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最終話 白銀の聖女
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アナスタシアは国王から《白銀の聖女》という称号を授かった。
国王から直々に称号を授かるというのは、大変名誉なことである。
アナスタシアの美しい銀髪から白銀の聖女という称号が生まれたのであろう。
「拝命いたします」
こうして、王国に国王が認めた新たな聖女が誕生したのであった。
謁見が終わり、貴族たちが続々と謁見の間を後にしていく。
アナスタシアもロインとガルン公爵と共に謁見の間を出る。
「お三方、陛下がお呼びです」
謁見の間を出た所で、王宮の従者が声をかけて来る。
「承知しました」
アナスタシアたちは、王宮の応接間へと通された。
「やあ、お疲れ様」
そこには、陛下がソファーに座って紅茶を飲んでいる。
「まあ、座りたまえ」
「失礼します」
陛下の対面のソファーにアナスタシアたちが腰を下ろす。
「私が白銀の聖女だなんてよろしかったのですか?」
これは遅かれ早かれ教会にも伝わることだろう。
教会長辺りは、怒り狂っることが目に浮かぶ。
「問題ないだろう。君のお祖母様も大聖女の称号をもらっているんだ。他所から何か言われても私が責任を持つ」
しかし、アナスタシアの祖母が大聖女の称号を貰ったのは、亡くなった後だった。
亡くなってからその生涯に残した功績を讃えられ、称号や勲章が送られるという話は結構ある。
生きているうちに称号をもらうとなると、話は変わって来る。
なにしろ、数が少ないので大変名誉なことになるのだ。
「それに、これはロインからの頼みでもあるのだ」
「ロイン様の?」
アナスタシアは隣に座るロインに視線を向ける。
「伯父上、それは言わない約束だったはずです!!」
ロインが机に手を付いて声を上げる。
「おっと、すまんかったな」
そんなロインを見ながら、陛下は楽しそうに笑う。
「陛下、ロイン様の頼みというのはどういうことですか?」
ロインがアナスタシアに称号を授けてもらうことに、それほどのメリットがあるのだろうか。
「まあ、それはアナスタシアさんが貴族社会でも孤立しないようにかな。私からの称号となれば、貴族社会でも十分にやっていける地位になるだろう」
貴族社会というのは爵位が全ての世界である。
元聖女で教会を追放されたアナスタシアが次期公爵の婚約者になったら、祝福の声だけではないだろう。
そのことを考慮しての頼みだったのだろう。
「まあ、私の可愛い甥っ子の初めての頼みだったからな。多少は無理をしても叶えてやりたかったのだよ」
「その、ありがとうございます」
アナスタシアは陛下とロインに対して感謝を伝える。
「いえ、私はアナスタシアさんのこれからの生活が少しでも楽になるようにと思いまして」
「その心遣いが嬉しいです」
アナスタシアが優しく笑みを浮かべる。
「2人とも婚約おめでとう。正式に婚姻を結ぶ時には私が見届け人になろうじゃないか」
この国では婚姻を結ぶ際、見届け人が必要となる。
要するに証人のようなものである。
「ありがとうございます」
♢
3ヶ月後、アナスタシアとロインの結婚が正式に発表された。
国内は大きな祝福ムードに包まれていた。
そして、それと同時に教会の様々な悪事が明るみに出た。
教会長はその責任を追求され、解任。
教皇様の体調も回復され、徐々に教会のあるべき姿が戻ってきていた。
アナスタシアの元には、教会に復帰しないかという声がかかった。
しかし、それをアナスタシアは断った。
教会は教皇様に任せておけば問題ない。
今のアナスタシアは、公爵家専属の“聖女“である。
【完】
国王から直々に称号を授かるというのは、大変名誉なことである。
アナスタシアの美しい銀髪から白銀の聖女という称号が生まれたのであろう。
「拝命いたします」
こうして、王国に国王が認めた新たな聖女が誕生したのであった。
謁見が終わり、貴族たちが続々と謁見の間を後にしていく。
アナスタシアもロインとガルン公爵と共に謁見の間を出る。
「お三方、陛下がお呼びです」
謁見の間を出た所で、王宮の従者が声をかけて来る。
「承知しました」
アナスタシアたちは、王宮の応接間へと通された。
「やあ、お疲れ様」
そこには、陛下がソファーに座って紅茶を飲んでいる。
「まあ、座りたまえ」
「失礼します」
陛下の対面のソファーにアナスタシアたちが腰を下ろす。
「私が白銀の聖女だなんてよろしかったのですか?」
これは遅かれ早かれ教会にも伝わることだろう。
教会長辺りは、怒り狂っることが目に浮かぶ。
「問題ないだろう。君のお祖母様も大聖女の称号をもらっているんだ。他所から何か言われても私が責任を持つ」
しかし、アナスタシアの祖母が大聖女の称号を貰ったのは、亡くなった後だった。
亡くなってからその生涯に残した功績を讃えられ、称号や勲章が送られるという話は結構ある。
生きているうちに称号をもらうとなると、話は変わって来る。
なにしろ、数が少ないので大変名誉なことになるのだ。
「それに、これはロインからの頼みでもあるのだ」
「ロイン様の?」
アナスタシアは隣に座るロインに視線を向ける。
「伯父上、それは言わない約束だったはずです!!」
ロインが机に手を付いて声を上げる。
「おっと、すまんかったな」
そんなロインを見ながら、陛下は楽しそうに笑う。
「陛下、ロイン様の頼みというのはどういうことですか?」
ロインがアナスタシアに称号を授けてもらうことに、それほどのメリットがあるのだろうか。
「まあ、それはアナスタシアさんが貴族社会でも孤立しないようにかな。私からの称号となれば、貴族社会でも十分にやっていける地位になるだろう」
貴族社会というのは爵位が全ての世界である。
元聖女で教会を追放されたアナスタシアが次期公爵の婚約者になったら、祝福の声だけではないだろう。
そのことを考慮しての頼みだったのだろう。
「まあ、私の可愛い甥っ子の初めての頼みだったからな。多少は無理をしても叶えてやりたかったのだよ」
「その、ありがとうございます」
アナスタシアは陛下とロインに対して感謝を伝える。
「いえ、私はアナスタシアさんのこれからの生活が少しでも楽になるようにと思いまして」
「その心遣いが嬉しいです」
アナスタシアが優しく笑みを浮かべる。
「2人とも婚約おめでとう。正式に婚姻を結ぶ時には私が見届け人になろうじゃないか」
この国では婚姻を結ぶ際、見届け人が必要となる。
要するに証人のようなものである。
「ありがとうございます」
♢
3ヶ月後、アナスタシアとロインの結婚が正式に発表された。
国内は大きな祝福ムードに包まれていた。
そして、それと同時に教会の様々な悪事が明るみに出た。
教会長はその責任を追求され、解任。
教皇様の体調も回復され、徐々に教会のあるべき姿が戻ってきていた。
アナスタシアの元には、教会に復帰しないかという声がかかった。
しかし、それをアナスタシアは断った。
教会は教皇様に任せておけば問題ない。
今のアナスタシアは、公爵家専属の“聖女“である。
【完】
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