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第一章 辺境の町

第79話 迷いの魔樹④

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 それから迷いの魔樹をもう二体倒した。

 前回の反省を生かして、速攻で火魔法を連打したんだけど、中々上手くいったんじゃないかと思う。
 後は魔樹の弱点である、核の部分が魔力探知とか出来たらもっと正確に狙えるんだけどなぁ。う~ん……どうやるんだろ?



 巨木群に辿り着いた後、虹色の葉を採り終えたところで太陽が真上に来た。

 ここで一旦採取を切り上げる事にする。

 途中で自分用に果実も少し取ったので背負子も八割くらい埋まったし、町まで帰るのにここからすぐ街道へ出ようか。午後からは又、東の草原に行かなきゃだし。

 虫根コブ草の緊急依頼も当分続く予定だから! それに夕食後はリノと、魔法の特訓する約束もあるしね。

 ……なんかすっごく忙しいんですけどっ。予定がぎっしりじゃないですか!

 お金がなくて休みも全然取れないし、異世界まで来て社畜並みに働いてないこれ――!?



 それでもこの日は今までで一番の高額買取になったから、頑張った甲斐があったっ。

 そのお金で数日分の着替えと、念願の革鎧を手に入れることが出来たしね。ようやく紙装備を卒業したよっ。う、うれしい。

 何の付与魔法も付いてなくて、革鎧にしては安物の1500シクルだけど、今までよりはずっと丈夫だし、前に買った鎧下を重ねて着れば、より防御力が上がるっていうからいいんだっ。

 革鎧を買うついでに、鍛冶屋のブルボさんにゴブリンの持ってたロングソードを視てもらったところ、少し研ぎ直せば十分使えるとの事でその場で手入れをしてくれた。
 剣術スキルは持ってないからどこまで扱えるか分からない。でも、今までは身を守る武器が万能ナイフだけだったから、持っているだけでも安心感があっていい。

 ちょうど合う鞘とベルトも見繕ってくれて、こっちは革鎧を買ってくれたおまけだと無料にしてくれたよ、ありがとうブルボさん! お金がないからすっごく助かるよ!



 ◇ ◇ ◇



 夕食後は、リノと魔法の練習。

 あれから、食べなきゃ動けない倒れちゃうっていう症状が一日しか経ってないのに少し緩和された気がするって言ってくれた。
 昨日渡したMP微量回復効果つきのウルルの実のドライフルーツを、一度に食べ切らないで、少しずつ時間をおいて食べてみるように言った事を守ってくれたみたい。
 食欲は変わらないけど、我慢できないような飢餓感が少し減ったみたいで、こんなこと今までなかったってすっごく喜んでくれた。



 なので、今日も一番効果があるらしい聖魔法で『治療』して、念のため支援魔法も重ね掛けしてから練習をしてみることに……。


 最初にするのは、魔力が少なすぎてちょっとしか出来なかったという、魔力操作。

 私のやり方を教えて、二人でやってみる。リノがやってた方法も教えて貰って、どっちがやり易いか試してみたり。う~ん、人に教えるのって難しいや。

 そうして色々試行錯誤している内に、彼女の魔力が底をついたので終了することにした。

 最後に体調を確認したところ、なんだか体が軽くなったって言う感じにとどまったんだけど、何かしらは出来たっぽいのかな、これ?

 一緒にパーティーを組んで冒険したいねって事も話してて、せめて途中で倒れないようにするのが当面の目標。まだ時間はかかりそう。

 短剣を手に入れるまでには、何とかなってるといいけど。

 リノもお金を貯めるのに苦労しているみたい。そうだよね、駆け出しの冒険者は大変なんだよ。
 町中の仕事は安全な分、やっぱり依頼料は安いみたいで宿代と食費で精一杯らしい。
 宿泊している宿はお風呂代が別料金で節約のため入れないというので、聖魔法の『浄化』で全身きれいにしてあげたら、すっごく喜んでくれた。良かった。

 短剣を手に入れられたら一緒に北の森に行こうねと約束をして、その日は帰っていった。




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