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第2章
第2話 オーランドへ帰還
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祖父のお墓参りを済ませたラースたちは、オーランドの街に戻ってきていた。
明日からは、病院業務にも復帰することとなる。
「おかえり。二人とも」
辺境伯の屋敷に戻ると、バーロンが出迎えてくれる。
「ただいま戻りました」
「二人とも、夕食はまだだろう? 用意できているぞ」
ラースたち3人は夕食の席につく。
「それにしても、龍の治療を終えてくるとはな。龍の治療は難しいのか?」
バーロンが尋ねてきた。
「そうですね。何しろ前例が少ないので、龍の体はまだ解明されていないことが多いんです」
龍はほとんど人里には現れない。
なので、龍を治療できる獣医はベルベット亡き今、ラースくらいしか居ないだろう。
「そうなんだな。そんな治療を任されるとは流石だな」
「でも、私は今回の龍の治療についてまとめた論文を公表するつもりです」
「いいのか? 貴重な情報なんだろう?」
「情報を独占せずに、公表することで新たな発見があり、それが5年後10年後の医学の発展につながるのです」
祖父でもきっと同じことをしただろう。
「そうか。ラースさんがそう言うならそうした方が良さそうだな」
バーロン辺境伯も納得したように頷いた。
「聞くところによると、獣医師会の会長にもなったんだって? これからは王都に行くことも増えるんじゃないか?」
医師会の会議などは、基本的に王都で行われるのだ。
「医師会の会議は緊急の場合を除いたら半年に一度とかなので、そこまで大変なわけではないと思います」
「それにしても、ついに現れたって感じだな。ベルベットの意志を継ぐ者が」
バーロンはとても嬉しそうだった。
「父上はなんだか嬉しそうですね」
クレインがバーロンの表情を見て言った。
「いやぁ、ラースさんを見ていると昔のベルベットを思い出してな。なんだか懐かしい気持ちになるのだよ」
「それは、嬉しいですね」
祖父に似ていると言われて悪い気はしない。
「二人とも今日は疲れただろう。ゆっくり休むといい。詳しいことはまた改めて聞かせてくれ」
外はもう真っ暗の時間帯である。
長旅による疲労もある程度は溜まっていた。
「では、お言葉に甘えて私はお先に休ませてもらいます」
食事を終えると、ラースは自室に戻った。
♢
翌日、ラースは病院へと出勤した。
代わりに来ていた先生は昨日、王都に戻ったようだ。
一言挨拶しておきたかったのだが。
「おはようございます」
「あ、院長おかえりなさい!」
「ラース院長、お待ちしていましたよ」
看護師のアリアと事務長のイリスが出迎えてくれる。
「遅くなってすみません。私の居ない間、大丈夫でしたか?」
「ええ、それはもう代わりの先生がよくやってくれました」
「それなら、よかったです。イリスさん、これを受付に置いてもらっていいですか?」
ラースは2枚の額縁を渡した。
一枚はドラグス王国の獣医師免許、もう一枚はローラン王家お墨付きの証である。
「これは院長、とんでもないお土産をお持ちになられましたね」
「え、ドラグスの獣医師免許!?」
二人とも驚きに表情を変えていた。
明日からは、病院業務にも復帰することとなる。
「おかえり。二人とも」
辺境伯の屋敷に戻ると、バーロンが出迎えてくれる。
「ただいま戻りました」
「二人とも、夕食はまだだろう? 用意できているぞ」
ラースたち3人は夕食の席につく。
「それにしても、龍の治療を終えてくるとはな。龍の治療は難しいのか?」
バーロンが尋ねてきた。
「そうですね。何しろ前例が少ないので、龍の体はまだ解明されていないことが多いんです」
龍はほとんど人里には現れない。
なので、龍を治療できる獣医はベルベット亡き今、ラースくらいしか居ないだろう。
「そうなんだな。そんな治療を任されるとは流石だな」
「でも、私は今回の龍の治療についてまとめた論文を公表するつもりです」
「いいのか? 貴重な情報なんだろう?」
「情報を独占せずに、公表することで新たな発見があり、それが5年後10年後の医学の発展につながるのです」
祖父でもきっと同じことをしただろう。
「そうか。ラースさんがそう言うならそうした方が良さそうだな」
バーロン辺境伯も納得したように頷いた。
「聞くところによると、獣医師会の会長にもなったんだって? これからは王都に行くことも増えるんじゃないか?」
医師会の会議などは、基本的に王都で行われるのだ。
「医師会の会議は緊急の場合を除いたら半年に一度とかなので、そこまで大変なわけではないと思います」
「それにしても、ついに現れたって感じだな。ベルベットの意志を継ぐ者が」
バーロンはとても嬉しそうだった。
「父上はなんだか嬉しそうですね」
クレインがバーロンの表情を見て言った。
「いやぁ、ラースさんを見ていると昔のベルベットを思い出してな。なんだか懐かしい気持ちになるのだよ」
「それは、嬉しいですね」
祖父に似ていると言われて悪い気はしない。
「二人とも今日は疲れただろう。ゆっくり休むといい。詳しいことはまた改めて聞かせてくれ」
外はもう真っ暗の時間帯である。
長旅による疲労もある程度は溜まっていた。
「では、お言葉に甘えて私はお先に休ませてもらいます」
食事を終えると、ラースは自室に戻った。
♢
翌日、ラースは病院へと出勤した。
代わりに来ていた先生は昨日、王都に戻ったようだ。
一言挨拶しておきたかったのだが。
「おはようございます」
「あ、院長おかえりなさい!」
「ラース院長、お待ちしていましたよ」
看護師のアリアと事務長のイリスが出迎えてくれる。
「遅くなってすみません。私の居ない間、大丈夫でしたか?」
「ええ、それはもう代わりの先生がよくやってくれました」
「それなら、よかったです。イリスさん、これを受付に置いてもらっていいですか?」
ラースは2枚の額縁を渡した。
一枚はドラグス王国の獣医師免許、もう一枚はローラン王家お墨付きの証である。
「これは院長、とんでもないお土産をお持ちになられましたね」
「え、ドラグスの獣医師免許!?」
二人とも驚きに表情を変えていた。
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