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第41話 新たな教育機関
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シャルが冒険者登録をしてから数日。
冒険者としての修行と、メイドとしての仕事もシャルはきちんとこなしてくれていた。
「最近は呼び出しも無いからなぁ」
樹は相変わらず昼過ぎ頃に起きては、魔術書を読んだり、魔道具を製作したりしていた。
「旦那様、王宮よりお手紙が届いております」
執事のセザールが書簡を手にやって来た。
「おう、ありがとう」
樹は書簡を受け取るとペーパーナイフで封を切った。
『明日の午後、王宮へと来られたし。頼みたい事がある』
書簡にはそれだけ書かれていた。
「仕方ない。明日行くか」
読み終えると樹は書簡を机の上に置いた。
翌朝、樹はいつも通りの時間に起き出した。
「おはよう」
「おはようじゃないですよ。今、何時だと思っているんです? 今日は王宮から呼ばれているんですから、シャキッとして下さい」
アリアに注意された。
「あぁ、そうだったな。すまん」
「忘れないで下さいよ」
「飯食ったら行ってくるよ」
樹は食事をすると屋敷を後にし、王宮へと向かった。
王宮へ着くといつものメイドさんにより応接間へと通される。
「おお、来たか来たか」
そこには陛下と公爵様の姿があった。
「お待たせしちゃったみたいですみません」
「いやいや、こっちから呼び出したんだ、気にするな」
「ありがとうございます。それで、今日はどういったご用件でしょうか?」
樹は陛下たちに尋ねた。
「うむ、それはだな」
「兄上、私から説明させて下さい」
公爵様が口を開いた。
「そうだな。これは公爵から言った方が良い事かも知れんな」
「はい、では私から説明させて頂きます」
公爵様が本題へと入ろうとした。
「我が国の新しい教育機関として新たに魔術学院を設立しようと考えております。現在、剣技を磨く騎士学院はありますが、魔術学院はありませんでした」
「ほう、話は分かりましたけどなぜ私にその話を?」
樹は疑問に思った事をそのまま口にした。
一介の冒険者においそれと話していい事でもあるまい。
「はい、樹さんには是非、魔術学院の学長を務めて頂きたいと考えております」
「学長、ですか? 何故私が?」
「樹さんは魔術の事に関しては右に出る者は居ない。しかもその若さで賢者にまで至っている。これほど適した者は中々おりません」
公爵様は樹以外、学長の座はありえないと考えているようであった。
「なるほど。しかし、私には冒険者としての仕事もありますよ」
「学長と言っても直接授業をするという事はほとんどありません。何かのイベント時に講演をして頂くくらいです。もちろん、冒険者としての樹さんに頼んでますから冒険者を優先して頂いて構いません」
なかなか悪くない条件だとは思う。
「分かりました。お引き受け致します」
「そうですか。ありがとうございます。樹さんが学長になれば話題性も十分ありますし、生徒も集まる事でしょう」
最初からそれが目的なのではないかとも思ったが、そこは突っ込まないことにした。
魔術学院は来月から本格的に始動するとの事だった。
冒険者としての修行と、メイドとしての仕事もシャルはきちんとこなしてくれていた。
「最近は呼び出しも無いからなぁ」
樹は相変わらず昼過ぎ頃に起きては、魔術書を読んだり、魔道具を製作したりしていた。
「旦那様、王宮よりお手紙が届いております」
執事のセザールが書簡を手にやって来た。
「おう、ありがとう」
樹は書簡を受け取るとペーパーナイフで封を切った。
『明日の午後、王宮へと来られたし。頼みたい事がある』
書簡にはそれだけ書かれていた。
「仕方ない。明日行くか」
読み終えると樹は書簡を机の上に置いた。
翌朝、樹はいつも通りの時間に起き出した。
「おはよう」
「おはようじゃないですよ。今、何時だと思っているんです? 今日は王宮から呼ばれているんですから、シャキッとして下さい」
アリアに注意された。
「あぁ、そうだったな。すまん」
「忘れないで下さいよ」
「飯食ったら行ってくるよ」
樹は食事をすると屋敷を後にし、王宮へと向かった。
王宮へ着くといつものメイドさんにより応接間へと通される。
「おお、来たか来たか」
そこには陛下と公爵様の姿があった。
「お待たせしちゃったみたいですみません」
「いやいや、こっちから呼び出したんだ、気にするな」
「ありがとうございます。それで、今日はどういったご用件でしょうか?」
樹は陛下たちに尋ねた。
「うむ、それはだな」
「兄上、私から説明させて下さい」
公爵様が口を開いた。
「そうだな。これは公爵から言った方が良い事かも知れんな」
「はい、では私から説明させて頂きます」
公爵様が本題へと入ろうとした。
「我が国の新しい教育機関として新たに魔術学院を設立しようと考えております。現在、剣技を磨く騎士学院はありますが、魔術学院はありませんでした」
「ほう、話は分かりましたけどなぜ私にその話を?」
樹は疑問に思った事をそのまま口にした。
一介の冒険者においそれと話していい事でもあるまい。
「はい、樹さんには是非、魔術学院の学長を務めて頂きたいと考えております」
「学長、ですか? 何故私が?」
「樹さんは魔術の事に関しては右に出る者は居ない。しかもその若さで賢者にまで至っている。これほど適した者は中々おりません」
公爵様は樹以外、学長の座はありえないと考えているようであった。
「なるほど。しかし、私には冒険者としての仕事もありますよ」
「学長と言っても直接授業をするという事はほとんどありません。何かのイベント時に講演をして頂くくらいです。もちろん、冒険者としての樹さんに頼んでますから冒険者を優先して頂いて構いません」
なかなか悪くない条件だとは思う。
「分かりました。お引き受け致します」
「そうですか。ありがとうございます。樹さんが学長になれば話題性も十分ありますし、生徒も集まる事でしょう」
最初からそれが目的なのではないかとも思ったが、そこは突っ込まないことにした。
魔術学院は来月から本格的に始動するとの事だった。
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