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第124話 王城にて
しおりを挟む◇ ◇ ◇
あれから、一部の人々にとっては長かった一夜が明け、ランスフォード公爵が大きな荷物と共に登城してきた。
証拠として押収した品の一部、優先度の高いものだけをついでに持ってきたようだ。
隠密を通じて先に提出してあった資料も含めると、膨大な数になる。
到着後すぐに国王への目通り許された彼が、追加で手渡した書類も取り急ぎこれまでの経緯を一晩でまとめ、作成したものだという。
「……以上が現状で分かっているもの、全てになります」
「うむ。ご苦労だったな、弟よ。楽にしてくれ」
「はっ」
相当、無理をしたのだろう。
間近で見ると顔色もひどかった。
きっと徹夜で指揮を取り、そのまま来たのだと思われる。
そこで国王は、新た持ち込まれた資料に目を通す間、城付きの女官達に命じて公爵の世話をさせることにした。
部屋の中には国王と王弟の二人だけということもあり、畏まらなくても良いと声をかけた途端、疲れきった顔を晒し、ぐったりとソファーに沈む公爵。
そんなお疲れ気味の彼に、温かいお茶と胃に優しい軽食が出され、その後、粒揃いの美人女官達による全身マッサージが施された。
「悪いな。あまり、休ませてはやれないのだ」
「分かっておりますよ、陛下」
今は時間が勝負だという国王の意見には、完全に同意する。
心のこもったもてなしにより、少しだが疲れもとれた。
「……我々が最後ですか?」
「ああ、そうだ。では行こうか?」
「はい」
飲食をして少し休息をとったおかげで、しっかりとした顔つきに戻った公爵に安堵し、頷く。
それから読み込んだ資料を担当者に渡し、幾つかの指示を出しながら立ち上がる。
二人以外の面子はもう、御前会議のため城の一室に集められていて、出来ることから先に意見の取り纏めしておくようにと命じられていた。
まずは一連の騒動の発端となったランシェル王子の婚約破棄騒動を、早急に片付ける必要がある。
国内に噂が広がり混乱を招く前に、決着をつけなければならない。
会議室に召集された側近達は、国王と王弟の入室に、一端議論を止めて立ち上がった。
「皆、よく集まってくれた」
国王からの労いに、一斉に礼をとる出席者達。
まもなく二人が着席すると早速、 話し合いに入る。
最新の情報も含め捜査の進捗情報を確認した後、やがて議題は婚約破棄された令嬢達の今後について移っていった。
まずは、ヴァレンチノ辺境伯領について……。
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