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第1章

最終話 辺境の名医

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 黒龍の治療を終えたラースたちは、ローラン王国に帰還することになる。
長いこと、ローランを離れるわけにも行かない。

 ローランにも、ラースのことを待っている患者さんは沢山いるのだ。

 来た時同様、フェンリルのララに乗って帰る。

「帰りもよろしくね」
『任せよ』
「クレインさんも、護衛お願いしますね」
「はい、必ずお守りします」

 ドラグス王都を出発して3日。
無事にローラン王国に到着した。

 王都の伯爵家の屋敷で、一泊して休む。
そして、その翌日ローラン国王と謁見の予定が入っていた。

 ここ1週間以内に、2カ国の国王と謁見することになっているのだ。
こんな事、人生で一度あるかないかでは無いだろうか。

 そんなことを思いながら、ラースはローラン国王との謁見に向かった。

 王宮に入ると、従者によって謁見の間へと案内される。
こした、公式の場でローラン陛下と会うのは久しぶりである。

 ただ、それだけ今日の場は大事なものであることも示しているのだ。

「ラース様、準備はよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では、行ってらっしゃいませ」

 従者によって謁見の間の扉が開かれた。

 指定された位置まで歩くと片膝をついて頭を下げる。

「面を上げよ」

 陛下の言葉で顔を上げる。

「まずは、ドラグス王都までの遠征、苦労であった」
「ありがとうございます」
「貴殿の活躍のおかげで、ドラグス王国との同盟をさらに強固なものに出来たのは言うこともないだろう」

 ドラグス国王陛下から、ローラン国王陛下に正式にお礼の書簡が届けられたらしい。
それによると、友好関係をこれからも末長く築いていきたいということだった。

「貴殿の功績を王家としては高く評価している。よって、当家はオーランド家同様にラースクリニックの後ろ盾となり、今後の医療活動においてローラン家の名前の使用を許可するものととする」
「身に余る光栄でございます」

 これで、オーランド辺境伯、ローラン王家、ドラグス王家がラースの後ろ盾となったのである。
これはとんでもない事実だ。

「そして、ベルベットの死後、ずっと空席になっているローラン獣医師会の会長にラース・ナイゲールを任命し、貴殿に辺境の名医の称号を授ける」
「謹んで拝命致します」

 祖父は長年に渡り、獣医師会会長を務めていた。
しかし、祖父の死後、ベルベットの後任に認められる人間はずっと居なかったのだ。

 それが今、ベルベット・ナイゲールの後継者として孫娘が認められたのだ。

「以上、全てローラン王国国王としての宣言である。以上で謁見を終了する」

 ラース・ナイゲール。
史上最強の獣医師の名は確かに獣医師界に刻まれたのであった。


【第1章 完】
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