94 / 128
第94話 家の種
しおりを挟むそして三つ目の、『家の種』。これを見つけた時には、興奮を隠しきれなかった。
何故ならこの種は、一粒でお城と同等の値段がつくといわれるくらい、高価で稀少なアイテムだったからである。
後から考えてみるとこの膨大なお宝の中からよく、風が吹けば飛んでいきそうなほど小さな一粒の種を見つけられたものだと思う。
それは一見して、見過ごしてしまいそうな場所に隠されていたて、初めにグランディールが違和感に気づいた。
金銀財宝の詰まった一際豪華な部屋の、壁に掛けられていた絵の内の一枚が これといった特徴もないのにやけに気になって仕方がなかったらしい。
そこでアンドレアも自分の目で見てみたのだが、何がそんなに彼を惹き付けているのか分からなかった。
首を傾げていたら、じっと見つめていた彼がその絵をおもむろに取り外したのである。
そして絵をひっくり返して調べ、裏側に描かれた模様に幻覚が掛けられているのを発見する。さっそく解いてみるとそこにはひとつ、魔方陣が描かれていた。
「まぁ、凄いっ。気づけませんでしたわ!」
「ふふふっ、これは期待出来るかもしれないよ?」
魔力を流してその魔方陣を解いてしまうと、今度は小さな扉のようなものが現れた。この奥に何かが隠されているらしい。
これも魔法使って鍵を解除してみると、そこから小さな木の箱が転がり出てきたのである。
どうやらこれが宝箱らしいが、何の変哲もない普通の木箱に見える。
せっかく手間隙掛けて見つけたものがこれかと、二人は少しがっかりしたのだが、期待しないで開けてみると、そこには麦の粒によく似た茶色くて地味なものが一つ、入っていた。
まさか、本当に麦ということは無いだろうが、アンドレアにはただの種にしか見えなかった。
しかし、手にとって調べていたグランディールが、これこそが『家の種』だ、貴重なお宝だと興奮したように教えてくれたのである。
「これが、『家の種』……」
「ああ、大発見だっ。使い方もとっても簡単で、魔力さえあれば育てられるんだよ」
好きな場所に植えて魔力を与えるだけで、ジャックと豆の木ばりに一気に急成長し、人の住める家になるそうだ。
その際、魔力を注いだ者が想像した通りの屋敷へと変化するという嬉しい仕様になっている。
勿論、使用者の魔力量によって創造できる大きさに違いはあるし、維持するにも魔力が必要なのだが、竜の膨大な魔力があればどんな家でも思いのままだ。
その上、この『家の種』には、他にもまだ夢のような機能があるらしい。家そのものがまるでシルキーのような意識を持つんだとか。
具体的には、全自動の家事システム付き、部屋の模様替えどころか全面建て替えも一瞬で楽々、いくらでも可能、維持管理の人出もいらず、快適に暮らせるというもの……凄い機能だ。
1
お気に入りに追加
5,772
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!
朝山みどり
恋愛
大富豪に生まれたマリカは愛情以外すべて持っていた。そして愛していた結婚相手に裏切られ復讐を始めるが、聖女として召喚された。
怯え警戒していた彼女の心を国王が解きほぐす。共に戦場へ向かうが王宮に反乱が起きたと国王は城に戻る。
マリカはこの機会に敵国の王と面会し、相手の負けで戦争を終わらせる確約を得る。
だが、その功績は王と貴族に奪われる。それどころか、マリカは役立たずと言われるようになる。王はマリカを庇うが貴族の力は強い。やがて王の心は別の女性に移る・・・
【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう
蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。
王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。
味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。
しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。
「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」
あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。
ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。
だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!!
私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です!
さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ!
って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!?
※本作は小説家になろうにも掲載しています
二部更新開始しました。不定期更新です
あなたが捨てた私は、もう二度と拾えませんよ?
AK
恋愛
「お前とはもうやっていけない。婚約を破棄しよう」
私の婚約者は、あっさりと私を捨てて王女殿下と結ばれる道を選んだ。
ありもしない噂を信じ込んで、私を悪女だと勘違いして突き放した。
でもいいの。それがあなたの選んだ道なら、見る目がなかった私のせい。
私が国一番の天才魔導技師でも貴女は王女殿下を望んだのだから。
だからせめて、私と復縁を望むような真似はしないでくださいね?
マルフィル嬢の日々
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する!
※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる