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第2章

第9話 助かる希望

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 ラースは治療室へと戻る。

「詳しい検査をしてみましょう」

 さらに詳細な検査をすることにした。

《医療魔法・核磁気共鳴》

 ラースは、状態を詳しく見る。
先ほどのスキャンの魔法よりも優れているものである。

「よかった。壊死はまだしていないようですね」
「それなら、なんとかなるかもですね」

 最悪の事態は逃れた。
少しだが、助かる希望が見えてきたのだ。

「全身麻酔以外のものから試してみましょう」

 とはいえ、全身麻酔はリスクが大きい。

「分かりました」

《医療魔法・調剤》

 ラースは吐きたくなる薬を生成する。
それを注射して、飲み込んだ肥料を吐き出すように促す。
腸に溜まったものは、下剤によって排出するように試みてみた。

「うーん、これはだめかもしれませんね」

 数回試してみたが、出るのは少量のみである。
このままでは、何時間かかっても完全に出し切ることは出来ないだろう。

「もう一回、買主さんと話します。胃洗浄をやりたいと思います」

 ラースは、全身麻酔のリスクよりこのまま時間が経過して、消化器官が壊死してしまうリスクの方が大きいと判断した。
胃洗浄をするには、飼い主さんの許可が必要なのである。

 ラースは再び、飼い主さんと向かい合う。

「今、薬での治療を試みたんですが、正直これ以上このままという状態の方が危険かと思います。本当に注意しながら、麻酔かけて胃洗浄した方がいいのかなとは思うんですが、よろしいですか?」
「分かりました。ラース先生にお任せしたいと思います」
「かしこまりました。万全な体制でやらせて貰います」

 飼い主の承諾はもらった。

「よし、胃洗浄しましょう」

 全身麻酔のリスクよりも、症状の悪化の方が危険である。

《医療魔法・調剤》

 医療魔法によって、麻酔薬を生成する。
それを慎重に注射していく。

 麻酔が効いたタイミングで、新たな魔法を展開する。

《医療魔法・洗浄》

 一粒でも多く洗浄することを意識する。

 そして、処置を続けることおよそ1時間が経過した。
大量の土や肥料を洗浄することに成功した。

 まだ、腸や胃に残っている土は、食事療法ということになるだろう。

 懸念していた全身麻酔からも無事に覚めてくれた。

「院長、この子助かりますかね?」
「そうですね。あんまり楽観的なことは言えないですけど、五分五分って感じですかね」

 できるだけのことはやった。
しかし、体力の消耗があまりにも激しい。
まだ、予断を許さない状態だ。

 今日は入院ということになるだろう。

 ♢

 
 数日後、消化器官が壊死寸前だったワンちゃんは無事に回復し、退院することになった。

「先生、本当にありがとうございました」
「いえ、元気になってよかったです。お大事になさってください」

 この時、ラースの頭の中には新たな計画が出来上がっていたのであった。


【あとがき】

更新出来ずにいて申し訳ございません。
少し、精神的に追い詰められる事がありまして、手に付かないでおりました。
更新頻度が落ちてしまうかもしれませんが、出来る限り毎日更新致します。
引き続きよろしくお願い致します。
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