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第16話 悪魔の祝福
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一晩経過して、いよいよ悪魔の祝福の当日となった。
騎士団と魔道士団の間では緊張の空気が張り詰めている。
「これ、どうぞ」
アリーセは瓶に入っているポーションをダインに渡した。
「これは?」
「スタミナ増強ポーションです。疲労回復の効果があります。私からのお守りみたいな感じです」
「ありがとう。頂くよ」
ダインはその場で瓶の中身を全て飲み干した。
「これは凄い。体の内側から力が漲ってくる……」
「よかったです。ちゃんと効果があって」
「ただの疲労回復ポーションではないですよね?」
「まあ、私が調合したものなので、市販とは少し成分が違います」
アリーセが調合したポーションは、通常以上の付随効果がでる。
その効果がダインにも出たようである。
「では、行きましょう」
ダインと魔術師長が先頭になり、騎士たちを引き連れていく。
「アリーセはここで待機をお願いします。我々はこの先で魔獣たちを待ち構えます」
「分かりました」
すぐに医療テントが設営される。
なんという手際の良さだ。
「お気をつけて」
「はい、アリーセさんも」
そう言って、数人の騎士と魔道士を残し、先へと進んでいく。
アリーセはその背中を見送った。
「さて、備えてはおきましょう」
いつ、何が起きるかは分からない。
負傷者が出てからが私の仕事だが、それまでに準備は済ませておきたい。
アリーセは白衣の襟を正した。
「アリーセさんですね。私、宮廷医師のランドといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アリーセはランドと握手を交わす。
「あなたは陛下が認めたお方だと伺っています。私も、足を引っ張らないように頑張ります」
「私は、大したことはしてませんよ」
「またまた、ご謙遜を」
医療テントの中を見ると、設備はそれなりに整っているようだ。
簡易的とはいえ、この短時間でここまでできたら大したものである。
その時、すぐ近くで爆発音が響いた。
地面が揺れるのを体で感じる。
「どうやら、始まったようですね」
「ええ、そうですね」
今のは魔導師が撃った、攻撃魔法だろう。
これが、開戦の合図となった。
「死傷者、出ないといいですね」
「はい」
負傷したものだけなら治癒の力で治すことができる。
しかし、死んだ者を甦らすことは出来ない。
死者蘇生は禁忌の精霊術とされている。
そんな芸当ができる精霊術師はここ何年も現れてはいないのだが。
「アリーセさん、こいつを頼む!」
爆発音からしばらくして、ついに1人目の負傷者が運ばれてきた。
「分かりました。そこに寝かせてください」
アリーセはベッドに寝かせるように指示を出す。
騎士の左手に噛み跡のようなものが残っている。
傷自体は大したことではない。
「毒にやられていますね」
魔獣の牙に神経毒があったのだろう。
このままではアナフィラキシーを起こして心臓が止まってしまう可能性がある。
「解毒します」
アリーセは目を閉じた。
騎士団と魔道士団の間では緊張の空気が張り詰めている。
「これ、どうぞ」
アリーセは瓶に入っているポーションをダインに渡した。
「これは?」
「スタミナ増強ポーションです。疲労回復の効果があります。私からのお守りみたいな感じです」
「ありがとう。頂くよ」
ダインはその場で瓶の中身を全て飲み干した。
「これは凄い。体の内側から力が漲ってくる……」
「よかったです。ちゃんと効果があって」
「ただの疲労回復ポーションではないですよね?」
「まあ、私が調合したものなので、市販とは少し成分が違います」
アリーセが調合したポーションは、通常以上の付随効果がでる。
その効果がダインにも出たようである。
「では、行きましょう」
ダインと魔術師長が先頭になり、騎士たちを引き連れていく。
「アリーセはここで待機をお願いします。我々はこの先で魔獣たちを待ち構えます」
「分かりました」
すぐに医療テントが設営される。
なんという手際の良さだ。
「お気をつけて」
「はい、アリーセさんも」
そう言って、数人の騎士と魔道士を残し、先へと進んでいく。
アリーセはその背中を見送った。
「さて、備えてはおきましょう」
いつ、何が起きるかは分からない。
負傷者が出てからが私の仕事だが、それまでに準備は済ませておきたい。
アリーセは白衣の襟を正した。
「アリーセさんですね。私、宮廷医師のランドといいます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アリーセはランドと握手を交わす。
「あなたは陛下が認めたお方だと伺っています。私も、足を引っ張らないように頑張ります」
「私は、大したことはしてませんよ」
「またまた、ご謙遜を」
医療テントの中を見ると、設備はそれなりに整っているようだ。
簡易的とはいえ、この短時間でここまでできたら大したものである。
その時、すぐ近くで爆発音が響いた。
地面が揺れるのを体で感じる。
「どうやら、始まったようですね」
「ええ、そうですね」
今のは魔導師が撃った、攻撃魔法だろう。
これが、開戦の合図となった。
「死傷者、出ないといいですね」
「はい」
負傷したものだけなら治癒の力で治すことができる。
しかし、死んだ者を甦らすことは出来ない。
死者蘇生は禁忌の精霊術とされている。
そんな芸当ができる精霊術師はここ何年も現れてはいないのだが。
「アリーセさん、こいつを頼む!」
爆発音からしばらくして、ついに1人目の負傷者が運ばれてきた。
「分かりました。そこに寝かせてください」
アリーセはベッドに寝かせるように指示を出す。
騎士の左手に噛み跡のようなものが残っている。
傷自体は大したことではない。
「毒にやられていますね」
魔獣の牙に神経毒があったのだろう。
このままではアナフィラキシーを起こして心臓が止まってしまう可能性がある。
「解毒します」
アリーセは目を閉じた。
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