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第一章 辺境の町
第64話 そうして、ついに……?
しおりを挟む――虹色の樹の群生地から町に向かって、行きとは別の道を通って進んでいく。
この広い森の中を早く把握しておきたいから、出来るだけ同じ道を通らないようにしているんだ。
『マップ作成』スキルがあるので初めての所でも迷わないしね。その強みを活かしたい。
太陽も遮られ見通しの悪い森の中では、普通は方向感覚が狂うけれど、私にはスキルがあるから短時間で把握できるし。
昨日の虫根コブ草のようなお得な薬草や薬樹、マジックキノコなどの生息地を見つけたい。いくつもマークしておければ採取でも効率良く稼げるかもしれないから。
本当にスキルって、便利。レベル1でも持っているといないのとでは全然違うと思う。
でも、『索敵』や『鑑定』といった実用的で即戦力としてフル活用出来るスキルを複数持っている人って、あまりいない気がする。
経験値が高そうなスキルだし、習得までの時間がかかりそうだから……。私は自分で好きなのを選べたけど、普通はそんなことできないしね。
この世界の住民のスキル構成が分からないから何とも言えないけど、狙ったスキルを全部取れるわけでは無いだろう。最初の一歩というか、スタート地点はかなり恵まれていると思う。
ここで慢心せず、安全性を高めるためにも、もっと色んなスキルが取っていこう。
――行きと同じように、外周に近い森の浅い場所を順調に進んでいる。
強い魔物はやっぱりここら辺には出てこないみたいで、『索敵』で表示されるのは予定通り弱い魔物ばかりでほっとする。
レベルは上がってないけど、今まで倒してきた魔物の種類を大分見分けられるようになってきて、スキルの成長を感じられてうれしい。
使用中は、自分に第三の目があるような不思議な感覚なんだけど、それにも慣れてきた。
ゴブリンの他にはホーンラビットやポイズンラットなどがいて、旅してきた森とそれほど種類は変わらないから、把握しやすいのも助かっている。
出てくる魔物を確実に倒しきり、魔石を回収していく。
何回か同じ事を繰り返しながら進んでいると、行きにはなかった果樹が多く点在してる場所に出た。
少し別のルートを通るだけで、こんな美味しそうな所があったとは! 採取依頼の出ている果物も『鑑定』すればありそうだなぁ。
――果樹園でもないのにこの数は凄い。
近くには初めて見る、ハニー・ビーやビッグ・フライなど昆虫系の魔物がたくさんいて、その大きさと色鮮やかさに驚かされる。
ハニー・ビーなんて蜂蜜色で、飴細工みたいに艶々としている蜂の魔物だけど、なんかやたらと周りにいい匂いを振り撒いてるんだよね。
大きいのにあんまり怖さがなくて逆に困るというか。 戦闘意欲が削がれちゃうよ。
美味しそうな名前のビッグ・フライは、でっかい蝶の魔物。ピンクに黄色の網目模様で、全体的にもふもふした体毛に覆われてるんだ。
これも見た目だけは乙女チックというか……あざといメルヘンカラーで、とっても愛らしいんですけどっ。
――そしてついにはヤツとも遭遇してしまったよ……。
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