天才令嬢の医療改革〜女は信用出来ないと医術ギルドを追放された凄腕医師は隣国で宮廷医師となり王太子様から溺愛されて幸せを掴む〜

津ヶ谷

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第12話 悪魔の筋書き

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 応接間に静寂が流れる。
その静寂を破ったのは、アーサー陛下だった。

「エミリア殿には話しておかねばなるまいな」
「差し支えなければお願いします」

 この時代、悪魔の筋書きなど使える術者がいるのだとしたらそれは脅威だ。
そもそも、呪い自体お目にかかることはほとんど無い時代なのだ。

「これは最近になって分かったことなのだが、悪魔の筋書きを受けたのはリタだけじゃなかったんだ」
「では、他にも居たということですか?」
「ああ、あれは60年前まで遡る。私の曽祖母が同じ呪いを受けていたという」

 60年前ならまだ、国同士の戦争が当たり前のように行われていた時代。
その時代なら、行為な呪いを使える術師がいたのも頷ける。

「当時は明確な解呪の方法が無く、王妃だった私の曽祖母は呪いによって亡くなったと聞いている」
「しかし、この悪魔の筋書きは最高位の呪いです。術者は呪いの反動で亡くなっているはずです」

 この呪いは自分の命を代償として差し出さなければならないだろう。
もし、代償無く呪えるのだとしたらそれは人間では無い存在。

「まさか……」

 エミリアの中で、一つ仮説が浮かんだ。

「そのまさかだよ。リタや私の曽祖母は邪神に祝福されてしまったのだよ」

 邪神は人に災いをもたらすと言われている神だ。
そんな邪神に祝福されてしまったら、あの呪いが浮かび上がるのも納得できる。

「邪神は討伐されたのではなかったのですか?」

 10年と少し前、邪神は勇者によって討伐されたと記憶している。

「ああ、確かに邪神は勇者によって倒された。しかし、また邪神の祝福を受けるといことは……」
「邪神の復活が近い……」
「その可能性が高いだろうな」

 正確には邪神は討伐された訳ではなかった。
勇者の聖剣によって封印されたのだ。

 しかし、その封印が10年の年月が経過して破られようとしている。
この10年で邪神は力を蓄えていたのだろう。

「それでは」
「ああ、邪神の再封印を考えている」
「可能なのですか?」

 10年前は、勇者の加護を持った人間がいたらから封印が可能だった。
しかし、その勇者はもう居ない。

 マナ欠乏症で亡くなったのだ。

「サルヴァの力を使えば可能だと考えている」
「殿下の力をですか?」
「そうだ。まだ公式には発表しては居ないが、サルヴァこそ勇者の加護を受け継いだ者なのだ」
「そういうことだったのですね」

 エミリは理解した。
この人が背負っているものを。

「殿下は、邪神と戦うおつもりですか?」
「それで、民が救えるのなら私は戦います」

 どうやら、その意思は固いものらしい。

「では、邪神討伐の際は私も同行します」
「ダメだ! あまりにも危険すぎる!」

 サルヴァは声を大きくして言った。

「殿下は言いましたよね? 私はこれから沢山の命を救う人だって」
「ああ、言った」
「その命の中には、殿下の命も入っています」
「しかし!」

 それでもサルヴァは食い下がってくる。

「私は誰も死なせない! 私の前では絶対に死なせない!」

 それがエミリアが祖父から託されたものなのだ。

「命は一つしかないんです。粗末にするのは許しませんよ」
「分かった」

 サルヴァはその言葉に静かに頷いた。
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