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第12話 書道部長
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放課後、教室を出ると、階段を上がり、『書道室』とプレートが出ている扉を開ける。
「こんにちは」
書道室に入ると、先に居た部員たちに声を掛ける。
「あ、部長こんにちは」
「お疲れ様です!」
きちんと挨拶をするのが、書道部のルールだった。
「莉緒はまだ来てないのか?」
「あ、副部長なら、飲み物買いに出ました」
1年生の部員がそう、教えてくれた。
書道部は、俺以外は全員女子だ。
最初は、肩身の狭い思いをしたが、今では、だいぶ馴染んで来たと言えるだろう。
「さて、練習するかぁ」
カバンを下ろすと、定位置に座った。
書の世界では、臨書と言われる、手本を見て、それを真似する練習するため、後ろの棚から、今日の課題を取り出した。
愛用の筆と墨で、半紙に6文字を入れていく。
黙々と、神経を集中させ、一文字一文字を書いていく。
「ふぅ……」
一段落した所で、顔を上げた。
「めちゃくちゃ上手い……」
「さすがは部長です!」
気付くと、1年の部員、萌と亜未が覗き込んで居た。
「おお、びっくりしたな!」
「部長って、本当に書いてる時は周り見えなくなりますよねぇ」
「仕方ないだろ? 集中しているんだから」
「私の作品、見てもらえませんか?」
そう言って、後ろから現れた咲良が半紙をこちらに向けて来た。
これが、一年生ながら、中々上手いのだ。
「うん、よく書けているんじゃないか? だから、敢えて言うけど、右払い苦手だろ?」
「分かるんですね?」
「ああ、右払いに独特な癖がある。もっと、こう滑らかに力を抜いていくといいぞ」
俺はそう言うと、実際に書いて見せた。
「何で、1発でそんな書けるのよ……」
「練習だよ」
俺は、誰よりも遅くまで残り、書と向き合って来た自信がある。
まあ、自信過剰になるのは良くないが。
「部長、次、私のも見て下さい」
「その次私も!」
萌と亜未も作品を持ってきて居た。
その時、隣の部屋の扉が開いた。
「東條、ちょっといいか?」
隣に併設されている、書道科準備室から、顧問で、この高校の書道教諭の河合が顔を出した。
「はい、今行きます!」
俺は立ち上がると、書道科準備室へと向かう。
「ごめん、呼ばれたから、また今度な」
書道準備室の前まで行くと、扉をノックする。
「入ってくれ」
「失礼します」
相変わらず、作品や資料で雑然としている部屋を見回しながら、河合の元へと行った。
「僕に何かご用ですか?」
「ああ、まぁ、座れ」
河合は近くにあるパイプ椅子を指差した。
「は、はい。では、失礼します」
「これ、知ってるよな?」
河合は、一冊の冊子を手渡して来た。
「これ、うちの生徒会誌ですよね?」
「ああ、その表紙をお前さんに書いて貰いたいんだと。生徒会長からのご指名だ」
「また、何で俺に」
「まぁ、そんな面倒くさそうな顔するな。お前さん有名なんだよ。この学校ではな」
何せ、この学校では快挙とも呼ばれるほど、書のコンクールの上位賞を総なめにして来たのだ。
「分かりました。やらせて頂きます」
「助かるよ。じゃあ、詳しいことは生徒会長に聞いてくれ、今度資料持って来るそうだ」
「はい、分かりました」
河合の話はそれで終わったので、春輝は書道準備室を後にした。
「こんにちは」
書道室に入ると、先に居た部員たちに声を掛ける。
「あ、部長こんにちは」
「お疲れ様です!」
きちんと挨拶をするのが、書道部のルールだった。
「莉緒はまだ来てないのか?」
「あ、副部長なら、飲み物買いに出ました」
1年生の部員がそう、教えてくれた。
書道部は、俺以外は全員女子だ。
最初は、肩身の狭い思いをしたが、今では、だいぶ馴染んで来たと言えるだろう。
「さて、練習するかぁ」
カバンを下ろすと、定位置に座った。
書の世界では、臨書と言われる、手本を見て、それを真似する練習するため、後ろの棚から、今日の課題を取り出した。
愛用の筆と墨で、半紙に6文字を入れていく。
黙々と、神経を集中させ、一文字一文字を書いていく。
「ふぅ……」
一段落した所で、顔を上げた。
「めちゃくちゃ上手い……」
「さすがは部長です!」
気付くと、1年の部員、萌と亜未が覗き込んで居た。
「おお、びっくりしたな!」
「部長って、本当に書いてる時は周り見えなくなりますよねぇ」
「仕方ないだろ? 集中しているんだから」
「私の作品、見てもらえませんか?」
そう言って、後ろから現れた咲良が半紙をこちらに向けて来た。
これが、一年生ながら、中々上手いのだ。
「うん、よく書けているんじゃないか? だから、敢えて言うけど、右払い苦手だろ?」
「分かるんですね?」
「ああ、右払いに独特な癖がある。もっと、こう滑らかに力を抜いていくといいぞ」
俺はそう言うと、実際に書いて見せた。
「何で、1発でそんな書けるのよ……」
「練習だよ」
俺は、誰よりも遅くまで残り、書と向き合って来た自信がある。
まあ、自信過剰になるのは良くないが。
「部長、次、私のも見て下さい」
「その次私も!」
萌と亜未も作品を持ってきて居た。
その時、隣の部屋の扉が開いた。
「東條、ちょっといいか?」
隣に併設されている、書道科準備室から、顧問で、この高校の書道教諭の河合が顔を出した。
「はい、今行きます!」
俺は立ち上がると、書道科準備室へと向かう。
「ごめん、呼ばれたから、また今度な」
書道準備室の前まで行くと、扉をノックする。
「入ってくれ」
「失礼します」
相変わらず、作品や資料で雑然としている部屋を見回しながら、河合の元へと行った。
「僕に何かご用ですか?」
「ああ、まぁ、座れ」
河合は近くにあるパイプ椅子を指差した。
「は、はい。では、失礼します」
「これ、知ってるよな?」
河合は、一冊の冊子を手渡して来た。
「これ、うちの生徒会誌ですよね?」
「ああ、その表紙をお前さんに書いて貰いたいんだと。生徒会長からのご指名だ」
「また、何で俺に」
「まぁ、そんな面倒くさそうな顔するな。お前さん有名なんだよ。この学校ではな」
何せ、この学校では快挙とも呼ばれるほど、書のコンクールの上位賞を総なめにして来たのだ。
「分かりました。やらせて頂きます」
「助かるよ。じゃあ、詳しいことは生徒会長に聞いてくれ、今度資料持って来るそうだ」
「はい、分かりました」
河合の話はそれで終わったので、春輝は書道準備室を後にした。
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