最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷

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第66話 姫としての決断

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 意識を失った組織のボスを樹はロープで縛り上げていた。

「おーい。いつまで寝てんだ?」

 そう言うと樹はボスの顔をペシペシ叩いた。

「う、うぅ。貴様、どうするつもりだ?」
「それは俺が決めることじゃない」

 樹はシャルの方に向き直った。

「シャル、お前が決めろ」
「え、よろしいんですか?」
「ああ、お前の方がよっぽどこいつに恨みがあるだろう」

 そう言うと樹はストレージから鉄剣を取り出すとシャルに渡した。

「これは……?」
「それで、殺すもいいし、生かすもいい。好きにしろ」
「もし、私が殺さないという選択をしたら?」
「犯罪奴隷としてどっかに売り飛ばされるか、無期限の禁固刑ってところが関の山だろうな」
「分かりました」

 シャルは樹から剣を受け取ると、ボスへと近づいた。
どうやら覚悟は決まったようである。

「俺を殺してもまだ、終わりじゃねえぞ」

 ボスは何やら意味深なことを口にした。

「私はあなたに恨みがあるんです。あなたは、助けを求めた人をあなたは何人見殺しにしたんですか!!」

 シャルの目には怒りと悲しみに満ちていた。

「お父さん、お母さん、里の皆、今から仇を取るからね」

 そう言うとシャルは剣を逆手に持つと思い切り振り上げた。
次の瞬間、ボスの胸には剣が刺さり、やがて絶命した。

「やっと、やっと……みんなの仇が討てました」

 その刹那、シャルの目には一筋の涙が流れた。

「よくやったな。それが、お前の決断だったんだろ」
「はい……」

 シャルはそのまま樹に抱き着いて泣いた。
その頭を樹は優しく撫でた。

「落ち着いたか?」

 しばらくして、シャルは泣き止んだ。

「すみません。泣きわめいたりして」
「いいんだよ。ずっと我慢してきたんだろ。今日ぐらい好きに泣いたらいい。俺は、絶対にお前を見捨てない。地獄の果てだろうが付き合ってやる」
「あ、ありがとうございます……」
「おう、俺たちがシャルの新しい仲間だ」

 その言葉にアリアも力強く頷いた。

「さて、帰るか」
「「はい」」
「あ、あいつの亡骸どうしようか……?」
「放っておけばいいんじゃないですか」
「ま、いっか」

 樹は転移魔法を展開すると、王都のギルド本部を訪れていた。

「そうか、ヤツは死んだか」
「はい、確かに死にました」

 ギルマスに事の顛末を説明した。

「ご苦労だった。報酬はいつも通りの口座に振り込んでおく」
「分かりました。ありがとうございます」

 そう言って樹は席を立とうとした。

「あ、そうだ。シャル君も樹のギルドパーティ『漆黒』のパーティメンバーにしといたからな」

 ギルマスが言った。

「それは助かります」
「気にするな。この程度のことは造作もないわい」

 樹はギルド本部を後にすると屋敷に向かった。

「色々あったけどこれで一段落かな。一人でも多くの人に笑顔が戻るといいな」

 そんなことを呟きながら樹は屋敷までの道のりを歩いた。
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