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第一章 辺境の町
第16話 不思議がいっぱい
しおりを挟むお昼時にはまた、狩っておいたホーンラビットの肉を捌いて、いっぱいのマジックキノコと一緒に数食分をまとめて調理した。
うん、こうやって肉といっしょに蒸し焼きにして食べると水玉茸もとっても美味しいっ。
それに今日はなんと、パンの実もあるんですよ!
木になる実なのに、食べるとパンみたいな実なんだってっ、不思議でしょ!?
森の中で見つけたその木には、赤茶色くて形はマンゴーに似たパンの実が、鈴なりになってた。
○ズの魔法使いみたいで、ちょっとテンション上がったよね!
『鑑定』してみると、
【 パンの実
可食:果皮ごと可能 生食も可
パンの代用品として広く食べられている
乾燥させると長期保存できる為、
救済植物としても育てられる
採取:実を採る瞬間に赤い汁を噴射してくるので注意
皮膚に直接掛かるとかぶれる 】
と出た。
さすが異世界、不思議植物だな――。
これは是非試食しないとって事で、いくつかの実を気を付けながら採ってきておいたんだ。もぎ取る瞬間、ペペペッと赤い汁を吐き掛けてくるのを躱しながら。
……なんか採取って、一筋縄でいかないやつばっかりじゃないですか? ポポの実もそうだったしっ。
ちなみにポポの実とは……。
【 ポポの実
効能:回避一定時間微上昇
可食:果皮ごと可能 生食も可
栄養価が高く美味
ドライフルーツにするとより甘みが増す
採取:赤紫色の熟した実を採る
果実のなった枝は逃げるので注意 】
という、これまた不思議なやつだった。
でも美味しくて栄養があるって言われたら、いくら採取方法が変でも採るしかないじゃない? どんな味か興味あるし。わざわざ美味って書いてあるぐらいだし、きっとこの世界基準で美味しいっていうことでしょ!?
まあ、この効能と採取条件見たとき、初めは冗談かと思ったよね?
枝が逃げるの上手いと果実に回避の効能が付くとかダジャレなの? 何なのソレ、意味わかんないでしょって!
採ろうとすると果物ごと枝が逃げるとかさぁ……そんなの嘘だと思うでしょ? 私は思った。いやでもこれ本当にマジだったから! 『鑑定』さん嘘つかない。
手を近づけただけで、スルスルフワフワ逃げられた時はどうしようかと思ったよ。分かっていてもびっくりするって!
風で揺れてるとかじゃなく、木の意識で揺らしてるんだって否応なく理解させられた時は少しゾッとしたし。
素早く動くという感じじゃなく、ふわんっふわんっと手からこぼれ落ちるように逃げられちゃうんだよね。掴みどころがないって言うかっ。
例えが難しいんだけど……こう、蚊を退治しようとして頑張ってるんだけど、不思議と手からするりと逃げられちゃう時のような感じ?
殺ったと思ったらスカッと空振りしてたって言う時あるでしょ? そんな感じ!
すっごく木におちょくられてる気分になったよね……。
それでムキーッてなってポポちゃんとバトルしちゃって、無駄に疲れた。何かこの採取で俊敏性とかが鍛えられた気がする……。しっかり実も収穫出来たからもう良しとするけどさ。
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