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第116話 手引きした者
しおりを挟む「あの厳重な警備の中を潜り抜けられるものなのかしら? 信じられませんわ、今は面会人も受付ていないと宰相から伺っておりましたのに……」
それに双子の塔は王城の奥にあるのだ。
アンドレアの兄であるジェフリーもそうだが、塔にいる魔術師達は皆、国の最高峰の人材であり一人一人が替えの利かない稀少な存在といっていい。
彼ら自身が国家機密のようなものだから王城の奥深く、滅多に人が出入り出来ない場所に保護する意味も込めて、元々厳重に警護されているのである。
そして、魔法絡みの重罪人を収容する塔が同じ場所にあるのも、その方が魔術の研究と発展のために都合がいいという理由からだった。
何故ならこの国では囚人は処刑されず、彼らの持つ魔力は枯渇するまで防衛や研究の為に利用し尽くされるという刑に処せられるからだ。
この世界に生きるすべての生物は魔力が無くては生きられない。
なので実行されると処刑されるよりも長く耐え難い苦しみが続くが、体内の魔力が枯渇すれば死を迎える為、キツい刑罰なのは間違いない。ユーミリアも本来なら、この刑が課せられるはずだった。
そんな訳で、許可なく誰も近寄らないし、近寄らせないことになっている施設なのだ。
それに警備面も、今回の囚人には王族を害した疑いも掛かっていたため、特別に近衛から応援部隊が派遣されたと聞いている。
「確か、警備についたのは近衛騎士団第二分隊の中でも精鋭と言える、マリエッタ・ソルジュ分隊長が指揮する部隊だったはず」
彼女の元まで届けられた報告書の内容を思い出しながら、アンドレアは言う。
「上官達からの評判はよくないそうですが、彼女達の優秀さは私がよく存じ上げております。出し抜くのは相当難しかったはずですわ」
アンドレアが王子妃教育で王城に上がる際には、彼女達が身辺警護についてくれていたため親しく言葉を交わしていたのだ。人柄なども分かっているつもりだし、それは兄達も承知しているだろう。
つまり、いつもよりも更に厳重になっていた警備の中を、誰にも見咎められずに潜り抜けたことになる。
魔封じの魔道具をつけたままの彼女にそんな事が可能なのかと、考えても分からず眉を潜めた。
「いや、面会人はいたんだ。それも男性のな」
「……何ですって? 一体、誰がそのような許可を?」
男性ではまたいつユーミリアの毒牙にかかるかも知れないからと、彼女と直に接する人員には、警護も尋問も女性だけで構成されるマリエッタ達を当てていたほどだ。
面会人も当然、男性と言うだけで許可されないことになっていたはず。
それなのに何故、許可が下りるのだろう?
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