22 / 138
第22話 指摘
しおりを挟む「わ、わたし、やってませんっ。ルイーザ様が言うような、クレイブ様達をた、誑かし堕落させるなんてことっ。ううっ、なんでそんなひどいことを言うんですかぁ……」
「またそうやって心優しい彼女の気遣いを悪く解釈し、真実をねじ曲げるのか!? ありもしない罪を捏造してサリーナを悪者に仕立てあげるとはっ、この卑怯者が!」
「そうだぞ、彼女を侮辱するのはやめてもらおうっ。彼女自身が贈り物をねだったことは一度もないんだっ」
「ふんっ。君たちのような苦労知らずのお嬢さんには到底、分からないだろうね? パーティーに参加するドレス一式、揃えられないという辛さは。それくらいくらい金銭的に困窮していたことを、恥を忍んで打ち明けてくれたんだよ。僕たちはほんの少し援助しただけです」
「……ほんの少し、ねぇ」
ジョナスは力説してくれたが、その主張は到底、頷けるものではないとシルヴィアーナは思った。
――考えてもみてほしい。
ほんの少しと言いながら、ランシェル王子は国宝級の価値がありそうな、ピンクダイヤモンドまで買い与えているのである。
高位の貴族令嬢である彼女たちでさえ滅多に手が出せないような高額の装飾品を、婚約者でもない一介の子爵令嬢に贈っておいて、ほんの少しとかふざけたことを言われては堪らない。
「それほど見事な大粒のピンクダイヤモンド、わたくしもはじめて見ましたが、その贈り物でさえも……ほんの少し、ですの?」
「そ、そうだ!」
「……」
(その言い訳、さすがに無理がありましてよ)
婚約者にさえ、そのような高価な宝石は贈ったことがなかったくせに、あれを正当化してしまうとは……。
何と言っていいのものか……と、シルヴィアーナ達は殿方の自分勝手な言い分に呆れてしまう。
「それに貴族社会に疎く、不名誉な噂を流されたサリーナ嬢には、私達しか頼れる者がいなかったんだ……」
「年頃の令嬢達から冷遇されていたのは、貴女方のせいでしょう? 彼女は令嬢方と仲良くしようと、自分から何度も話しかけていた。努力していたんだ。そんな健気な彼女を孤立させる原因を作った癖によくもそんな事が言えるっ」
ランシェル王子を始め、三人の取り巻きからも次々と責める言葉が出てくる。
四人いる令嬢達の中で一番身分の高いシルヴィアーナには、特に当たりが強かった。
2
お気に入りに追加
6,371
あなたにおすすめの小説
「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【短編】国王陛下は王子のフリを見て我がフリを反省した
宇水涼麻
ファンタジー
国王は、悪い噂のある息子たちを謁見の間に呼び出した。そして、目の前で繰り広げられているバカップルぶりに、自分の過去を思い出していた。
国王は自分の過去を反省しながら、息子たちへ対応していく。
N番煎じの婚約破棄希望話です。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる