6 / 15
第6話 解呪の儀
しおりを挟む
翌日、感応増幅師が王宮から公爵邸へとやって来た。
ベッドではロインが横になっている。
「アナスタシアさん、無理はしなくていい。厳しいとお思ったら中止してくれ」
自分の体調が優れない中、アナスタシアのことまで気にかけてくれる。
その優しさがとても温かく感じた。
「大丈夫ですよ。あなたの命、救って見せます。それが、聖女である私の務めですから」
アナスタシアの祖母も光の女神から加護を授けられた聖女だった。
『加護を授かったのだから、私は多くの人を救わなければいけない』
幼少期、祖母が口癖のように言っていた言葉を今でも思い出す。
祖母は聖力を使い果たして、まだ55歳という若さでこの世を去った。
祖母は亡くなった時、当時の国王から《大聖女》の称号を与えられた。
それだけ、祖母は国に認められ、頼りにされていたのだ。
アナスタシアはそんな祖母が憧れだった。
いつか、私も祖母のような皆んなに必要とされる聖女になりたい。
その夢は叶わなかったが、今はそんなことはどうでもいい。
ただ、目の前に居る人を救えれば。
目の前で苦しんでいる人がいたら、全力で助ける。
それが、加護を与えられし者の使命であると思っている。
勝手なことをするなと教会にいた時は怒られたこともあった。
ただ、アナスタシアは思う。
命を救うことの何が勝手な事なんだと。
「感応増幅師のセシルです」
「よろしくお願いします」
「聖力を上げればよろしいんですね」
「はい、お願いします」
セシルはアナスタシアの手を握った。
すると、みるみるうちに聖力が上がっているのを感じる。
自分が保有している聖力の何倍もの量だ。
「どうですか? これ以上はアナスタシアさんのキャパが持たないと思います」
「十分だと思います」
これだけの聖力をぶつければ呪いを解くことも可能だろう。
「ロイン様、目を閉じていてください」
「わかった」
ロインはそっと目を閉じた。
「では、行きます」
その様子を父、ガルンと使用人たちが見つめている。
ガルンは両手を合わせて、祈っている。
これが、この親子にとって最後に残された希望なんだ。
『光の女神の加護を授かったアナスタシアの名を持って命じる。ここは聖域にして我が領域。力よ無に帰せ!』
体内の聖力を一気にロインにかかっている呪いにぶつける。
「さすが悪魔の秒読み、一筋縄では行きませんね」
呪いがアナスタシアの聖力を跳ね返してくる。
「上等です。たかが呪いに私の聖力が負けるわけありません!」
さらに多くの聖力をぶつける。
アナスタシアの聖力が底をつきかけた時、ロインに刺さっていた真っ黒の矢は粉々に砕けたのを確認した。
「呪いは、解けました……」
そう言うとアナスタシアは聖力を使いすぎた代償として、その場に倒れた。
ベッドではロインが横になっている。
「アナスタシアさん、無理はしなくていい。厳しいとお思ったら中止してくれ」
自分の体調が優れない中、アナスタシアのことまで気にかけてくれる。
その優しさがとても温かく感じた。
「大丈夫ですよ。あなたの命、救って見せます。それが、聖女である私の務めですから」
アナスタシアの祖母も光の女神から加護を授けられた聖女だった。
『加護を授かったのだから、私は多くの人を救わなければいけない』
幼少期、祖母が口癖のように言っていた言葉を今でも思い出す。
祖母は聖力を使い果たして、まだ55歳という若さでこの世を去った。
祖母は亡くなった時、当時の国王から《大聖女》の称号を与えられた。
それだけ、祖母は国に認められ、頼りにされていたのだ。
アナスタシアはそんな祖母が憧れだった。
いつか、私も祖母のような皆んなに必要とされる聖女になりたい。
その夢は叶わなかったが、今はそんなことはどうでもいい。
ただ、目の前に居る人を救えれば。
目の前で苦しんでいる人がいたら、全力で助ける。
それが、加護を与えられし者の使命であると思っている。
勝手なことをするなと教会にいた時は怒られたこともあった。
ただ、アナスタシアは思う。
命を救うことの何が勝手な事なんだと。
「感応増幅師のセシルです」
「よろしくお願いします」
「聖力を上げればよろしいんですね」
「はい、お願いします」
セシルはアナスタシアの手を握った。
すると、みるみるうちに聖力が上がっているのを感じる。
