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第10話 求婚、そして王宮へ
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「では、私はちょっと仕事が立て込んでててな。失礼するよ」
そう言って、公爵は部屋を出て行った。
上級貴族にもなると、公務が忙しくなるらしい。
「私からもアナスタシアさんにお話したいことがあります」
ロインが言った。
「何でしょうか?」
「私の妻となっていただけないでしょうか?」
ロインは真剣な表情を浮かべている。
きっと、冗談では無いのだろう。
「え!?」
アナスタシアは驚いて変な声が出てしまった。
「私はこの呪いのせいで結婚や恋愛など考えて来ませんでした。どうせ長くは生きられない。そうなったら妻となった人を1人残してしまうことになる」
貴族の人間は大体16歳までには婚約者を決める呪い普通である。
しかし、ロインはまだ誰とも婚約を結んで居なかった。
その理由が呪いによるものだというなら納得できる。
呪いが無くなった今、ロインが婚約を渋る理由は無くなったというわけだ。
「あなたに救ってもらったこの命、あなたの為に捧げたい。私と結婚してください」
「はい、分かりました」
全てを無くしたアナスタシアもまた、ロインに救われたのだ。
「私も、ロイン様に救われたんです」
「良かった。内心、断られるかと思って緊張していたんだ」
ロインは歯にかんだ笑みを浮かべて言った。
その表情はずるいと思う。
「これからは、私が君の事を守ると誓おう。次に君が助ける者の為に、君は死んではいけない」
「ありがとうございます」
ロインは今まで誰とも婚約を交わしていない事で有名だった。
婚約できないのは何かしらの理由があるのでは無いかと噂されていた。
そのロインが婚約をしたということはすぐに噂になった。
そして、その相手が銀髪の“元“聖女ということが広がるのも遠くない未来の出来事だった。
♢
そして、その翌日の事である。
アナスタシアは正式に公爵家の専属治癒魔術師として承認された。
「制服だ。使ってくれ」
公爵に白衣を3着渡された。
左腕の所には公爵家の家紋が刺繍されいる。
「これを着ていれば、アナスタシアさんが公爵家に仕える人間だということが直ぐに分かる」
「ありがとうございます!」
白衣というのが、治癒魔法を使う人間だということが分かっていい。
アナスタシアは早速、その白衣をドレスの上から羽織った。
「これから、兄上に合うのだが、一緒に来ないか? ロインの婚約者になったことだし、一度は会っておいた方がいいだろう」
「そんなに、気軽に会えてしまうものなんですか?」
通常、国王陛下と謁見するには、面倒な手続きが必要になってくる。
「そこはまあ、兄だしな」
「なるほど。そういうもんですか」
「そういうもんだ」
公爵は笑みを浮かべながら言った。
「では、行こうか」
アナスタシアは、公爵と共に王宮へと向かうのであった。
そう言って、公爵は部屋を出て行った。
上級貴族にもなると、公務が忙しくなるらしい。
「私からもアナスタシアさんにお話したいことがあります」
ロインが言った。
「何でしょうか?」
「私の妻となっていただけないでしょうか?」
ロインは真剣な表情を浮かべている。
きっと、冗談では無いのだろう。
「え!?」
アナスタシアは驚いて変な声が出てしまった。
「私はこの呪いのせいで結婚や恋愛など考えて来ませんでした。どうせ長くは生きられない。そうなったら妻となった人を1人残してしまうことになる」
貴族の人間は大体16歳までには婚約者を決める呪い普通である。
しかし、ロインはまだ誰とも婚約を結んで居なかった。
その理由が呪いによるものだというなら納得できる。
呪いが無くなった今、ロインが婚約を渋る理由は無くなったというわけだ。
「あなたに救ってもらったこの命、あなたの為に捧げたい。私と結婚してください」
「はい、分かりました」
全てを無くしたアナスタシアもまた、ロインに救われたのだ。
「私も、ロイン様に救われたんです」
「良かった。内心、断られるかと思って緊張していたんだ」
ロインは歯にかんだ笑みを浮かべて言った。
その表情はずるいと思う。
「これからは、私が君の事を守ると誓おう。次に君が助ける者の為に、君は死んではいけない」
「ありがとうございます」
ロインは今まで誰とも婚約を交わしていない事で有名だった。
婚約できないのは何かしらの理由があるのでは無いかと噂されていた。
そのロインが婚約をしたということはすぐに噂になった。
そして、その相手が銀髪の“元“聖女ということが広がるのも遠くない未来の出来事だった。
♢
そして、その翌日の事である。
アナスタシアは正式に公爵家の専属治癒魔術師として承認された。
「制服だ。使ってくれ」
公爵に白衣を3着渡された。
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「ありがとうございます!」
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「そこはまあ、兄だしな」
「なるほど。そういうもんですか」
「そういうもんだ」
公爵は笑みを浮かべながら言った。
「では、行こうか」
アナスタシアは、公爵と共に王宮へと向かうのであった。
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