【完結】家族から虐げられていた私、実は世界で唯一精霊を操れる治癒精霊術師でした〜王都で癒しの聖女と呼ばれ、聖騎士団長様に溺愛されています〜

津ヶ谷

文字の大きさ
上 下
6 / 19

第6話 国王陛下

しおりを挟む

「私が、陛下とお会い出来るのですか?」
「ああ、私からの紹介なら問題ない。アリーセさんには部下を助けられた。私の部下は陛下の部下でもある。きっと会ってくれるさ」

 国王に謁見を申し込んでもすぐには会えないのが通常だ。
陛下はお忙しい身なので、数ヶ月は先まで謁見の予定が詰まっている。

 それをすっ飛ばして陛下と会えるというのだから、ダイン様は相当上の立場であると言うことが伺える。

「ぜひ、お会いしたいです」
「では、早速行こうか
「あの、私、この服で大丈夫でしょうか?」

 男爵家から出て来る時に唯一持ってきたドレスを着ていた。

「うん、問題ないよ。とても似合っている」

 そう言って、ダイン様は柔和に笑う。
その表情に思わずドキッとしてしまう。
きっと、女性の人気も高いのだろうなと思う。

「あ、ありがとうございます」
「では、行こう」

 お屋敷を出て、王宮へと向かう。
ここは貴族街という貴族のお屋敷が並んでいる場所だ。
王宮からも比較的近い位置にあるのだそう。

 ダイン様と並んで王宮までの道のりを歩く。

「団長、お疲れ様です!」

 門番をしていた騎士がダインの姿を見て勢いよく敬礼する。

「お疲れ様」

 そして、王宮に入ると従者の人に陛下に会いたいという旨を伝えていた。
しばらくして、従者が戻って来る。

「お待たせいたしました。陛下がお会いになるそうです」

 どうやら、本当に陛下が会ってくれるらしい。

「どうぞ、こちらで少々お待ちください」

 王宮の応接間に通された。
豪華な調度品が並べられている。
アリーセはそれを珍しそうに眺めることしかできなかった。

 待つこと数分、再び応接間の扉が開かれた。
現れたのは、金髪を短く切り揃え、筋肉質な男性。
ヴェルセラ王国国王、アーロン・ヴェルセラだ。

「ダイン、ちょうどいいところに来てくれた!」

 陛下は少し取り乱している様子だった。

「何かあったのですか?」
「娘が、娘が……」
「陛下、落ち着いてください」
「すまん、娘が原因不明の高熱で……おや、そちらのお嬢さんは?」

 陛下がアリーセに視線を移して言った。

「私の部下の騎士たちを救ってくれた治癒師のアリーセさんです。陛下に紹介するためにお連れしました」
「あなたが、アリーセ殿でしたか。いやはや、お見苦しい所をお見せしてしまいました」

 そう言って、陛下はピシッと背筋を伸ばす。

「私がこの国の国王、アーロン・ヴェルセラです。私からも礼を言わせてくれ。ありがとう」

 陛下は頭を下げる。

「頭を上げてください。私は治癒師として当然のことをしただけです。それに、一国の国王が簡単に頭を下げるもんじゃありませんよ」
「若いのに人間が出来ているんのだな」
「それより、お嬢様の様子、私にも診せてもらえませんか?」

