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第95話 転移者の血を引く者
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樹は王都にある屋敷へと帰るとそのまま、ギルドへと向かった。
ギルドに入るとちょうどギルマスが出てきた。
「おお、樹じゃないか。どうかしたか。そんなに慌てて」
「俺が昨日、保護をお願いした子ってどこに居ますか?」
「ああ、その子なら孤児院に預けたよ」
「どこの孤児院ですか?」
「ここだ」
ギルマスは懐からメモ帳を取り出すと住所を書いて樹に渡した。
「ありがとうございます」
メモを受け取ると樹はギルドを飛び出した。
「全く、慌ただしいな。珍しいこともあるもんだ」
ギルマスから教えてもらった孤児院までは歩いてすぐであった。
「すみません。ここに昨日からお世話になっている紫色の髪の子いますか?」
樹は孤児院の女性職員に声を掛けた。
「ああ、ナナちゃんのことね」
「え、彼女、名前を名乗ったんですか?」
「ええ、ところで、あなたは?」
「昨日、彼女を保護した綾瀬と申します」
「え、あ、これは失礼しました。お会いになられます?」
「是非」
「では、こちらへどうぞ」
女性職員により、孤児院のロビーのようなところで待たされた。
数分後、昨日の少女は女性職員に連れられてやってきた。
「昨日はろくに挨拶もしないで悪かったな。綾瀬樹という。まあ、座ってくれ」
樹はナナもソファーに座るように促した。
「あの、昨日はありがとうございました」
「いやあ、気にすんなよ」
ナナはソファーに腰を下ろした。
「単刀直入に聞くぞ。昨日、俺はスキルをジャミングされた。君、転移者か?」
そう聞くとナナの表情はわずかに強張った。
「何、そんなに怖がらなくてもいい。実を言うとな、俺は転生者だ」
「え、ほ、本当ですか?」
「ああ、普段は転生者ということは隠して生活しているがな」
「し、信じてもいいんですよね?」
「もちろんだ。話してくれるか?」
「はい」
ナナはぽつぽつと話始めた。
「正確に言いますと私は転移者ではありません。私の母が転生者でした。この髪の色は遺伝です」
「そうだったのか……」
「母はそれはもう強い魔術師だったそうです。しかし、私がまだ幼い時、国への反逆という無実の罪を着せられ、殺されました」
ナナは目を伏せた。
「それはどこの国だ?」
「分かりません。私はまだ幼かったですし、気付いた時には奴隷としてこの国に売り飛ばされていました」
「大変な思いをしてきたんだな。もし、良かったらうちに来ないか? うちに居れば基本安全だし、使用人として報酬も支払う」
樹はナナに提案した。
「そんな、よろしいですか?」
「ナナさえよければだけどな」
「私は、是非お願いしたいです」
「よし、決まりだな」
樹は孤児院の院長と話し、ナナを引き取ることに決めた。
樹の身元は国から保証されているため、すんなりと引き取ることを許可された。
「よし、一緒に帰ろう」
「ありがとうございます」
こうして樹は転移者の血を引くナナを屋敷に迎え入れた。
ギルドに入るとちょうどギルマスが出てきた。
「おお、樹じゃないか。どうかしたか。そんなに慌てて」
「俺が昨日、保護をお願いした子ってどこに居ますか?」
「ああ、その子なら孤児院に預けたよ」
「どこの孤児院ですか?」
「ここだ」
ギルマスは懐からメモ帳を取り出すと住所を書いて樹に渡した。
「ありがとうございます」
メモを受け取ると樹はギルドを飛び出した。
「全く、慌ただしいな。珍しいこともあるもんだ」
ギルマスから教えてもらった孤児院までは歩いてすぐであった。
「すみません。ここに昨日からお世話になっている紫色の髪の子いますか?」
樹は孤児院の女性職員に声を掛けた。
「ああ、ナナちゃんのことね」
「え、彼女、名前を名乗ったんですか?」
「ええ、ところで、あなたは?」
「昨日、彼女を保護した綾瀬と申します」
「え、あ、これは失礼しました。お会いになられます?」
「是非」
「では、こちらへどうぞ」
女性職員により、孤児院のロビーのようなところで待たされた。
数分後、昨日の少女は女性職員に連れられてやってきた。
「昨日はろくに挨拶もしないで悪かったな。綾瀬樹という。まあ、座ってくれ」
樹はナナもソファーに座るように促した。
「あの、昨日はありがとうございました」
「いやあ、気にすんなよ」
ナナはソファーに腰を下ろした。
「単刀直入に聞くぞ。昨日、俺はスキルをジャミングされた。君、転移者か?」
そう聞くとナナの表情はわずかに強張った。
「何、そんなに怖がらなくてもいい。実を言うとな、俺は転生者だ」
「え、ほ、本当ですか?」
「ああ、普段は転生者ということは隠して生活しているがな」
「し、信じてもいいんですよね?」
「もちろんだ。話してくれるか?」
「はい」
ナナはぽつぽつと話始めた。
「正確に言いますと私は転移者ではありません。私の母が転生者でした。この髪の色は遺伝です」
「そうだったのか……」
「母はそれはもう強い魔術師だったそうです。しかし、私がまだ幼い時、国への反逆という無実の罪を着せられ、殺されました」
ナナは目を伏せた。
「それはどこの国だ?」
「分かりません。私はまだ幼かったですし、気付いた時には奴隷としてこの国に売り飛ばされていました」
「大変な思いをしてきたんだな。もし、良かったらうちに来ないか? うちに居れば基本安全だし、使用人として報酬も支払う」
樹はナナに提案した。
「そんな、よろしいですか?」
「ナナさえよければだけどな」
「私は、是非お願いしたいです」
「よし、決まりだな」
樹は孤児院の院長と話し、ナナを引き取ることに決めた。
樹の身元は国から保証されているため、すんなりと引き取ることを許可された。
「よし、一緒に帰ろう」
「ありがとうございます」
こうして樹は転移者の血を引くナナを屋敷に迎え入れた。
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