。
そのために、情報は公表する。
そこから、新たな発見があり医学は進歩していくのである。
医療の世界は日進月歩なのだ。
「私も、伝説の名医に会ってみたかったですね」
クレインは常々思っていた。
「それなら、ラースさんを見てればいいんじゃないか?」
「どういう意味ですか?」
「何、今のラースさんは亡きベルベットそのものだよ」
【第2章 完】
《あとがき》
お読み頂きありがとうございます。
第2章はここで最終話とさせて頂きます。
実は、私の専門は獣医学では無く"法医学"になります。
なので、この話を書く上で、獣医学について沢山学びました。
それは私としても楽しかったです。
そして、思いました。
医療界に入る前、どのくらい医療を信頼していたか。
私たちが大丈夫と言っても、患者さんの不安は完成に払拭はされないでしょう。
現実にもラースやベルベットのような医者がいてくれたらなと思い書きました。
病院業務にも戻っている。
唯一、変化した点としたらクレインと結婚した事だろうか。
結婚式も半年後に挙げる予定である。
「院長、今ので最後の患者さんです」
「ありがとう。では、今日は終わりにしましょうか」
最後の患者さんの治療を終えると、病院を閉める準備をする。
「こっちもやらなければですね」
ラースが立ち上げた地域動物医療ネットワークも徐々に機能するようになっていた。
地域動物医療連携室の職員の働きのおかげで、加盟してくれる開業医さんの数も増加している。
これで、もっと増えて行けば地域の動物医療は大きく発展する事だろう。
「院長、そろそろ帰りませんか?」
「そうですね。帰りますか」
夜もだいぶ更けてきた。
書類のチェックは明日にでもやるとしよう。
病院業務を終えて、ラースたちは帰路に就く。
♢
「クレイン、お前は本当にいい妻を持ったな」
辺境伯邸。
バーロンは酒を煽りながら口にした。
今日は親子2人で酒を飲んでいる。
「はい、私にはもったいないくらいですよ」
「一時は婚約者も作ろうとせず、どうしたものかと思ったがな」
クレインはずっと婚約者を作らなかった。
貴族というのは大抵は、16歳までに婚約者を決めるものである。
辺境伯の後継ぎということもあり、バーロンはずっとそこを危惧していたのだ。
「父上には色々とご心配をおかけしました」
「いや、あんな素晴らしい婚約者が居るならいいじゃないか。立派だよ彼女は」
ラースはまだ若い。
しかし、その肩には大きな責任が乗っている。
医者というのは、命を預かっているのだ。
そこでミスをしたら、命を失ってしまう。
そんな、命の最前線で戦っているのである。
「私も、負けてられませんね」
「人間というは今は見えているが、10年後は見えていないものだ。しかし、10年後を見える優れた目の持ち主がいる。それがラースさんであったり今は亡きベルベットであると私は思うな」
今日救えなかった患者も対策が見つかれば、明日は助けられるかもしれない。
そうしたら、1日分多くの患者さんたちをたすける事が出来るのだ。
そのために、情報は公表する。
そこから、新たな発見があり医学は進歩していくのである。
医療の世界は日進月歩なのだ。
「私も、伝説の名医に会ってみたかったですね」
クレインは常々思っていた。
「それなら、ラースさんを見てればいいんじゃないか?」
「どういう意味ですか?」
「何、今のラースさんは亡きベルベットそのものだよ」
【第2章 完】
《あとがき》
お読み頂きありがとうございます。
第2章はここで最終話とさせて頂きます。
実は、私の専門は獣医学では無く"法医学"になります。
なので、この話を書く上で、獣医学について沢山学びました。
それは私としても楽しかったです。
そして、思いました。
医療界に入る前、どのくらい医療を信頼していたか。
私たちが大丈夫と言っても、患者さんの不安は完成に払拭はされないでしょう。
現実にもラースやベルベットのような医者がいてくれたらなと思い書きました。
14
お気に入りに追加
1,323
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる