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第79話 間一髪
しおりを挟む『グランディール、説明をありがとう』
実体の透けていた理由を一通り話し終わった彼に、父親が言った。
『というわけで、お嬢さん。私はまだ、あなたの前に直接姿を見せることはできないんだ。許してほしい。だが息子とのこと、心より祝福させてもらう。おめでとう。今日からは僕のこと、父と呼んでね』
「は、はい。ありがとうございます、お義父様。私のこともどうかアンドレアとお呼びくださいませ」
『うん、ありがとう。でも気持ちだけ受け取っておくよ。その、君もこの短期間で身をもって分かったと思うけど、竜は嫉妬深くてね。半身以外が名を呼ぶことをとても嫌がるんだ。それが例え、親子であってもね』
心当たりがあったアンドレアは、その事を思い出して少し頬を染めながら も、こうして彼の父親から直接、竜の習性を教えてもらえることに感謝した。しかし、その話を聞いて一点、不安になったことがあった。
「そう、なんですの。心に刻みますわ。では、もしかして私が神龍様の御名をお呼びするのもご不快でしたでしょうか……知らなかったこととはいえ、申し訳ございません……」
『それは、大丈夫。君は彼女の聖女で、名を呼ぶのを許した者だからね。僕は気にしない。むしろ、彼女が呼び名を許した者が息子の半身でもあっただなんて奇跡、滅多にないからうれしいよ』
「そうじゃな、気にせずともよい」
二人揃って優しく否定されて、アンドレアはホッとした。
「ありがとうございます、お二方とも」
『うん。それにしてもグランディール、君は本当に幸運だよ。こんなに早く魂の半身と出会えるなんて……幸せになってね』
「言われるまでもありません。でも、ありがとうございます、父様」
『おめでとう。グランディール、アンドレア。妾からも二人に祝福を」
「ありがとうございます」
「しかし、考えてみればそなたが成竜の儀式を急いで進める気になったのも、天の采配なのかもしれんの。避けられぬ運命だったのやもしれぬ。 よもや、そなたの半身がアンドレアだったとは……妾でも想像がつかなんだわ。あのまま何事もなく王子との婚約を成立させていていたらと思うと寒気がする。実に間一髪といったところか」
『本当、間に合ってよかったよ、この国のためにもね』
「全くです。今からでもこの国を吹っ飛ばしたいぐらいです。その事を思うだけで、怒りで爆発しそうです……」
「グランディール様!?」
「アンドレア、本当によかった。もし間に合わなかったら婚約者を殺してでも、私は君を奪い取らなきゃいけなかったからね」
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