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第94話 家の種

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 そして三つ目の、『家の種』。これを見つけた時には、興奮を隠しきれなかった。

 何故ならこの種は、一粒でお城と同等の値段がつくといわれるくらい、高価で稀少なアイテムだったからである。
 後から考えてみるとこの膨大なお宝の中からよく、風が吹けば飛んでいきそうなほど小さな一粒の種を見つけられたものだと思う。

 それは一見して、見過ごしてしまいそうな場所に隠されていたて、初めにグランディールが違和感に気づいた。
 金銀財宝の詰まった一際豪華な部屋の、壁に掛けられていた絵の内の一枚が これといった特徴もないのにやけに気になって仕方がなかったらしい。

 そこでアンドレアも自分の目で見てみたのだが、何がそんなに彼を惹き付けているのか分からなかった。

 首を傾げていたら、じっと見つめていた彼がその絵をおもむろに取り外したのである。
 そして絵をひっくり返して調べ、裏側に描かれた模様に幻覚が掛けられているのを発見する。さっそく解いてみるとそこにはひとつ、魔方陣が描かれていた。

「まぁ、凄いっ。気づけませんでしたわ!」

「ふふふっ、これは期待出来るかもしれないよ?」

 魔力を流してその魔方陣を解いてしまうと、今度は小さな扉のようなものが現れた。この奥に何かが隠されているらしい。
 これも魔法使って鍵を解除してみると、そこから小さな木の箱が転がり出てきたのである。

 どうやらこれが宝箱らしいが、何の変哲もない普通の木箱に見える。

 せっかく手間隙掛けて見つけたものがこれかと、二人は少しがっかりしたのだが、期待しないで開けてみると、そこには麦の粒によく似た茶色くて地味なものが一つ、入っていた。

 まさか、本当に麦ということは無いだろうが、アンドレアにはただの種にしか見えなかった。

 しかし、手にとって調べていたグランディールが、これこそが『家の種』だ、貴重なお宝だと興奮したように教えてくれたのである。

「これが、『家の種』……」

「ああ、大発見だっ。使い方もとっても簡単で、魔力さえあれば育てられるんだよ」



 好きな場所に植えて魔力を与えるだけで、ジャックと豆の木ばりに一気に急成長し、人の住める家になるそうだ。
 その際、魔力を注いだ者が想像した通りの屋敷へと変化するという嬉しい仕様になっている。

 勿論、使用者の魔力量によって創造できる大きさに違いはあるし、維持するにも魔力が必要なのだが、竜の膨大な魔力があればどんな家でも思いのままだ。

 その上、この『家の種』には、他にもまだ夢のような機能があるらしい。家そのものがまるでシルキーのような意識を持つんだとか。

 具体的には、全自動の家事システム付き、部屋の模様替えどころか全面建て替えも一瞬で楽々、いくらでも可能、維持管理の人出もいらず、快適に暮らせるというもの……凄い機能だ。




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