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第59話 水の精霊
しおりを挟む「ラグナディーン様、どうか私も、幼竜様方が孵化される場に立ち会わせてくださいませ」
「勿論じゃ。そなたは妾に仕える聖女じゃからの、その資格がある」
「……っ! ありがとうございますっ」
「良いよい。我が子らが孵化する時、この際、我が半身にも会わせようぞ。会いたがっておったであろう?」
「はいっ、随分と昔のことですのに覚えていてくださったのですね。嬉しいですわ」
「そなたは特別じゃ。さて、もういつ休眠が終わるかもしれぬ。部屋を用意させたから、今日からはそこで休むが良い」
「まあ、ラグナディーン様。よろしいのですか?」
「聖女になった祝いじゃ。受け取れ」
「はい、ではありがたく。これからよろしくお願い致します」
「うむ。そなたの世話は、この神殿に住み着いている妾の眷属たちがするであろう。おいで、紹介しておこう」
「はい」
神竜の眷属となった者達が、ここにはたくさん住んでいるらしいのだが、聖女以外は一人も神殿に入れないので、アンドレアも今日初めて対面することになる。
眷属はもれなく人外で、主が招いた者しか立ち入ることは出来ないという。
湖の上にあるという場所柄と、主が水竜ということで、一番多い眷属は同属性である水の精霊になるようだ。
アンドレアの世話は、主に彼らがしてくれるらしい。
水の乙女達は喋ることは出来ないが共感能力に優れているので、意思疎通に困ることはないそうだ。
陽気な性格なのはいいのだが、いたずら好きなところがちょっと玉に傷なんだとか。
昔は幼竜と一緒になってよくふざけて遊んでは、主に怒られることもあったようだ。
しかし、そこさえちょっと目をつぶれば、自分の領域と決めた場所を整えることに優れ、よく気がつくので神殿を管理させるには最適らしい。
ラグナディーンに連れられて来た先に、ズラリと並んで控えていた水の精霊は全て女性型で、二人が姿を見せると微笑みながら揃って一礼された。
こんなにたくさんの精霊を一度に見るのは初めてだ。さすが、この世界の頂点に立つ竜族の居城といったところか……圧倒されそうだ。
いずれ劣らぬ美しい乙女達からは、歓迎の意が伝わって来て嬉しくなる。
「皆様、ありがとう。これからよろしくお願いしますわ」
アンドレアが微笑みながら礼を返すと、了解したと言う風に目を会わせてコクコクと頷かれた。人外なのに、そんな仕草は人間らしくて、これなら一緒に暮らして行けそうだと思ったのだった。
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