上 下
33 / 128

第33話 魔術の限界

しおりを挟む
 

 ――聖属性を持つ者が増えない理由……。

 それは、資格を失うものが同じくらい多いからである。

 基本的に、魔法には六つの属性があり、その中でも聖と闇の属性は他の四属性と違い、少し特殊な面がある。


 ――それは何故か適性に、使い手の人格が強く反映されると言うこと。

 使い手に相応しい人格者じゃないとの判断が下されると、せっかく授かった素質が消えてしまうという特性があるのだ。そして一度、聖属性の素質が消えてしまうと、その後にいくら改心しても二度と戻ることはない。

 そう言った特異性から、貴族の子女は五歳の誕生日に、平民は十歳の誕生日に「神々の祝福」と呼ばれている能力判定を受けた際に聖属性が発現すると、世俗で育てず、神殿に預けられることも多い。資格を失うことの無いように、きちんとした教育を受けさせるためだ。

 ちなみに、聖属性魔法に関しては、男性よりも女性の方により顕現しやすいという特性もあった。反比例するかのように、闇属性だと女性よりも男性に現れやすい。適性に人格が関わってくるのは聖魔法と同じである。

 何故そうなるのかは、これまでにも散々議論されているのだが未だに判明していない。不思議なことだが、これも神の采配なのかもしれない……。



 それゆえに両属性共、使い手には絶大な信用があるのだが、自分勝手に周囲を巻き込んで軋轢を生み、様々な事件を引き起こした彼女にもまだ、その資格はあるのだろうか?

 今現在は微量ながらも使えているようだし、元の適性量が不明のために判断が難しいが……。

「多分、彼女が資格失ってしまうのも、そう遠い未来じゃないと思う。神の審判は平等であり、非情でもあるものだからね。心配していないけど、アンドレアも同じ属性持ちとして、使い方を誤った者の末路をよく覚えておいて欲しい」

「はい、ジェフリー兄様。心に刻みます。お兄様達を悲しませないことを、神竜様にお誓い致しますわ」

「うん、いい子だ」



 わが国では、神竜様のおかげで聖魔法の使い手が多いといわれている。幼少期にこの国の守り神と直接対面出来ることは、その後の人格形成にも影響を及ぼしているようで、聖属性を失うという事例が少ないためだ。

 それでも稀少な属性には違いない。今回は先例が少な過ぎる上に、他属性も持っているとはいえ魔力量が少ないという情報があったため、複合魔法を使えると推察しにくかったらしいが……。

「だけどどんな魔法にだって制限はあるんだ。例えば時間や、範囲、質量などがね。いずれかが限度を超えれば、かかった魔法は解けると思う。無制限ということはまずあり得ないのだから」

「そう、なのですね……」

 確かにそれを鑑みると、アンドレアの推察とも一致する。魔法の影響が、ユーミリア嬢が強く意識した特定の異性のみという限られた範囲だと感じたのはそういうことだったのだろう。


「だから、いずれは殿下達も目を覚まされるだろうさ」

「そうだな。まあ、その辺りもこれから色々と明らかになっていくだろう。殿下達にとっても決して優しい結果にはならないだろうが、それはもう仕方がない。こうなってしまっては、キャメロン公爵家は殿下の後見を降りることになるからね」

「……はい」

 分かっていたことだ。

 裏切られたのはわたくしの方。

 落ち込むなんて、ましてや涙が溢れてしまうなんて……。

 そんなの、おかしい。

 ――分かっているのに涙が止まらないのは、どうしてなんでしょう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう

蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。 王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。 味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。 しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。 「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」 あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。 ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。 だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!! 私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です! さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ! って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!? ※本作は小説家になろうにも掲載しています 二部更新開始しました。不定期更新です

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

【完結】あなただけがスペアではなくなったから~ある王太子の婚約破棄騒動の顛末~

春風由実
恋愛
「兄上がやらかした──」  その第二王子殿下のお言葉を聞いて、私はもう彼とは過ごせないことを悟りました。  これまで私たちは共にスペアとして学び、そして共にあり続ける未来を描いてきましたけれど。  それは今日で終わり。  彼だけがスペアではなくなってしまったから。 ※短編です。完結まで作成済み。 ※実験的に一話を短くまとめサクサクと気楽に読めるようにしてみました。逆に読みにくかったら申し訳ない。 ※おまけの別視点話は普通の長さです。

(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。 この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。 酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。 自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。 それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。 私、一度死んで……時が舞い戻った? カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。 嫉妬で、妹もいじめません。 なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。 エブリスタ様で『完結』しました話に 変えさせていただきました。

処理中です...