66 / 77
第65話 店外デートはお断りです。
しおりを挟む
メイド喫茶セルヴァントは今日も昼から営業している。
最近、気づいたのだが、常連さんは何となく来る時間が決まっていたりする。
御影は本店の方に出勤していた。
「杏ちゃん今日も可愛いね」
「ご主人様もいつも来てくれてありがとうございます」
このご主様は開店当初からの常連さんであり、杏が出勤するときにはほぼ必ず顔を出している。
「今日もかわいいからドリンク奢っちゃおうかな」
「いいんですかぁ。ありがとうございます!」
セルヴァントにはお気に入りのメイドさんにドリンクを奢って、一緒に飲める制度を新たに導入したのだ。
ドリンク料金は全額、もらったメイドにバックとして入るシステムになっている。
「御影さん、ご主人様からドリンク頂きました」
「はいよー」
御影は杏が好きでいつも飲んでいるソフトドリンクを手渡した。
「ありがとうございます」
それを持って杏はまたホールに戻って行く。
「では、乾杯!!」
杏は笑顔で乾杯をしていた。
「ねぇ、俺さ、杏ちゃんにだいぶお金使っているよね?」
「いつもありがとうございます!」
「だからさ、そろそろいいんじゃない?」
その客はニヤニヤとした表情を杏に向けた。
「いいって何の事ですか?」
「だからさ、お店じゃなくて、外で会おうよ。美味しいレストランとか知ってるし、ご馳走するよ」
「そ、それは出来ないルール何ですよ。申し訳ありません」
杏はなんとか笑顔を保っていた。
「何でだよ!? 俺はこんなにも君を想っているのに!!」
男は声を荒げた。
「ですから、会いたかったらお店に来て下さいね」
その騒ぎを聞いた御影はキッチンから出て来た。
「お客さん、困りますよ。他のお客さんにもご迷惑ですから、落ち着いてください」
「うるせぇ! 関係ないヤツは引っ込んでろ!」
男は御影を突き飛ばすと杏の手を握った。
「ねぇ、僕が養ってあげるから、僕と暮らそう。ね?」
杏は完全に嫌な顔をしていた。
「あ、あれ終わりましたね」
「あれを御影さんは許しませんからね」
杏の他に出勤していたメイドさん二人がキッチンの方からそう呟いた。
「お前、バカじゃねぇのか? いいか、お前が杏を好きになるのは勝手だ。だからってそれを押し付けるなよ! お前と杏はビジネスで繋がった関係だ。それ以上を求めんな」
御影はドスの効いた声で言い放ち、杏の手を握っていた腕を捻り上げた。
「夢見たいなら綺麗に遊べ。料金は要らねぇからさっさと出て行け」
その言葉で男は逃げるように去って行った。
「あぁあぁ、どうしてうちの店には問題起こすヤツばかり来るんだろうな。大丈夫だったか?」
「え、えぇまぁ。ありがとうございます」
「お前、可愛いんだから自覚持って行動してくれよ」
「か、可愛い……ですか?」
「え、可愛いと思うけど。可愛いよね」
御影の言葉に杏は顔を真っ赤に染めていた。
最近、気づいたのだが、常連さんは何となく来る時間が決まっていたりする。
御影は本店の方に出勤していた。
「杏ちゃん今日も可愛いね」
「ご主人様もいつも来てくれてありがとうございます」
このご主様は開店当初からの常連さんであり、杏が出勤するときにはほぼ必ず顔を出している。
「今日もかわいいからドリンク奢っちゃおうかな」
「いいんですかぁ。ありがとうございます!」
セルヴァントにはお気に入りのメイドさんにドリンクを奢って、一緒に飲める制度を新たに導入したのだ。
ドリンク料金は全額、もらったメイドにバックとして入るシステムになっている。
「御影さん、ご主人様からドリンク頂きました」
「はいよー」
御影は杏が好きでいつも飲んでいるソフトドリンクを手渡した。
「ありがとうございます」
それを持って杏はまたホールに戻って行く。
「では、乾杯!!」
杏は笑顔で乾杯をしていた。
「ねぇ、俺さ、杏ちゃんにだいぶお金使っているよね?」
「いつもありがとうございます!」
「だからさ、そろそろいいんじゃない?」
その客はニヤニヤとした表情を杏に向けた。
「いいって何の事ですか?」
「だからさ、お店じゃなくて、外で会おうよ。美味しいレストランとか知ってるし、ご馳走するよ」
「そ、それは出来ないルール何ですよ。申し訳ありません」
杏はなんとか笑顔を保っていた。
「何でだよ!? 俺はこんなにも君を想っているのに!!」
男は声を荒げた。
「ですから、会いたかったらお店に来て下さいね」
その騒ぎを聞いた御影はキッチンから出て来た。
「お客さん、困りますよ。他のお客さんにもご迷惑ですから、落ち着いてください」
「うるせぇ! 関係ないヤツは引っ込んでろ!」
男は御影を突き飛ばすと杏の手を握った。
「ねぇ、僕が養ってあげるから、僕と暮らそう。ね?」
杏は完全に嫌な顔をしていた。
「あ、あれ終わりましたね」
「あれを御影さんは許しませんからね」
杏の他に出勤していたメイドさん二人がキッチンの方からそう呟いた。
「お前、バカじゃねぇのか? いいか、お前が杏を好きになるのは勝手だ。だからってそれを押し付けるなよ! お前と杏はビジネスで繋がった関係だ。それ以上を求めんな」
御影はドスの効いた声で言い放ち、杏の手を握っていた腕を捻り上げた。
「夢見たいなら綺麗に遊べ。料金は要らねぇからさっさと出て行け」
その言葉で男は逃げるように去って行った。
「あぁあぁ、どうしてうちの店には問題起こすヤツばかり来るんだろうな。大丈夫だったか?」
「え、えぇまぁ。ありがとうございます」
「お前、可愛いんだから自覚持って行動してくれよ」
「か、可愛い……ですか?」
「え、可愛いと思うけど。可愛いよね」
御影の言葉に杏は顔を真っ赤に染めていた。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
お姉ちゃんが僕のことを構い過ぎて色々困ってますっ
杏仁豆腐
恋愛
超ブラコンの姉に振り回される弟の日常を描いたシスコン、ブラコン、ドタバタコメディ! 弟真治、姉佳乃を中心としたお話です。※『姉が僕の事を構い過ぎて彼女が出来ませんっ! 短編』の続編です。※イラストは甘埜様より頂きました!
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる