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第73話 意思を持つ魔獣
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国王陛下の呼び出しを受け、樹とアリアは王宮へと出向いていた。
「おう、わざわざ来てもらってすまんな」
そう言って陛下が応接間に入ってきた。
「いえ、お気になさらず。それで、今日はどういった件でお呼びですか?」
「ああ、これを見てくれ」
そう言うと陛下は一枚の調査書を樹たちの前に置いた。
「ほう、調査報告書ですか」
樹はその内容を確認していった。
「これは……」
「これが本当ならちょっとマズいですよね」
樹とアリアは顔を見合わせた。
「残念なことに本当なんだなこれが。うちの領地内に攻め込んできた魔獣に意思を持つ者がいたそうだ。我が国の騎士団一小隊が隊長を除いて全滅してしまったよ……」
そう言って陛下は表情を曇らせた。
「なるほど。俺たちに回ってくるだけの事がありますな」
「ですね」
「そこで、君たちにはこの件の調査を願いたい。危険かもしれんがよろしく頼む」
陛下は頭を下げた。
「分かりました。いいから頭を上げて下さい。一国の王が易々と頭を下げたら足元見られますよ」
樹の言葉で陛下は頭を上げた。
「感謝するぞ」
「はい、では、この報告書は頂いても?」
「もちろんだ」
「では、一度持ち帰らせて頂きます」
そう言うと樹は調査報告書を内ポケットに入れ、王宮を後にした。
「しかし、どうやって魔獣に意思を持たせているんだろうな」
樹とアリアはリビングで向かい合うような形で座っていた。
「そうですよね。普通、魔獣は無差別に人間を襲いますからね」
アリアも頭を悩ませていた。
「魔道具の類いではないでしょうか?」
コーヒーと紅茶をお盆に乗せたセザールが声を掛けてきた。
「魔道具?」
「はい、とりあえずお飲み物をどうぞ」
そう言って樹とアリアの前に飲み物を置いた。
「ありがとう」
「すみません。私の仕事なのに」
「いえ、いいんですよ」
セザールは微笑んだ。
「それより、セザール。魔獣を操る魔道具なんてあるのか?」
「はい、私も長いこと生きていますが、一度だけ聞いた事があります。確か針のような魔道具でその針を刺された魔獣は刺した者のいう事を聞くとか」
セザールの長い執事生活で一度しか耳にしていないのならば相当な貴重品であるのだろう。
「それが、本当に存在するって言うのか……」
「でも、それなら納得できますよね」
「ああ、操っているヤツの目的は分からないけどな。セザール情報ありがとう」
「いえ、お役に立てたようでしたら幸いです」
そう言うとセザールはまた仕事に戻って行った。
「さて、何はともあれ、明日から調査に出向くか」
「そうですね」
夕食となり、使用人のみんなと食事をする。
ディルクさんはまだこれに慣れないようだった。
「ディルクさんも肩の力抜いてゆっくり食べてね」
「お気遣いありがとうございます。あ、おつぎします」
「ああ、いいからいいから。飯くらいゆっくり食おうぜ」
「かしこまりました」
こうして大勢で食べる楽しい食事を終えると、風呂に入り、一日の疲れを取る。
そして、自分のベッドに潜り込むとやがて意識を手放すのであった。
「おう、わざわざ来てもらってすまんな」
そう言って陛下が応接間に入ってきた。
「いえ、お気になさらず。それで、今日はどういった件でお呼びですか?」
「ああ、これを見てくれ」
そう言うと陛下は一枚の調査書を樹たちの前に置いた。
「ほう、調査報告書ですか」
樹はその内容を確認していった。
「これは……」
「これが本当ならちょっとマズいですよね」
樹とアリアは顔を見合わせた。
「残念なことに本当なんだなこれが。うちの領地内に攻め込んできた魔獣に意思を持つ者がいたそうだ。我が国の騎士団一小隊が隊長を除いて全滅してしまったよ……」
そう言って陛下は表情を曇らせた。
「なるほど。俺たちに回ってくるだけの事がありますな」
「ですね」
「そこで、君たちにはこの件の調査を願いたい。危険かもしれんがよろしく頼む」
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樹の言葉で陛下は頭を上げた。
「感謝するぞ」
「はい、では、この報告書は頂いても?」
「もちろんだ」
「では、一度持ち帰らせて頂きます」
そう言うと樹は調査報告書を内ポケットに入れ、王宮を後にした。
「しかし、どうやって魔獣に意思を持たせているんだろうな」
樹とアリアはリビングで向かい合うような形で座っていた。
「そうですよね。普通、魔獣は無差別に人間を襲いますからね」
アリアも頭を悩ませていた。
「魔道具の類いではないでしょうか?」
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「魔道具?」
「はい、とりあえずお飲み物をどうぞ」
そう言って樹とアリアの前に飲み物を置いた。
「ありがとう」
「すみません。私の仕事なのに」
「いえ、いいんですよ」
セザールは微笑んだ。
「それより、セザール。魔獣を操る魔道具なんてあるのか?」
「はい、私も長いこと生きていますが、一度だけ聞いた事があります。確か針のような魔道具でその針を刺された魔獣は刺した者のいう事を聞くとか」
セザールの長い執事生活で一度しか耳にしていないのならば相当な貴重品であるのだろう。
「それが、本当に存在するって言うのか……」
「でも、それなら納得できますよね」
「ああ、操っているヤツの目的は分からないけどな。セザール情報ありがとう」
「いえ、お役に立てたようでしたら幸いです」
そう言うとセザールはまた仕事に戻って行った。
「さて、何はともあれ、明日から調査に出向くか」
「そうですね」
夕食となり、使用人のみんなと食事をする。
ディルクさんはまだこれに慣れないようだった。
「ディルクさんも肩の力抜いてゆっくり食べてね」
「お気遣いありがとうございます。あ、おつぎします」
「ああ、いいからいいから。飯くらいゆっくり食おうぜ」
「かしこまりました」
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そして、自分のベッドに潜り込むとやがて意識を手放すのであった。
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