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第125話 クレイグ・バラミス侯爵令息の処遇 前編
しおりを挟むクレイブとジョナスの父、バラミス将軍とハーバー魔法省長官は召集されていないことを考えると、ランシェル王子の側近達の内、リアンの父親だけ出席を求められているようだが、それは何故か?
宰相という要職に就いている事だけではない、他の理由がありそうだ。
「ええ。娘は自らの力で、良い縁を手繰り寄せた」
自慢の娘なんですよと微笑む辺境伯。
「想定外でしたが、より強い血が入る事は我がヴァレンチノ辺境伯家だけではなくハワード王国の為にもなるかと。素晴らしい結果を歓迎しております、宰相」
「そうですな。望みうる限り、最高の結果ですからね」
「全く全く。辺境伯は素晴らしい力を手に入れられた」
ルイーザの住む辺境伯領は広大で、その一部は隣国と接している。
剣聖の存在は、これ以上ない抑止力になると重役達は皆、ホクホク顔だ。
出席者からも次々と祝いの言葉が贈られ、嬉しそうな辺境伯を見ながら国王に向かい合う宰相。
「陛下、では今後のヴァレンチノ辺境伯領についての話し合いに移ってもよろしいですか?」
「うむ。そうしてくれ」
議題に上がったのは、国内で二番目の軍事力を誇る辺境伯軍と国軍との融和政策について……。
元々、王都と辺境伯領の物理的な距離を埋める為、心情的に縮めることが目的の政略だった。
ルイーザとクレイブの婚約は、王都の守護を任されているバラミス将軍家を中心とした軍閥貴族と、立地的に厳しい場所にある為、充実した軍事力を持つヴァレンチノ辺境伯との融和が目的だった。
二つの軍事勢力の仲を取り持ち、より深い連携を可能にするための婚約だったのに、今回の破談でそれが台無しになった。
「そのあたりの修復は必要だな」
「はい、陛下。早急に取り組んだ方がよい事案かと」
「まさしく。宰相閣下のおっしゃる通りですな」
「早急にということですと、やれることも限られてきますが……どうでしょう? 今までよりも守護隊の遠征を増やすというのは?」
「ふむ。まずはそれくらいか。辺境伯、どうだろうか?」
「はい。うちは構いません。万年人手不足なので大歓迎ですよ」
「おお。了承してくれるか……かたじけない」
「いえいえ、もったいないお言葉です」
国王達の提案を辺境伯が快く受け入れてくれたことで、バラミス将軍率いる守護隊の派遣も決まった。
都会育ちの隊員達は今まで、辺境伯領に行くことを疎んでいた。
魔物が蔓延り好戦的な隣国にも近く、今回ようやく逮捕された隣国融和派の筆頭、デーヴィス侯爵領とも隣接しているという難しい土地柄でもあるため、派遣されれば激務になると分かっていたからだ。
だが今後は、喜んで赴任しそうである。
何しろ、そこには彼らにとっても憧れの、剣聖が待ち構えているのだから……。
騎士として、ひとりの男として、一度は伝説級の人物と肩を並べて戦ってみたいという欲求にはあがらえないものなのだ。
「して、クレイグ・バラミス侯爵令息の処遇についてはいかがなさいますかな?」
「そうだな。まずは騎士団からの除籍は当然として……どうしたものか」
国王は顎に手を当てて考え込む。
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