121 / 138
第121話 影達の統括
しおりを挟む主に王族の護衛や情報収集など、その名の通り裏で暗躍する集団。
何より任務の遂行が優先され、目的達成のためには手段を選ばないという冷酷な一面を持つ。
決して表舞台に上がることのない、影から王族に仕える者達を統括しているのが、現王の実弟であるランスフォード公爵だった。
なぜ彼がこの仕事を任されているのかというと、王家の血統魔法「統率」の力が、国王に次いで高かったことが関係している。
何しろこの「統率」というスキル、大きな組織を動かすのに最適なのだ。
命令系統が鈍くなりがちなところに、このスキル持ちを配置すると途端に効率が上がり、スムーズに動きだす。
軍事にも内政にも使えるという、支配階級にいる者が持つスキルとしては便利すぎる能力なのである。
そんなある意味万能のスキルを有する王家との婚姻は、他国から熱望されていると言っていい。
強く望む気持ちも分かる。
そして、ハワード王家の血が増えることを厭う気持ちも……。
そんな事情もあり狙われがちな王族を警護するため、優秀な影の育成が大いに進んだのは皮肉なものだが、現にアランを守る頼もしい盾となって活躍してくれているのだがらこれでよかったのだろう。
気に入らないからという理由で、そう簡単に現王の直系であるアランを王妃に殺させる訳には行かないのである。
まぁ、このハワード王家の血統魔法にはまだ、他にも「魅了魔法」並のヤバい秘密が隠されているのだが……。
それはまた説明するとして、今は「統率」スキルが「王家の影」に及ぼす影響についてみていこう。
まず、優れたスキル持ちの公爵が上司となることで統率力が遺憾なく発揮され、部下である影達を十分に魅了できる点が素晴らしい。
そうすることで、組織の団結力をより強めることも可能なのだ。
時には王族の秘密や汚れ仕事もさせる彼らから、絶対の忠誠を得るのにも都合がよかった。
また、このスキルが血統魔法だという点も利便性が高い。
常時発動のパッシブスキルなのだ。
これが血統魔法の特徴で、例えば剣聖の「威圧」スキルだと後天的に獲得したものであるから、任意で発動するアクティブスキルとなる。
そして、この世界ではパッシブスキルにアクティブスキルは重ね掛け出来るが、その反対は無理なのだ。
この違いは大きい。
剣聖ほどの伝説的人物は別として、二つのスキルを重ねられる王族に勝てる能力者はほぼいないだろう。
それともうひとつ重要なのが、パッシブスキルは魔力の器が大きい方が強力となるということ。
血統魔法は珍しいが二つとも遺伝しやすい。
その為、どの貴族家と繋がりを持てるかは重要だった。
ハワード王家の婚姻に、王家の血が入った令嬢を迎え入れるのにも、こうした事情があったのだ。
――つまり王族の一番の使命は今の数を減らさず、できるなら増やすこと……。
いくら隣国や帝国が暗躍しようと、最終的に血統スキル持ちの王家の血脈を一定数維持しさえすれば、早々に国力が揺らぐことはない。
4
お気に入りに追加
6,375
あなたにおすすめの小説
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
【短編】国王陛下は王子のフリを見て我がフリを反省した
宇水涼麻
ファンタジー
国王は、悪い噂のある息子たちを謁見の間に呼び出した。そして、目の前で繰り広げられているバカップルぶりに、自分の過去を思い出していた。
国王は自分の過去を反省しながら、息子たちへ対応していく。
N番煎じの婚約破棄希望話です。
旦那様、最後に一言よろしいでしょうか?
甘糖むい
恋愛
白い結婚をしてから3年目。
夫ライドとメイドのロゼールに召使いのような扱いを受けていたエラリアは、ロゼールが妊娠した事を知らされ離婚を決意する。
「死んでくれ」
夫にそう言われるまでは。
二度とお姉様と呼ばないで〜婚約破棄される前にそちらの浮気現場を公開させていただきます〜
雑煮
恋愛
白魔法の侯爵家に生まれながら、火属性として生まれてしまったリビア。不義の子と疑われ不遇な人生を歩んだ末に、婚約者から婚約破棄をされ更には反乱を疑われて処刑されてしまう。だが、その死の直後、五年前の世界に戻っていた。
リビアは死を一度経験し、家族を信じることを止め妹と対立する道を選ぶ。
だが、何故か前の人生と違う出来事が起こり、不可解なことが続いていく。そして、王族をも巻き込みリビアは自身の回帰の謎を解いていく。
7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。
なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。
7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。
溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!
無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる