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第33話 魔術の限界
しおりを挟む――聖属性を持つ者が増えない理由……。
それは、資格を失うものが同じくらい多いからである。
基本的に、魔法には六つの属性があり、その中でも聖と闇の属性は他の四属性と違い、少し特殊な面がある。
――それは何故か適性に、使い手の人格が強く反映されると言うこと。
使い手に相応しい人格者じゃないとの判断が下されると、せっかく授かった素質が消えてしまうという特性があるのだ。そして一度、聖属性の素質が消えてしまうと、その後にいくら改心しても二度と戻ることはない。
そう言った特異性から、貴族の子女は五歳の誕生日に、平民は十歳の誕生日に「神々の祝福」と呼ばれている能力判定を受けた際に聖属性が発現すると、世俗で育てず、神殿に預けられることも多い。資格を失うことの無いように、きちんとした教育を受けさせるためだ。
ちなみに、聖属性魔法に関しては、男性よりも女性の方により顕現しやすいという特性もあった。反比例するかのように、闇属性だと女性よりも男性に現れやすい。適性に人格が関わってくるのは聖魔法と同じである。
何故そうなるのかは、これまでにも散々議論されているのだが未だに判明していない。不思議なことだが、これも神の采配なのかもしれない……。
それゆえに両属性共、使い手には絶大な信用があるのだが、自分勝手に周囲を巻き込んで軋轢を生み、様々な事件を引き起こした彼女にもまだ、その資格はあるのだろうか?
今現在は微量ながらも使えているようだし、元の適性量が不明のために判断が難しいが……。
「多分、彼女が資格失ってしまうのも、そう遠い未来じゃないと思う。神の審判は平等であり、非情でもあるものだからね。心配していないけど、アンドレアも同じ属性持ちとして、使い方を誤った者の末路をよく覚えておいて欲しい」
「はい、ジェフリー兄様。心に刻みます。お兄様達を悲しませないことを、神竜様にお誓い致しますわ」
「うん、いい子だ」
わが国では、神竜様のおかげで聖魔法の使い手が多いといわれている。幼少期にこの国の守り神と直接対面出来ることは、その後の人格形成にも影響を及ぼしているようで、聖属性を失うという事例が少ないためだ。
それでも稀少な属性には違いない。今回は先例が少な過ぎる上に、他属性も持っているとはいえ魔力量が少ないという情報があったため、複合魔法を使えると推察しにくかったらしいが……。
「だけどどんな魔法にだって制限はあるんだ。例えば時間や、範囲、質量などがね。いずれかが限度を超えれば、かかった魔法は解けると思う。無制限ということはまずあり得ないのだから」
「そう、なのですね……」
確かにそれを鑑みると、アンドレアの推察とも一致する。魔法の影響が、ユーミリア嬢が強く意識した特定の異性のみという限られた範囲だと感じたのはそういうことだったのだろう。
「だから、いずれは殿下達も目を覚まされるだろうさ」
「そうだな。まあ、その辺りもこれから色々と明らかになっていくだろう。殿下達にとっても決して優しい結果にはならないだろうが、それはもう仕方がない。こうなってしまっては、キャメロン公爵家は殿下の後見を降りることになるからね」
「……はい」
分かっていたことだ。
裏切られたのは私の方。
落ち込むなんて、ましてや涙が溢れてしまうなんて……。
そんなの、おかしい。
――分かっているのに涙が止まらないのは、どうしてなんでしょう。
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