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第一章 辺境の町

第108話 『幸運』スキル

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 ちょっと脱線しちゃったけど、それよりも今は、一度ちゃんと話し合って、確認しとかなきゃいけないことがある。

「今さらなんだけど、ちゃんと確認しておこうと思って。なし崩し的にパーティー組むことになった訳だけど、リノは本当にそれでいい? エルフの私と組む事で、これから何か不利益を被るかも知れないよ?」

「そんなのいいに決まってます! ローザはこの町に来て、一番最初に手を差し伸べてくれた恩人なんですよ。それに現状、どう見ても私の方がお荷物になってますよね? ローザこそいいんですか私で」

「うん、私は実力とかよりも信用できる人と組みたかったから……リノなら信用できるし一緒に冒険したいと思った」

「……ローザ、うん。私も一緒ですっ、パーティー組みたいです! でも、私もこの体質以外に秘密にしてた厄介ごとがあるんです。家族以外誰も知らない事が……だからローザもそれを聞いてから、もう一度考えて答えを決めてください……」


 膝の上でぎゅっと手を握って、決心したようにまっすぐこちらを見た。


「信用してもらったので、私もローザを信じて秘密をお話しますね。実は私、『幸運』スキルを持ってるんです……」

 ………………。

 うんっ? 

 リノは深刻そうだけど、ちょっとよく、分からない……?


『異世界知識』には、『幸運』スキルが不利益を被るって、そんなの載って無かったよ?

 ただの「運」じゃなくて「幸運」なのに…… 単に幸せを運んでくれるラッキーなスキルって言う認識じゃダメってことなの?


 この世界では私の知らない、何かまずい事があるって言うこと――? 



『幸運』スキルの何がまずいのか、考えてもわかんないから、もうリノに直接聞いちゃおう。

「それが、どうかしたの?」

「…… もしかして、知らないんですか? 『幸運』スキル持ちが狙われるってこと」

「ええぇっ、なんで!? 単に幸せを運ぶスキルなんじゃないの? 狙われるって、それもう『幸運』仕事してないじゃん!? っていうか……さ。わ、私も、持ってたりするんだけど……これって、私も狙われちゃうとかそういう……」

「う、嘘でしょ!? ローザ本当なんですかっ」

 顔をグッと近付け、私の両肩をガシッと掴んで揺さぶりながら、声を潜めて叫んだ。器用ダネ。

 って、近い近い近いっ!

「う、うん。そうだけど……何々っ、やっぱりそんなにまずいの?」

「っ、本当なんですね……。いいですか? よく聞いてくださいねっ。庶民にとっては迷信レベルの話なんですが、昔から、欲深い権力者たちにはまことしやかに信じられている噂があるんです」

 おでこがくっつくぐらいの距離で、誰にも聴かれないように、囁くようにして教えてくれる。



 ――曰く、『幸運』スキル持ちと一緒にいるだけで恩恵にあやかれる。

 ――曰く、『幸運』スキル持ちと協力して魔物を倒すと、経験値が倍増し、運が上がり実力以上の魔物が倒せる他、パーソナルレベルやその他のスキルにも恩恵があり、『幸運』スキルまで獲得出来る。


 ――とかなんとか。 


 さらに、一人よりは二人、二人よりは三人と、スキル持ちを多く手元に集めると、集めたぶんだけの相乗効果が期待でき、運気も倍増するらしい。

 ええぇぇぇぇ――?

 何それ、もしそれが本当ならチートじゃん!?




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