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第一章 辺境の町

第180話 全然秘密に出来ていませんでした……

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 さて、デザートまで楽しんだ後は、腹ごなしに皆で干し肉作りをすることに……。

 スモールボアのお肉を、二人がどんどん薄切りにしていってくれるので、こちらも次々と香草塩を振って揉み混み、下味をつけていく。

 今回は丁度いいことに、先程焼き肉をした時のソースが少しずつ残っている。せっかくなのでそれも使ってみた。

 味付けは全部で四種類に……これは食べ比べるのが楽しみですねぇ。

 再度、火を起こして鉄板を温めたら薄切り肉に軽く火を通す。その後は魔法で程よく乾燥させるだけで出来上がりです。
 リノに教えてもらった干し肉作りだけど、作業工程は少ないし、短時間で出来て楽チン! この世界に合った方法を聞けて良かったよ。



 量が多いので忙しく手を動かしながらも、口は空いているのでおしゃべりをしている。

 話題は目前に迫った雨の月について。早いもので、この世界に来てからもうすぐ二ヶ月になる。待ちに待った茸狩りの季節が始まるんだ。

 日本だと大体、茸狩りって秋が盛んだけど、こちらだと六の月、 雨の月とも呼ばれる来月が最盛期になる。この時期にしかない稀少な茸もあり、一年分の収穫をすると言っても過言ではないそう。

「楽しみですねぇ」

「そうだな。そろそろ商人達も買い付けに来るだろうし、賑やかになるぞ」

「稼ぎ時だもんね。あっ、そう言えばまだ防水性が高い外套買ってなかったっ」

「ですねっ。確か魔道具屋さんにいくつか売ってましたし、明日にでも買いに行きましょうか?」

「うん。今なら少しお金に余裕があるし、他にも何か買うものがあれば、ついでに買うのもいいよね?」

「……いや、二人にはあるだろ」

「え」

「ん?」

「……いやいや、お前ら忘れてないか? 俺が『鑑定』スキル持ちで、他人のステータスが見れるってことを」

 少し呆れたような声音で、こっそり囁かれハッとした。

「え?」

「あっ!? も、もしかして?」

「うん、知ってる」

 ラグナードの『鑑定』スキルは、私より高レベル……。ステータスが筒抜けになってしまっていたという事らしい。

「そ、そう言えばそうだった……」

「うわぁ、やっちゃいましたね」

「まあ、この話はまた後でな」

「……はい」

 確かにこんな公共の場ですることではない。珍しい『幸運』スキル持ちが二人もいるという秘密が筒抜けになってしまう。
 例え、ほとんどの宿泊客が出払っている時間帯の、閑散とした宿の炊事場だったとしても気を付けないと。

 それからは三人で黙々と作業を続け、干し肉作りを急ピッチで終わらせた。慣れてきた事もあり、急いだ割には美味しく出来上がった。これで当分保存食には困らなさそうなのは良かったよ。



 炊事場の後片付けをしてから、私達が宿泊している二階の部屋へと上がった。これから作戦会議です。




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