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第130話 ジョナス・ハーバー伯爵令息の処遇 ③
しおりを挟むハーバー家創立以来の、最高傑作といっていいジョナス。
五属性を使いこなす彼の誕生は、長年の地道な血統管理の賜物であった。
一門の頂点に立つことを約束されていた男が罪を犯したことで、つけ入る隙が出来た。
罪状を考えれば、種を残すことさえ許されない可能性もあったし、もっと厳しい処罰になったかもしれない。
「……成る程。ハーバー伯爵も反対できますまいな」
「ああ、そうだろう? 甘い処置だと思うか?」
「……いえ。ハーバー伯爵家にとっては大打撃である……と思われますから」
王のご下問に、宰相は緩く首を振った。
「それに、王命でもって彼の所属を決めていただかないと荒れそうですからね」
「確かに、それも宰相のおっしゃる通りですな」
「やれやれ。未熟な者が過ぎた力を持つと、周りは苦労しますな」
「全く、全く」
前回は争奪戦になりかけたところを、国王の采配で不満を押さえ込んだ。
今回、傷物になったジョナスだと、手に入れやすいと考える貴族がきっと出てくる。
そりゃあそうだ。
一気に一族の魔力を上昇させられるチャンスなのだから。
だが、見栄や体面、プライドが邪魔をして上位貴族は動けない。
実際に騒動を起こしそうなのは下位貴族だろう。
しかし、元々魔力の少ない彼らが強化したところでたかが知れている。
上位貴族との間にある圧倒的な戦力差は埋まらず、それでは国にとっても旨味がない。
それよりは今のまま婚約を継続する方が、圧倒的に国益に繋がる。
ロウ伯爵家には土と水の属性が出ることが多く、領地を富ませるのには向いているが、あと少し魔力を強化すれば十分、攻撃に使えるようになるのだ……。
ジョナスの魔力の器の大きさと五つの属性は、ロウ伯爵家に入ることで最大限に生かされることだろう。
特に光と雷はどちらも大変に珍しい魔法で、これほどの素質を持つものは高位貴族でもほとんどいない。
己の血族に取り入れ、強化したいと強く願う貴族家は多く、彼の血が入ることでロウ伯爵家もその対象になるはずだ。
これをきっかけにして、国の介入なしに軍閥貴族とも政略を結ぶという未来も見えてくる。
今後、対立派閥の融和も進むことだろう。
「その力、ロウ伯爵家のため、大いに役立てもらいましょう」
「そうですな」
「……しかし、陛下。ハーバー家の力が弱まってしまいませんか?」
「いや、違うな。今までが突出しすぎていたのだ」
今代のハーバー伯爵は王家に忠実で公平な人物だが、次代もそうとは限らない。
現にジョナスのような力に溺れ、己なら何をしても許されるだろうという選民的な傲慢さを持つ、当主の言うことを聞かない者が出てきたのだ。
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