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第二章 開拓村
第211話 町から離れる
しおりを挟む「最後にご挨拶できてよかったですね」
夢見亭から出たところで、リノがこっそりと囁いてきた。
「うん。そうだね」
女将さんとの別れは昨日の夜に済ませておいたしね。
「二度と会えなくなるってわけじゃないのは分かってるんだけど……やっぱりちょっとさみしいかも」
「ええ、そうですね。でもだからこそ、最後がこういう軽い感じのお別れでよかったと思いません?」
「あぁ……うん。そうかも」
私が頷くと、こっちをじっと見ていたリノと目が合って、どちらからともなく微笑む。
拍子抜けするほどあっさりと旅立つことになったが、一人じゃないことで心は落ち着いていた。
早朝の今、陽は昇っていても朝霧が出ているため視界が悪い。
幸い、まったく見えないわけではなく、少し遠くは見えづらいという程度だ。
冒険者として活動するには不利だけど、なるべく人目につかずに町から離れたい私達には良かったかも。霧に紛れて行動できるから、個人の判別がしにくくなると思うし。もしかしたら、ここでも『幸運』スキルがいい仕事してくれたのかもね。
そんな風に思いながら馴染みの屋台で昼食を買い、しばらく歩くと東門が見えてきた。
私たちは北の森での採取と討伐を主にしていたからよく利用するのは北門だった。だから、こんな時間に東門に来たのは多分、二回目だけどやっぱりここが一番冒険者が多いんじゃないかな。
北門前なんて地元の樵さんや猟師さん達が中心で、冒険者なんていつも数組しかいなかったから何か新鮮です。
三人共に外套のフードを深く被っているし、この霧だから見つけられるか心配だったんだけど、杞憂だったみたい。
ラグナードは冒険者の中に混じっても一際背が高くて見つけるのは簡単だった。それに彼は早くから私達に気づいてくれてたようで、軽く片手を上げて合図してくれた。いつも先に来て待っててくれるんだよね。さりげない気遣いが嬉しい。
「おはようございます」
「よお、おはよう」
「おはよう。お待たせしました」
「うん、大丈夫。俺も今来たとこだから」
予定通り開門前に東門前で合流すると、下手に注目を浴びないようにと小声で短く挨拶を交わすだけにしていく。
待っている時もラグナードが一緒にいてくれたからか、特に絡まれる事もなく開門時間になる。
いくつもの冒険者パーティーが東門を抜けるのに紛れて、私達も町を出た。
門の外には広大な草原が広がっているんだけど、ここも霧で見通しが悪そうだ。
あっという間に散り散りになっていく冒険者の姿も、離れれば離れるほどぼんやりと霞んで識別しにくくなる。これなら私達も上手く行き先を誤魔化せそう……よかった。
「さ、行くか」
「「了解」」
しっかりと背負子を背負い直し、ボトルゴードの町を背に東の草原へと足を踏み出した。
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