最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷

文字の大きさ
上 下
53 / 132

第53話 樹が風邪

しおりを挟む
 樹は目が覚めると体を起こそうとした。

「あれ、何でこんなに体が重いんだ」

 樹にとってこの感覚は久しぶりだった。

「頭、痛い。体も熱っぽいし」

 その時、樹は悟った。

「風邪ひいたなこりゃ」

 ここ最近の激務により、疲れもストレスも溜まっていたのだろう。
樹はアリアを呼んだ。

「どうされましたか?」
「多分、風邪引いた」
「ちょっと失礼します」

 アリアは樹の額に自分の額を合わせてきた。

「ちょっ何を」
「確かに熱があるようですね」
「あ、う、うん」
「最近、色々お疲れのようでしたからね。無理しすぎたんでしょう。何か食べれそうですか」
「いや、とりあえず、飲み物が欲しい」
「かしこまりました」

 そう言ってアリアは樹の部屋を出た。
そのアリアと入れ違いになるように、セザールとシャルが入ってきた。

「旦那様、お体大丈夫でしょうか?」
「旦那様でも風邪とか引くんですね」

 おい、シャルよ。それはどういう意味だ。

「そりゃ、俺も人間だからな。安静にしとけば大丈夫だろ」
「にしても、旦那様を倒すほどのウイルスがこの世におりますとは」

 セザールが言った。
どいつもこいつも人を何だと思っているのか。

「回復魔法とかで治せないんですか?」
「試してみたんだがな、外傷にしか効果が無いみたいで、ウイルスには効かなかったんだよ」
「そう、なんですね。なら、仕方ありませんね。ゆっくりしてください」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」

 そんな話をしているうちにアリアが帰って来た。

「みなさん、どうしたんですか? ここに集まって」
「旦那様が倒れられたと聞きましたので、様子を見に」
「そうですか。でも、こんなにここに居ても仕方ありませんから。樹さまは私が看ますから皆さんは仕事してください」

 そう言ってアリアは二人を追い出すような形で部屋から出した。

「お水、ここに置いておきますから飲んでくださいね」
「ああ、ありがとう」
「寝れるようなら寝て下さい。ちょっと失礼しますね」

 アリアは樹の額の上に冷たいタオルを置いてくれた。

「気持ちいい……」

 樹は目を閉じるとやがて意識を手放した。

「寝てたのか……」
「あ、お目覚めですか」

 アリアは樹のベッドの横の椅子に腰を降ろしていた。

「ああ。ずっとそこに居たの?」
「はい、そうですが」
「そっか。ありがとうな」
「いえ、お気になさらずに」

 その時、樹の腹の虫が鳴った。

「お腹、空きました?」
「ああ、そうみたいだな」
「じゃあ、ちょっと何か作ってきますね」

 そう言ってアリアはキッチンへと向かった。

「お待たせしました」

 数分後、アリアがお盆に湯気が出ている皿を載せて戻ってきた。

「ありがとう。これ、アリアが作ったのか?」
「はい。簡単な卵雑炊でですが」
「十分美味しそうだよ」

 アリアは料理スキルレベルMaxなので料理の腕も確かである。

「はい、樹さま、口開けて下さい。あーん」
「自分で食べれるよ」
「いいから、大人しくいう事聞きなさい」
「は、はい」

 樹は口を開けた。

「よろしいです」

 そう言うと、アリアは雑炊を樹の口に運んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

【完結】召喚に応じたらハーレムができた件~ドラゴンに転生した僕の甘々甘やかされ生活~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
 社会人になり、一人称がオレから僕に代わり、僕がすっかり板についてきた頃、僕は大型のトラックに轢かれその生涯を閉じた。そして、気が付くとドラゴンとして異世界に転生していた。  そして、ある時――。 『お願い致します。どうか、わたくしにお力をお貸しください』  美少女の声にホイホイ釣られて、使い魔として召喚されてしまうのだった。  これは、ドラゴンに転生した僕が甘々に甘やかされるお話。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...