自分が保有している聖力の何倍もの量だ。
「どうですか? これ以上はアナスタシアさんのキャパが持たないと思います」
「十分だと思います」
これだけの聖力をぶつければ呪いを解くことも可能だろう。
「ロイン様、目を閉じていてください」
「わかった」
ロインはそっと目を閉じた。
「では、行きます」
その様子を父、ガルンと使用人たちが見つめている。
ガルンは両手を合わせて、祈っている。
これが、この親子にとって最後に残された希望なんだ。
『光の女神の加護を授かったアナスタシアの名を持って命じる。ここは聖域にして我が領域。力よ無に帰せ!』
体内の聖力を一気にロインにかかっている呪いにぶつける。
「さすが悪魔の秒読み、一筋縄では行きませんね」
呪いがアナスタシアの聖力を跳ね返してくる。
「上等です。たかが呪いに私の聖力が負けるわけありません!」
さらに多くの聖力をぶつける。
アナスタシアの聖力が底をつきかけた時、ロインに刺さっていた真っ黒の矢は粉々に砕けたのを確認した。
「呪いは、解けました……」
そう言うとアナスタシアは聖力を使いすぎた代償として、その場に倒れた。
13
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
花冠の聖女は王子に愛を歌う
星名柚花
恋愛
『この国で一番の歌姫を第二王子の妃として迎える』
国王の宣言により、孤児だった平民のリナリアはチェルミット男爵に引き取られ、地獄のような淑女教育と歌のレッスンを受けた。
しかし、必死の努力も空しく、毒を飲まされて妃選考会に落ちてしまう。
期待外れだったと罵られ、家を追い出されたリナリアは、ウサギに似た魔物アルルと旅を始める。
選考会で親しくなった公爵令嬢エルザを訪ねると、エルザはアルルの耳飾りを見てびっくり仰天。
「それは王家の宝石よ!!」
…え、アルルが王子だなんて聞いてないんですけど?
※他サイトにも投稿しています。
可愛いだけの無能な妹に聖女の座を譲ろうと思います
あーもんど
恋愛
お馬鹿でワガママだけど、可愛いから何もかも許される妹とブスだけど、実力のある聖女の姉。
この双子はまさに正反対。本当に双子なのか?と疑うほど。
そんなある日、妹のルーシーが姉に強請った。
「ねぇ、お姉様─────────私に聖女の座をちょうだい?」
姉のノーラから、家族からの愛も婚約者も奪ったと言うのにルーシーは『まだ足りない』と言う。
姉のノーラは決心した。
聖女の座を妹に譲り、この国を去ろうと····。
────────本物の聖女を失った国は愚者と踊る。
これはそんなお話。
※hot&人気&恋愛ランキング1位ありがとうございます(2020/04/30)
※本編完結済み。時間がある時に番外編や後日談を更新したいと思っています。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません

二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。

嫌われ聖女は魔獣が跋扈する辺境伯領に押し付けられる
kae
恋愛
魔獣の森と国境の境目の辺境領地の領主、シリウス・レングナーの元に、ある日結婚を断ったはずの聖女サラが、隣の領からやってきた。
これまでの縁談で紹介されたのは、魔獣から国家を守る事でもらえる報奨金だけが目当ての女ばかりだった。
ましてや長年仲が悪いザカリアス伯爵が紹介する女なんて、スパイに決まっている。
しかし豪華な馬車でやってきたのだろうという予想を裏切り、聖女サラは魔物の跋扈する領地を、ただ一人で歩いてきた様子。
「チッ。お前のようなヤツは、嫌いだ。見ていてイライラする」
追い出そうとするシリウスに、サラは必死になって頭を下げる「私をレングナー伯爵様のところで、兵士として雇っていただけないでしょうか!?」
ザカリアス領に戻れないと言うサラを仕方なく雇って一月ほどしたある日、シリウスは休暇のはずのサラが、たった一人で、肩で息をしながら魔獣の浄化をしている姿を見てしまう。

不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)

侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる