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第一章 辺境の町
第173話 予行演習
しおりを挟む◇ ◇ ◇
「じゃあ今日は、町から出てすぐ北の森に入るって事でいいかな」
「そうですね。昨日は結局、エドさんから聞いていた迷いの魔樹を見たという場所まで辿り着きませんでしたしね」
「まぁ、それは他の個体を一体倒せたことで……よしとしとこう。多分、今日も魔物が多いはずだし慎重にいこうね」
「はいっ。それで森から帰って来たら今度こそ魔道具屋さんか、鍛冶屋さんに行くんですね?」
「その予定。ラグナードがギルドに来るのは閉門する十八時以降らしいから、時間的な余裕はあると思う。安全の為にも、ギリギリまでやれるだけやっておきたいんだけど……どうかな?」
「いいと思います。今日こそマジックキノコが見つかるといいですよね。購入費用の足しに出来ますから」
「うん。武器も魔道具も高いけど、少しでもいいものを買いたいもんね」
「ええ、目標額を稼げるように頑張りましょう!」
昨日、装備を買いにいったんだけど、欲しいものには少しお金が足りなかったんだよね。
なので頑張って稼いで、帰ったら買い物に行きたい。
開門直後に町から出て、すぐ北の森へと入る。外周付近を通り越し、真っ直ぐ森の奥へと向かっていく。
ラグナードと合流した時の予行練習を兼ねての事なので、怖くて挫けそうになる気持ちを押し殺して進んだ。
やはりというか、比較的人の出入りが多いこの付近でも、奥へ行く程人の手が入った場所が減っていき、それに伴い段々と足場も悪くなって来た。それでも、昨日行った所よりはまだましだけどね。
重なりあった枝で薄暗い場所も増えていき、背の高い草が藪になっていて見通しもよくないので、リノが『嗅覚強化』で、私が『索敵』で警戒しながら進んでいく。
数分進んだところで早くも『索敵』に反応があった。たぶん、ポイズンラット。それが八体分ある。結構多いな……。
ハンドサインでリノに注意を促し、慎重に進む。
今日は、迷いの魔樹討伐まで私の魔力を極力温存する方針なので、最小限の魔法でリノの戦闘をサポートすることに……。
群れ全体に効く魔法ということで、聖魔法の『聖火』を使って対処することにした。
目眩まし効果以外にも、小型の魔物ほどこの光を浴びると弱って動きが鈍くなるっていう利点もあるし、保存食作りで使い慣れているから魔力の調整もしやすいからね。
――早いな、もう来た。
左の方の草叢がガサガサと揺れだす。
我先にと、一斉に跳び出してきたのはやはりポイズンラット。
知能が高くないので相手の力量に関係なく、条件反射のように襲いかかってくるから、察知されれば回避も出来ない厄介な魔物。
なんだろ……こう、ヒャッハーって感じ?
反撃されるなんて考えてない、勢い任せの奴なんだよ。意外と表情も豊かだし……凶悪な方向でね。牙を剥き出しにしているから可愛くないんだっ。
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