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第136話 融和政策を破壊した男達の末路 前編

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 宰相としては、これからのブラットリー家の為にも優秀に育った令嬢を手放したくない。

 リアンはダメでも、その弟の嫁に欲しい。

 貴族家では何かあった場合に備え、嫡子のスペアを用意してあるものだ。

 ブラットリー家でも、次男には婚約者を宛がわず残してあった。

 婚約者を兄から弟に変更し、このまま中立派の家との政略を進めたいと願い、懇願する。


「マリー侯爵、是非。 図々しいお願いだとは分かっている。だが、お願いできないだろうか?」

「宰相……」


 ブラットリー侯爵から頭を下げられ、考え込む。

 娘とリアンが上手くいっていなかったのは知っていた。

 当然、宰相も知っていたはずだ……自分の息子に原因があったことを。

 だが、リアンが態度を改めたことはなかった。

 彼を諌めたのか、諌めた上で聞かなかったのか……経緯はどうでもいいのだ。

 マリー侯爵が問題としたのは、いくら政略とは言え、娘がブラットリー家に粗雑に扱われたという事実だった。

 今まで格上の公爵家だったからこそ、我慢してきた部分もある。

 同格の家柄になった今はもう、遠慮などしなくてよくなったのだ。

 リアンのスペアとして育てられた弟だが、彼より優秀なら再考する余地もあった。しかし、そんな噂は聞いたことがない。


(正直、今の宰相家に我が娘はもったいなさ過ぎる)


 このままもう一度、嫁がせる気にはなれなかった。


「これは、我が家が決めても良いのですかな、陛下?」


 王が口出しをしないと言うことは、ここはマリー侯爵の胸の内一つで決めてもいいのだとは思ったが、念のため確認する。


「勿論だ。そなたに任せる」

「恐れ入ります」


 王としても帝国派筆頭の勢いを削いだことで、この政略をそれほど重要視しなくてよくなった。

 両家を取り巻く事情は変わったのだ。

 ここはマリー侯爵に判断させてもいい……そう思った。

 王から肯定の言葉を引き出した侯爵は、決意を込めて宰相を見た。


「申し訳ございません、宰相。今すぐの返答は出来かねます」


 少し、考えさせて欲しいというマリー侯爵。


「侯爵、それは……そうですね。失礼、私も焦り過ぎました。この件は、後日また」

「ええ、宰相。いずれ、また……」


 即答を避けられたことで、再び縁を結ぶことが困難になったと心の中で落胆する宰相。


(仕方ない……全面的に非はこちらにあるのだ)


 今回の婚約破棄騒動を起こす以前からの、リアンの不誠実な態度が責められているのだろう。

 無言の抗議を感じたブラットリー侯爵は、ここは一旦、引くことにしたのだった。




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