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第1章

第22話 ローラン王都到着

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 翌日、ラースはクレインと共に王都に向けて出発する。

「ララ、彼のことも乗せてもらってもいいかな?」
『ラース殿の旦那様ならもちろん構わぬ。乗ってくだされ』
「いや、まあ、未来の旦那さんでははるけど、今はまだ……」
「ラースさん、どうしました?」

 クレインにはララの声は聞こえていないのだ。
ラースの言葉に不思議そうな表情を浮かべている。

「い、いえ、クレインさんのことも乗せてくれるそうです」
「そうですか。あえりがとう」

 そう言って、クレインはララのことを撫でた。

 そして、ララは体勢を低くしてくれる。
ラースとクレインはフェンリルの背中へと乗った。

『では、お二方とも振り落とされないようにしっかり捕まっていてください』
「分かった。よろしくね」

 ララは一気にスピードを上げていく。
確かに、これなら1日程度で王都に到着することだろう。

 道中、魔物たちもララの神力に恐れて寄って来ることはない。
快適な旅になりそうであった。

 そして、日が傾き始めた頃、ラースたちはローラン王都に到着していた。

「凄いですね。本当に1日でここまで来れてしまうなんて」
「ララのおかげですね」

 貴族用の門から王都へと入る手続きをする。
フェンリルには驚かれたが、使い魔であることを証明すると入ることができた。

「クレインさんは今日はどうしますか? 私はお父様たちに挨拶しなければいけないので、伯爵家へと行きますが」
「では、私もご一緒してもよろしいですか?」
「ええ、大丈夫だと思いますよ」

 王都の中央通りを抜けて貴族街へと向かう。
そして、貴族街の中心辺りに伯爵家の屋敷はある。

「ただいま戻りました」
「おかえり」

 屋敷の中に入ると、父が出迎えてくれた。

「その子はフェンリルか?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、中庭に連れて行ってやるといい。あそこならフェンリルでも大丈夫だろう」
「わかりました」

 ラースはフェンリルを中庭に連れて行く。

「お父上は、フェンリルを連れて帰ってきても驚かないんですね」

 普通、神獣を連れて帰ってきたら多少なりとも驚いたりするものだろう。

「まあ、お祖父様は普通にドラゴンとか連れて帰ってきてましたからね……」
「なるほど」

 クレインは理解した。
日常的にそんな高位が魔獣を連れて帰ってきていたら、もうフェンリルごときでは驚かないのであろう。

「ここで、お留守番しててね」
『承知した』

 ララは中庭を気に入ってくれたようであった。
ラースとクレインはリビングへと戻った。

「クレイン君も今日は泊まって行ったらどうだ?」
「でも、ご迷惑じゃ……」
「迷惑なものか。ラースの婚約者なんだ。ここを自分の家だと思ってゆっくりして行くといい」
「では、お世話になります」

 そこから、ミーシャ以外の家族と食事を取って、夜は耽って行った。
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