85 / 132
第84話 忍び寄る危機
しおりを挟む
樹たちが迷宮を攻略してから一週間の時が流れた。
今まで誰も攻略する事が出来なかった、イエーナ大迷宮が樹たちにより攻略された事も一部の冒険者たちの中で広まっていた。
「まさか、イエーナ大迷宮まで攻略してしまうとはな……」
ギルドマスター室に呼ばれていた樹とシルフィル。
ギルマスは笑っていた。
「いやぁ、まぁ何というか成り行きでして……」
今まで迷宮攻略とは無縁だった樹たちがいきなり大迷宮攻略となれば噂も立つだろう。
「風の大精霊とまで契約してしまうとは、お前さんも留まることを知らんのぉ。長いことギルドマスターやっておっても大精霊と契約した者などおらんかったわい」
ギルマスは少し呆れた様子だった。
「それで、わざわざ呼び出したのはその事を言うためだったんですか?」
「ああ、そろそろ本題へと行こうか。これを見てくれて」
そう言うとギルマスは直径3ミリほどの針を机の上に置いた。
「これって……」
「北の森で討伐された魔獣から抜き取ったものだ。最近、各地でこの針が刺さった魔獣が討伐されたと報告を受けている」
「これ、まずいぞ。マスター」
隣に座っていたシルフィルが言った。
「まずいってどういうことだ?」
「これが各地で発見されているという事は魔獣を操れる者は一人とは限らなくなってきた。操れる魔獣の数も正直、分からない。一斉に攻撃を仕掛けられたら王都は墜ちるだろう」
シルフィルは珍しく真剣な顔になっていた。
いや、本来これが精霊の持つ顔なのかもしれない。
「シルフィルさんの言う通りだ。我々も悠長に構えていられなくなってきたのだよ。一刻も早く魔獣を操れる者を探し出して来て欲しい」
ギルマスが頭を下げた。
「話は分かりましたから、とりあえず頭を上げて下さい。出来る限り調べてみますから」
「よろしく頼んだ」
「分かりました」
樹とシルフィルはギルド本部を出ると屋敷へ戻る道を歩いた。
「そう言えば、シルフィルは俺と契約する前はその姿にはなれなかったんだよな?」
「そうだよ。マスターと契約する前はずっとこの世界を漂っていたんだ」
「久々に人型になってどうだ?」
「いい事ばかりだよ。まず、飯が美味い!」
そう言って大精霊は、はしゃいでいる。
「その姿だとちゃんと味覚もあるんだな」
「もちろんだとも。この国の飯は最高に美味い! あれはなんだ?」
シルフィルは一つの露店を指差した。
「ああ、麦粥だな。食うか?」
「おうよ!」
シルフィルが露店へ向かって走った。
全く、子供のようだ。
「親父、麦粥二つくれ」
「あいよ! 銅貨6枚だよ」
「ほれ」
「毎度あり!」
露店の親父から麦粥を受け取ると、少し離れた所に座り、熱々の麦粥を頬張った。
「うん、やっぱり美味い! 露店の飯もいいもんだな、マスター」
「ああ、たまに食うのがいいんだよ」
仲良く麦粥を食べ終わると屋敷へ戻って調査の打ち合わせをするのであった。
今まで誰も攻略する事が出来なかった、イエーナ大迷宮が樹たちにより攻略された事も一部の冒険者たちの中で広まっていた。
「まさか、イエーナ大迷宮まで攻略してしまうとはな……」
ギルドマスター室に呼ばれていた樹とシルフィル。
ギルマスは笑っていた。
「いやぁ、まぁ何というか成り行きでして……」
今まで迷宮攻略とは無縁だった樹たちがいきなり大迷宮攻略となれば噂も立つだろう。
「風の大精霊とまで契約してしまうとは、お前さんも留まることを知らんのぉ。長いことギルドマスターやっておっても大精霊と契約した者などおらんかったわい」
ギルマスは少し呆れた様子だった。
「それで、わざわざ呼び出したのはその事を言うためだったんですか?」
「ああ、そろそろ本題へと行こうか。これを見てくれて」
そう言うとギルマスは直径3ミリほどの針を机の上に置いた。
「これって……」
「北の森で討伐された魔獣から抜き取ったものだ。最近、各地でこの針が刺さった魔獣が討伐されたと報告を受けている」
「これ、まずいぞ。マスター」
隣に座っていたシルフィルが言った。
「まずいってどういうことだ?」
「これが各地で発見されているという事は魔獣を操れる者は一人とは限らなくなってきた。操れる魔獣の数も正直、分からない。一斉に攻撃を仕掛けられたら王都は墜ちるだろう」
シルフィルは珍しく真剣な顔になっていた。
いや、本来これが精霊の持つ顔なのかもしれない。
「シルフィルさんの言う通りだ。我々も悠長に構えていられなくなってきたのだよ。一刻も早く魔獣を操れる者を探し出して来て欲しい」
ギルマスが頭を下げた。
「話は分かりましたから、とりあえず頭を上げて下さい。出来る限り調べてみますから」
「よろしく頼んだ」
「分かりました」
樹とシルフィルはギルド本部を出ると屋敷へ戻る道を歩いた。
「そう言えば、シルフィルは俺と契約する前はその姿にはなれなかったんだよな?」
「そうだよ。マスターと契約する前はずっとこの世界を漂っていたんだ」
「久々に人型になってどうだ?」
「いい事ばかりだよ。まず、飯が美味い!」
そう言って大精霊は、はしゃいでいる。
「その姿だとちゃんと味覚もあるんだな」
「もちろんだとも。この国の飯は最高に美味い! あれはなんだ?」
シルフィルは一つの露店を指差した。
「ああ、麦粥だな。食うか?」
「おうよ!」
シルフィルが露店へ向かって走った。
全く、子供のようだ。
「親父、麦粥二つくれ」
「あいよ! 銅貨6枚だよ」
「ほれ」
「毎度あり!」
露店の親父から麦粥を受け取ると、少し離れた所に座り、熱々の麦粥を頬張った。
「うん、やっぱり美味い! 露店の飯もいいもんだな、マスター」
「ああ、たまに食うのがいいんだよ」
仲良く麦粥を食べ終わると屋敷へ戻って調査の打ち合わせをするのであった。
3
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説

【完結】召喚に応じたらハーレムができた件~ドラゴンに転生した僕の甘々甘やかされ生活~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
社会人になり、一人称がオレから僕に代わり、僕がすっかり板についてきた頃、僕は大型のトラックに轢かれその生涯を閉じた。そして、気が付くとドラゴンとして異世界に転生していた。
そして、ある時――。
『お願い致します。どうか、わたくしにお力をお貸しください』
美少女の声にホイホイ釣られて、使い魔として召喚されてしまうのだった。
これは、ドラゴンに転生した僕が甘々に甘やかされるお話。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる