上 下
118 / 308
第一章 辺境の町

第118話 トゲトゲベリー

しおりを挟む
  


 ◇ ◇ ◇ 



 ――今回採取しようとしているのは、トゲトゲベリーの実。

 今いる場所から向かう道筋にある蔓性の小低木で、やたらと多い大きめのトゲさえ除けば野苺に似ている。

 リノ的には、色んな果物の収穫を楽しみにしてただろうし私もそのつもりだったんだけど、この森にはウルルの樹みたいに比較的おとなしく収穫させてくれる果樹が、あんまりないんだよね。

 そのウルルの樹も、実がなる時期はスモール・ワーム付きみたいだし。以前、冒険者ギルドの受付に討伐したのを持っていった時、エドさんが教えてくれたんだ。この時期は、この実に一番群がってる事が多いんだって。


 もう大丈夫と元気にしているものの、さっき木登りで怖い思いをしたばかりだから、今日はもう高い樹に登るのはやめておきたいし。

 ポポの樹なんかだと、登らなきゃいけなわ採取しようとすると枝に逃げられるわで難易度高めだし、挑戦しない方がいいでしょ? 慣れればアトラクション的な面白さがあるんだけどさ。

 色々考えた結果、ここから近い所で木登りせず、安全に収穫できる小さめの果実と言ったら、やっぱりトゲトゲベリーが一番いいと思ったんだよね。
 私みたいにドライフルーツにしてもいいし、ジャムにしても美味しいらしいし。ちなみに、ジャムにするには、お砂糖は高いから、代わりに森で採れる甘草を入れて、弱火でコトコト煮詰めるといい感じに仕上がるって、宿屋の女将さんが言ってた。是非、一度作ってみたい。

 というようなことを、私が以前、採取した方法と併せて話したところ、賛成してくれたので、その場所へと向かうことにした。



『索敵』スキルで魔物を回避して、『マップ作成』のマーキング通り進めば、順調にトゲトゲベリーのある所まで来れた。近いところにあって良かったよ。

「うわぁ、いっぱいなってますねぇ。美味しそう!」

「そうだね。でも、それ以上近づくとトゲを飛ばしてくるから。ここでちょっと待ってて」

「わかりましたっ。じゃあ先に採取の準備をしときますね」

「うん、お願い」


 ――前回、『鑑定』してるんだけど、念のためもう一度……。


【 トゲトゲベリー

  効能:身体強壮作用

  可食:果皮ごと可能 生食も可    
     ドライフルーツやジャムにすると栄養価が高まる

  採取:黄色く熟した実を採る
     果実を採ろうと近づくとトゲを飛ばして攻撃してくる
      一日経てばすぐトゲが復活するので注意 】


 となっていて、初撃のトゲさえ防げば後は採り放題ってことなんだけど……うわぁっ、本当にもう復活している!

 さすがというか確認してみたら、この前来た時抜け落ちたトゲが完全復活していたのが見てとれた。
『鑑定』情報で「一日経てばすぐトゲが復活するので注意」と知ってても、やっぱり自分の目で直接見るとびっくりするから。

 成長早すぎだよ! さすが異世界、これも立派に不思議植物なんだなぁ。



 まず、『索敵』で周囲に魔物がいないかを確認しておく。

 前回は水魔法を使ったけど、今回は新たに習得した風魔法でやってみることに……。

 少ない魔力で発動させ、果実まで落としてしまわないよう手加減してっと。段々とリノとの共闘の成果が出てきて、威力を調整出来るようになり、使い勝手が良くなってきたんだ。
 

風弾ウィンドショット』!


  フワサァッワサァッと、風の弾丸で空気が動いて軽く葉っぱを揺らす。

 トゲトゲ攻撃を誘発するためなので、これくらいでいい。

 茂みを揺らされたトゲトゲベリーは、何かがが近づいてきたと勘違いして、シュパパパッと、次々トゲを飛ばしてくる。
 その大きさは2~3cmほどで、小さいうえに数が多く、近くにいると全部を防ぎきるのは難しい。

 確認したら飛距離は1~2mほどあって、殺傷力はそれほど無いとはいえ当たりどころが悪ければ怪我ぐらいするし……例えば眼球とかね、当たると失明しそうで怖いからっ。

 魔法があると、遠距離から攻撃できてトゲ問題は一気に解決して比較的簡単にベリーを手に入れられるし、とても便利なんだよね。

 その辺に落ちてる棒とかで突っついてみたり、投擲したりとかして揺らしてみてもいいと思ったんだけど、やっぱりこっちの方が安全だから……。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【転生先が四天王の中でも最弱!の息子とか聞いてない】ハズレ転生先かと思いきや世界で唯一の氷魔法使いだった俺・・・いっちょ頑張ってみますか

他仲 波瑠都
ファンタジー
古の大戦で連合軍を勝利に導いた四人の英雄《導勝の四英傑》の末裔の息子に転生した天道明道改めマルス・エルバイス しかし彼の転生先はなんと”四天王の中でも最弱!!”と名高いエルバイス家であった。 異世界に来てまで馬鹿にされ続ける人生はまっぴらだ、とマルスは転生特典《絶剣・グランデル》を駆使して最強を目指そうと意気込むが、そんな彼を他所にどうやら様々な思惑が入り乱れ世界は終末へと向かっているようで・・・。 絶剣の刃が煌めく時、天は哭き、地は震える。悠久の時を経て遂に解かれる悪神らの封印、世界が向かうのは新たな時代かそれとも終焉か──── ぜひ読んでみてください!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

処理中です...