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第20話 決着
しおりを挟むあまりの急展開に、ユーミリアが逃げ出していった方角をみて、暫し呆然としていたロバート王子と取り巻きの青年貴族達だったが……。
だがそれでも、彼女に関することに対しては我に返るのが早かった。
「はっ!? ユ、ユーミリア、待ちなさいっ。そんなに走っては危ないっ」
「すぐに追いかけようっ。彼女を一人にするな! 可哀想に……あんなに怯えているんだ。早く近くに行って彼女の心を守ってあげないと!」
「ああ、繊細な彼女には逃げ出したくなるほど、この場にいるのが辛かったでしょうから」
「……っ! そうですねっ。彼女を虐げる不愉快な方のいる場所に、これ以上留まる必要はないです。行きましょう!」
「ああ、わ、分かったっ」
と言うように、最後までアンドレアを貶める侮蔑の言葉を口々に吐いてから、ユーミリアの後を追って全員、舞踏会の会場を出て行ったのだった……。
「あら、まぁ……何てことかしら?」
アンドレアは、バカ騒ぎを起こした一団が退場していくのを見ながら呆れたようにため息をつく。
「語るに落ちるとは、まさにこのことですわねぇ。人を押し退けながら元気いっぱいに力強く、走り抜けて行かれましたこと。あれのどこが深く傷つき、体調を崩されたご令嬢だというのかしら? これでは彼女の行動そのもので、嘘を認めたのと同じことですわね」
――結局、断罪はもう、よろしいのね?
あれだけ騒ぎ立て、私の罪を暴くと息巻いておられましたものを……。
肝心の罪人(笑)を置き去りにして、皆様まるで風のようにさっさと立ち去って行かれましたし、ね?
――あまりにもお粗末な結末と言いますか……。
一方的な婚約破棄宣言から始まり、その後に行われた断罪(笑)の場では、ロバート王子が婚約者を裏切り、別の女性……ドリー男爵令嬢と不義を働いていたという事実を誤魔化すためか、私に冤罪を被せようとして、寄ってたかって悪役に仕立て上げ、責め立ててくださいましたわねぇ……?
その割には、これといった成果も挙げることも出来ず、随分と呆気なかったですこと。
まぁ、相手がお花畑集団でしたし、ヒロイン気取りのユーミリア嬢の完全なる捏造ですから私が勝つのは当然として……。
このように敵前逃亡されますと、折角入れた気合が空回りし、不完全燃焼になってしまった感は否めません。
でもこれで一旦は、一件落着……ということでよろしいのかしら?
と言いますか、祝いの席を好き勝手に引っ掻き回していかれた方々のおかげで、舞踏会場の雰囲気はもはや最悪なのですが……困りましたわ。
一人、残される私の身にもなって欲しいものです。私だって早く、この場から退出してしまいたい……。
突然始まり、唐突に終わってしまった尻切れトンボの茶番劇に、否応なく付き合わされる羽目になった貴族の皆様方も、この結末にはポカンとなさっていらっしゃいますし……気まずいですわ。
私も他人事のようにポカンとしたいところですけれど、思いっきり当事者ですから残念ながら他人の振りなど出来ませんし。
そもそもこの舞踏会は私と第一王子殿下の婚約式を祝う、前夜祭だったわけですしね?
王家から押し付けられた婚約を白紙に戻せる絶好の機会ですから、都合よくこの場を利用させていただきましたが、おバカさん達の相手はとっても疲れました……。
やれやれとため息をついたアンドレアに、彼女によく似た容姿の背の高い青年貴族が二人、近づいてきた。
「少なくとも深窓のご令嬢なら、町娘ような形振り構わない走り方をされるとは思えないな」
「そうだね、一人で保身に走ったところなんかも、随分と強かで逞しいじゃないか」
嘘を捏造し他人の婚約者を奪い取っておきながら、バレそうになるとその場から一番に逃げ出したユーミリアに向かって毒を吐く。
「お兄様達……」
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