35 / 77
第34話 クラリスたちからのサプライズです。
しおりを挟む翌日は私達のシフトだった。
昼過ぎになると一度お店が暇になるので、そのタイミングを見計らって相談した。
「はい! 私、お花でいっぱい飾り付けをしたい」
「うーん、御影さんは黒とか紺のイメージだからなんか黒系で装飾するなんてどうでしょう?」
「最近流行りの『ガーランド』や『ペーパークラフト』を作ってみるのはいかがかしら? モノトーンにするのならその方が豪華になるかもしれないですわ!」
三人で相談した結果、ペーパークラフト壁に装飾をして、ガーランドで『Happy birthday』と『いつもありがとう』の文字を飾ることにした。
色は御影さんのイメージに合わせてモノトーンの装飾にゴールドとシルバーをさし色で加えたシックなデコレーションにすることにした。
この日から、お店の空いている時間は交互に休憩を取ったりしながら、私達は個々の作業をしていった。
ルシールさんは「私たくさん作るのは得意だけど細かい作業得意じゃないかも」と言っていたのでペーパーファン(紙でできた扇状の飾り物)を作ってもらうことにした。
ペーパーファンは、好きな色の画用紙を色々な幅でギザギザに折り目を付けたら、丸くなるように両面テープで繋げて作る。
大きさが異なる方が飾りらしくて可愛くなるのでお任せすることにした。
アラベルさんは「私細かい作業の方が得意かも」と言っていたので、ガーランド(ドアや窓辺を装飾するために花や木の実を繋げて網状にした物)を作ってもらうことにした。
ガーランドは布や紙で作ったり、紙コップに電球を通してランプのようにしたりできるので、アラベルさんに紙で『Happy Birthday』と『いつもありがとう』を作ってもらう。
私は紙コップやコットンボールに小さな電球をつけてランプガーランドを作る。
屋敷に置いておくと御影さんに見られては困るので、アラベルさんの家に装飾した物を持って帰ってもらった。
前日、私達はシフトが入っていなかったが三人でカフェに集まった。
「いよいよ明日ね」
「そうですわね。なんだか緊張しますわ」
「でもとっても楽しみですよ!」
「明日は御影さんが屋敷を出られたら、アラベルさんのお宅に伺いますわね」
「ええ、待ってます」
「その後二人でルシールさんのお宅に伺いますわね」
「はい! いつでも待ってます」
そうしてそれぞれの家に何事もなかったかのように帰る。
せっかくの休みなので明日に備えて、早く寝ようと思ったが、全然寝付けなかった。
『御影さん、喜んでくれるかしら……。そうだ。お手紙を書いたら読んでくれるかしら?』
机に向かって、御影さんへの感謝の気持ちを言葉にした。
翌朝、杏さんとメレーヌさんと朝食をとっていると、すごく不機嫌そうな御影さんが起きてきた。
「おはよう。三人とも早いね」
「おはようございます。御影さんがこんな早くに起きてらっしゃるの珍しいですね」
すっとぼけて私は声をかける。
「おはようございます。今日出勤ですから」
「おはようございます、御影さん」
みんななんてことない顔をするのが上手だ。
「今日は国王陛下から呼び出しがあるんだよ。こんな早くに何の用なんだか。くだらない用事だったらすぐ帰ってやる」
そう言って御影さんは屋敷を後にした。
「「さあ、準備を始めましょう」」
杏さんと声を揃える。
三人で屋敷を飛び出してそれぞれの準備を始めた。
アラベルさんのお宅にお邪魔すると、もう準備は出来ていて、作ったものが台車に積まれていた。
「おはようございます。行けますよ!」
「おはようございます。ありがとうございますわ」
ルシールさんの所に行くと、こちらも外で待っていた。
「さあ! 行きましょう! 」
三人で急いでお店に向かった。
【本日貸し切り】
お店についてすぐ、ドアに貸し切りの札をかけた。
中に入ると甘い匂いやおいしそうな匂いで包まれていた。
三人はそれぞれ部屋いっぱいに飾り付けをする。
装飾が終わったのはそれから一時間後くらいのことだった。
店内の電気を消してランプガーランドに電気をつけるとなんだか不思議な空間になった。
装飾はモノトーンで統一感があり、落ち着く雰囲気になっていた。
「装飾できたのね! こちらも完成したわ」
「後はオーナーが来るのを待つだけだな」
「そろそろ来ると思うわ、ロイクさんに頃合いを見計らってトラブルが起きている、と伝えてもらえるようにお願いしているから、きっと驚くでしょうね」
カーテンを閉め、お部屋を真っ暗にする。
私達はドキドキしながら御影さんが帰ってくるのを待っていた。
「おい、トラブルって何があった? それに今日の貸し切り聞いてないぞ」
御影さんが慌てて入ってきた。
私は電気をつける。合わせたように杏さんが声をかける。
「せーのっ」
『『『御影さん、ハッピーバースデー!!!』』』
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
お姉ちゃんが僕のことを構い過ぎて色々困ってますっ
杏仁豆腐
恋愛
超ブラコンの姉に振り回される弟の日常を描いたシスコン、ブラコン、ドタバタコメディ! 弟真治、姉佳乃を中心としたお話です。※『姉が僕の事を構い過ぎて彼女が出来ませんっ! 短編』の続編です。※イラストは甘埜様より頂きました!
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる