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第2話 呪われた次期公爵様
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アナスタシアは教会を出る。
「さて、これからどうしましょうかね」
聖女として、教会に住み込みで働いていたので、家があるわけでもない。
お金も十分と言えるほど持っていないし、頼れる知り合いも居ない。
まさに絶望的とも言える状況だった。
家族も妹が1人いるが、それも今どこで何をしているかなどはわかっていない。
両親は共に他界しているので、実家に帰ると言ういう選択肢も取れない。
「王都からは離れましょうかね」
この王都には私のことを知っている人も多くいる。
聖女の肩書きを失ったアナスタシアに後ろ指を刺してくる人もいるだろう。
それなら、王都から離れて辺境の街でのんびり過ごすと言うのも悪くない。
そうと決まれば、早速行動に移す。
アナスタシアのことを誰も知らないような辺境なら、しがらみも無くこれからの人生を生きていくことが出来るだろう。
「すみません。少々よろしいでしょうか?」
突然、後ろから声を掛けられた。
反射的にアナスタシアは振り返る。
そこには、先ほど教会ですれ違った貴族が立っていた。
「あなたが、アナスタシアさんでよろしいでしょうか?」
「は、はい。そうですけど、どうして私の名前を?」
「あなたは有名ですから」
綺麗な銀髪の聖女様。
その噂は王都中に広がっている。
この王都では銀髪は珍しいので、目立ってしまうのだ。
「私は、ロイン・サリナーと申します」
ロイン・サリナー、その名前は有名だ。
「サリナーっていう事は公爵家の?」
「はい、父が公爵の地位を拝命しています。やっと出会えました。本物に」
「本物?」
「ええ、あなたには見えているのでしょう? 私の置かれている状況が」
ロインが真っ直ぐにアナスタシアを見つめて言った。
「失礼を承知で申し上げます。ロイン様、あなたは呪われています」
アナスタシアにははっきり見えている。
ロインの背後から心臓を突き刺すようにして刺さっている、真っ黒な矢が。
「やはり、あなたは本物だ。詳しい事をお話ししたい。ぜひ、我が家に来てはくれないだろうか?」
「承知しました」
次期公爵の申し出を断るなどという勇気ある行動はアナスタシアにはできなかった。
「ありがとう。助かる」
公爵家の馬車がすぐ側に停車している。
馬車に乗り、公爵家へと向かう。
王都の中心街を抜け、更に貴族街を抜けた奥に公爵家がある。
貴族街の中でも王宮に一番近い位置である。
「こちらだ。どうぞ座ってくれ」
アナスタシアは公爵家の応接間に通された。
「失礼致します」
「突然の申し出ですまない。まず、聞きたいのだが、あなたにはどこまで見えているのだろうか?」
「ロイン様にかかっているのは悪魔の秒読みというものです。このままだと、ロイン様は20歳の誕生日に亡くなります」
《悪魔の秒読み》それは呪いに掛けた相手を指定した時刻で死に至らしめるという凶悪な呪いである。
その呪いが、ロイン・サリナーにはかかっていた。
「さて、これからどうしましょうかね」
聖女として、教会に住み込みで働いていたので、家があるわけでもない。
お金も十分と言えるほど持っていないし、頼れる知り合いも居ない。
まさに絶望的とも言える状況だった。
家族も妹が1人いるが、それも今どこで何をしているかなどはわかっていない。
両親は共に他界しているので、実家に帰ると言ういう選択肢も取れない。
「王都からは離れましょうかね」
この王都には私のことを知っている人も多くいる。
聖女の肩書きを失ったアナスタシアに後ろ指を刺してくる人もいるだろう。
それなら、王都から離れて辺境の街でのんびり過ごすと言うのも悪くない。
そうと決まれば、早速行動に移す。
アナスタシアのことを誰も知らないような辺境なら、しがらみも無くこれからの人生を生きていくことが出来るだろう。
「すみません。少々よろしいでしょうか?」
突然、後ろから声を掛けられた。
反射的にアナスタシアは振り返る。
そこには、先ほど教会ですれ違った貴族が立っていた。
「あなたが、アナスタシアさんでよろしいでしょうか?」
「は、はい。そうですけど、どうして私の名前を?」
「あなたは有名ですから」
綺麗な銀髪の聖女様。
その噂は王都中に広がっている。
この王都では銀髪は珍しいので、目立ってしまうのだ。
「私は、ロイン・サリナーと申します」
ロイン・サリナー、その名前は有名だ。
「サリナーっていう事は公爵家の?」
「はい、父が公爵の地位を拝命しています。やっと出会えました。本物に」
「本物?」
「ええ、あなたには見えているのでしょう? 私の置かれている状況が」
ロインが真っ直ぐにアナスタシアを見つめて言った。
「失礼を承知で申し上げます。ロイン様、あなたは呪われています」
アナスタシアにははっきり見えている。
ロインの背後から心臓を突き刺すようにして刺さっている、真っ黒な矢が。
「やはり、あなたは本物だ。詳しい事をお話ししたい。ぜひ、我が家に来てはくれないだろうか?」
「承知しました」
次期公爵の申し出を断るなどという勇気ある行動はアナスタシアにはできなかった。
「ありがとう。助かる」
公爵家の馬車がすぐ側に停車している。
馬車に乗り、公爵家へと向かう。
王都の中心街を抜け、更に貴族街を抜けた奥に公爵家がある。
貴族街の中でも王宮に一番近い位置である。
「こちらだ。どうぞ座ってくれ」
アナスタシアは公爵家の応接間に通された。
「失礼致します」
「突然の申し出ですまない。まず、聞きたいのだが、あなたにはどこまで見えているのだろうか?」
「ロイン様にかかっているのは悪魔の秒読みというものです。このままだと、ロイン様は20歳の誕生日に亡くなります」
《悪魔の秒読み》それは呪いに掛けた相手を指定した時刻で死に至らしめるという凶悪な呪いである。
その呪いが、ロイン・サリナーにはかかっていた。
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