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第73話 エルフの里へ

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 翌朝、御影は普段より少し早い時間に目が覚めた。

「おはよう」
「おはようございます。お早いですな」

 執事のロイクが朝食の準備をしていた。

「おう、今日は勝負の日だからな」
「そうでしたね。クラリス様を守って下さいね」
「当たり前だ。どこの馬の骨かも分からないヤツにクラリスは渡さんよ」
「なんか、父親みたいですね」
「俺まだ、24だぞ」

 そう言って二人は笑い合った。

「ごちそうさまでした」

 朝食を取り終わると、御影はエルフの里へ行く準備をしていた。

「気をつけてくださいね」
「私のせいですみません」
「何、気にするな。家族だって言ったろ?」
「はい」
「じゃあ、行ってくる。後のことは任せた」
「「行ってらっしゃい」」

 杏とクラリスに見送られ、エルフの里へと転移魔法を繋げた。

「ここも久々だなぁ」

 そこは以前来た時から特に変わって居なかった。
御影はそのまま、里の奥の方に進んでいった。

「止まれ!!」

 正面に金髪で長身、エルフ特有の長い耳の二十代と思われる男が弓矢を構えて立っていた。

「貴様、何者だ!!」
「叢雲御影だ」
「ほう、お前が御影か。それで、クラリスはどうした?」
「ここには来ないよ。お前らなんかに渡すつもりもないしな」

 御影はその男に殺気を放った。

「俺はクラリスの兄だぞ!!」
「クラリスに兄さんは居ないそうだぞ」
「いいのか、クラリスを渡さないのなら全面戦争だぞ」
「その前にここでお前らを潰す」

 御影は更に強い殺気を放った。

「うっ、なんだこの殺気は……」
「伊達に最強って言われて無いんでね」
「舐めるなぁぁぁ!!!!」

 そう言うと男は矢を放った。
炎の魔法と共に御影に向かって矢が飛んできた。
それを御影は避けることなくその場に立っていた。

 ドゴーン

 辺りが炎の渦に包まれた。

「ざまあみろ! 俺を舐めるか……」
「なんだこれは。大道芸かなんかか?」

 御影は風魔法によりその炎を収束させていた。

「お、俺の炎が効かないだと」
「ちょっと、自分の力を過信しているんじゃないかな? 世の中は広い。本当の地獄ってやつを思い知らせてやるよ」

 そう言うと御影は黒い笑みを浮かべた。

『魔弾』

 御影は自分の魔力をそのままの形で外に放出する魔弾を男に向けて放った。

「うわぁぁ!!」

 吹っ飛ばされた男はそのまま後ろの崖にぶつかった。

「いいか、二度とクラリスに手を出すな。次、手を出したら、こんなもんじゃ済まないぞ。返事は?」
「は、はいぃ」
「よし、じゃあな」

 御影は胸倉をつかんでいた手を離すと転移魔法を王都の屋敷へと繋いだ。
ここまででかかった時間は半日程度だろうか。

「ただいまー」
「「おかえりなさい」」

 杏とクラリスが出迎えてくれた。

「それで、どうでしたか?」
「ああ、お前の兄と名乗る男が居たから軽くしばいといたぞ。これで、もう、クラリスには手は出せないだろうな」
「な、なんか怖いですけど、御影さんがそう言うならきっと大丈夫ですね」

 そう言ってクラリスは微笑んだ。
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