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第48話 疑惑のブローチ 後編
しおりを挟む「え、ええ。当然ではないですか!」
そして、焦ったように言い訳をはじめた。
「ブローチの件はその……そう、貴女がっ。貴女がわざと彼女に誤解させるような言い方をしたから悪いんでしょう? 繊細な彼女はショックを受けてしまって取り乱しただけです!」
「……それで取り乱したボートン子爵令嬢が、悪意に満ちた酷い歪曲をし、わたくしを盗人だと決めつけたとおっしゃりたい訳ですの?」
「酷いわっ。わたし、アンジュリーナ様に悪意を向けてなんていません!」
「そ、そうですよ! サファイアのブローチは、サリーナ嬢にとって母君の形見でとても大切なもの。少々、過敏になってしまっても仕方ないじゃないですか!」
「……」
(呆れてしまって、言葉も出ませんわ……)
泣き喚くサリーナと怒りで顔を真っ赤にして叫んでいるジョナスに白けた視線を向ける。
呆れを隠さず、アンジュリーナは冷たく言う。
「よく分かりました。ボートン子爵令嬢が、被害妄想が酷くてまともに人の言葉を聞くことも出来ない方だと言うことが」
「ひ、被害妄想ですって!?」
「ち、違う! 彼女はそんな人ではありませんっ」
「そうかしら?」
「そうですっ」
「……では、異変の原因が自分にあるとバレるのが怖くて、起動修正出来ないほど話を逸らすため、わたくしを無理矢理悪者に仕立て上げようとなさった……というのが正解なのかしら?」
「アンジュリーナ嬢? 何を、言って……」
話についていけず、戸惑ったように尋ねるジョナス。
そんな彼の横で、サリーナがアンジュリーナを憎々しげに睨み付けている。
「わたくしがそのブローチが気になったのは、欲しいからでも取り上げて奪い取りたいからでもありません。そのブローチから常に、微量の嫌な魔力を感じるからですわ」
「はぁ?」
「初めは彼女自身に問題があるのかと思っておりましたの。ですが、精神を操る魔法には膨大な魔力が必要なはず。彼女にはそれほど多くの内包魔力はありませんものね?」
「……何が、言いたいんです。はっきりとおっしゃってください!」
「でははっきりと申し上げますわ。そのブローチ、魅了の魔法がかかった魔道具ではありませんこと?」
ジョナスは言われた意味を飲み込めず、ポカンとしてアンジュリーナを見つめた。
しばらくの沈黙の後、ようやくサリーナが反応する。
「嘘よ!!」
明らかに取り乱して叫ぶサリーナ。
「嘘っ、嘘、嘘! そんなのでたらめよ! ジョナス様、ランシェル様達もっ、その女の言うことなんか信じないで!」
サリーナの必死の訴えにも、ジョナスと取り巻き達は呆然としたままだ。
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