 原因不明の熱だと言った。
それなら、長い時間何もしないのはまずいかもしれない。

「ダインの紹介なら間違いはないだろう。アリーセ殿、娘を診て頂けませんか?」
「はい、もちろんです」

 陛下に連れられ、応接間を出る。

「ここです」

 王宮内の一室の扉を開く。
そして、天蓋付きのベッドには苦しそうな息を吐くヴェルセラ王国の王女がいた。

「アリーセ殿頼めるか?」
「わかりました」

 アリーセは王女様に近づく。

「あなた、その方は?」
「部下の怪我を一瞬で治してくれた治癒師のアリーセ殿だ。彼女なら、メイを治せるかもしれんと思ってな」

 ベッドの横に立っていた綺麗な女性はアーロン陛下の奥さん。
つまりは王妃様である。

「ちょっと触るよ」

 アリーセは王女様の首を触る。
確かに熱い。とんでもない高熱だ。

「口開けますか?」

 王女様の口内を確認すると、口内炎がいくつも出来ていた。
それに、リンパも腫れているようである。

 これらの症状を総合的に判断すると、結論は一つ。

「王女様は、白眼病です」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜

よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」 デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。 「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」 婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。 今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。 それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。 「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」 「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」 次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。 話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。 お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。 賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。 ※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。

妹に裏切られて稀代の悪女にされてしまったので、聖女ですけれどこの国から逃げます

辺野夏子
恋愛
聖女アリアが50年に及ぶ世界樹の封印から目覚めると、自分を裏切った妹・シェミナが国の実権を握り聖女としてふるまっており、「アリアこそが聖女シェミナを襲い、自ら封印された愚かな女である」という正反対の内容が真実とされていた。聖女の力を狙うシェミナと親族によって王子の婚約者にしたてあげられ、さらに搾取されようとするアリアはかつての恋人・エディアスの息子だと名乗る神官アルフォンスの助けを得て、腐敗した国からの脱出を試みる。 姉妹格差によりすべてを奪われて時の流れに置き去りにされた主人公が、新しい人生をやり直しておさまるところにおさまる話です。 「小説家になろう」では完結しています。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

【完結】慰謝料は国家予算の半分!?真実の愛に目覚めたという殿下と婚約破棄しました〜国が危ないので返して欲しい?全額使ったので、今更遅いです

冬月光輝
恋愛
生まれつき高い魔力を持って生まれたアルゼオン侯爵家の令嬢アレインは、厳しい教育を受けてエデルタ皇国の聖女になり皇太子の婚約者となる。 しかし、皇太子は絶世の美女と名高い後輩聖女のエミールに夢中になりアレインに婚約破棄を求めた。 アレインは断固拒否するも、皇太子は「真実の愛に目覚めた。エミールが居れば何もいらない」と口にして、その証拠に国家予算の半分を慰謝料として渡すと宣言する。 後輩聖女のエミールは「気まずくなるからアレインと同じ仕事はしたくない」と皇太子に懇願したらしく、聖女を辞める退職金も含めているのだそうだ。 婚約破棄を承諾したアレインは大量の金塊や現金を規格外の収納魔法で一度に受け取った。 そして、実家に帰ってきた彼女は王族との縁談を金と引き換えに破棄したことを父親に責められて勘当されてしまう。 仕事を失って、実家を追放された彼女は国外に出ることを余儀なくされた彼女は法外な財力で借金に苦しむ獣人族の土地を買い上げて、スローライフをスタートさせた。 エデルタ皇国はいきなり国庫の蓄えが激減し、近年魔物が増えているにも関わらず強力な聖女も居なくなり、急速に衰退していく。

【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで

よどら文鳥
恋愛
 ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。  ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。  再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。  そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。  だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。  その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。  ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。  それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。  公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。  気絶していた白文鳥を発見。  ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。

魔眼の聖女〜魔眼持ちは聖女ではない!と婚約破棄された私、隣国の次期公爵に溺愛される〜

津ヶ谷
恋愛
「シルファ、君との婚約を破棄させてもらう!」  身勝手な理由で婚約を破棄された《魔眼の聖女》シルファ。  国王が倒れた事により、王太子の派閥の策略で王宮を追い出されてしまう。  父は抗議したが、その甲斐なく婚約破棄が成立した。 シルファは父の領地で再び暮らす事になるが、そこに隣国の次期公爵クロードが現れる。  これは《魔眼の聖女》と呼ばれる1人の少女が幸せになる物語。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

処理中です...