上 下
6 / 308
第一章 辺境の町

第6話 初めての魔法

しおりを挟む
 

 ステータスが簡易表示しかされない理由は考えても分かんないから、一旦置いておくとして……。


 ――次は身体の状態確認。


 何しろ人からエルフへと、種族からして変わったからね。絶対、違和感というかズレはあるでしょ。

 これはちゃんとやっとかないと!

 まずはそこら辺で走ったり跳んだり投擲したりして適当に体を動かしてみる。どこから何が出てくるか全く分からないので、時々、『索敵』スキルで安全を確認しながらね。

 するとやはり、明らかな違いがあった。種族をエルフにしたからなのか、とっても体が軽い。例えるなら重力が小さく感じるというか、思った以上に素早く動ける。びっくりするほどね。

 例えば軽くジャンプしたつもりでも、余裕で自分の身長くらいは高く飛べたし、全力ダッシュしようとしたら勢い余ってすっ転びそうになったりとかね……ここだけの秘密だけどさ。

 それは投擲に関してもそうで、力いっぱい腕を振ったらやたらと遠くへかっ飛んで行ったのには驚いたよね。あの石、握りこぶしくらいの大きさはあったのに。
 まぁ、狙いに関しては……大幅に外れてましたがなにか? ええ見事なノーコンでしたよ……これは訓練が必要なんだと潔く一回で諦めましたとも。
 武器が無くても、石ならその辺で拾えるから、今すぐ使えたら今後のサバイバルで有利になりそうだなって思って試したんだけど、そう上手くはいかないか。
 やっぱり『投擲』スキルが必要なんだろうなぁ。私、武術系のスキルはひとつも取ってないからね、残念。


 でも、それを除けば結構いい線いっているんじゃない? さっきの木登りも平衡感覚が優れているのか苦もなく上まで登れたし。それこそお猿さんのようにするすると。

 ほんと、あり得ないよね。

 これは木の上で寝ることも考えるべき?

 うん……そっちの方が安全かもしれない。



 他にもびっくりしたことがある。視覚、聴覚もスキルないのが信じられないくらいに良いんだ。これなら『索敵』スキルとの相性もバッチリなんじゃないかな。

 色々わかったし、ここで試しておいてよかったぁ。

 男子運動部のエース並みに動けるし、すごいよね、この体!? なんか明らかに高性能っていうか、自分の体だけど自分じゃないみたい、みたいな感じ。

 まあ、精度を求めず動くなら、だけどさ。

 上手く使いこなせるかなぁ。

 でも、ちょっと安心した。エルフってもっとひ弱かと思ってたから。

 体力や筋力、持久力が人族より低いらしい事は『異世界知識』でわかっていたから覚悟してたけど、想像以上によかった。

 ただそれは地球を基準にした考えであって、この世界の人族は今の私以上に体力やらなにやらがあるってことでしょう? 恐ろしい。最早、超人じゃん。人族怖い。


 だからこそ、エルフの種族特性をはやく伸ばさなきゃいけない。一部の人族とは友好的とは言い難いらしいし。種族的には劣っていないはずだからね。

 なんたって種族スキルが0ポイントの人族に対して、エルフは10もしたんだから。上手く使いこなせればきっと、ね。





 ――というわけで、次は本命、行ってみよう!


 未知の体験、エルフが得意とするらしい、魔法だ――!!

 使えるスキルは頭が理解しているらしく、自然と使い方が浮かんでくる。なんて便利なんだ。

 今出来る魔法技は、というと……。

 水魔法の『水弾ウォーターショット』『水矢ウォーターアロー』、火魔法の『火弾ファイヤーショット』『火矢ファイヤーアロー』『火炎噴射フレイムジェット』『イクスティングィッシュ』、聖魔法の『聖火ホーリーヒート』『小治療ライトヒール』『治療ヒール』『ピュリフィケーション 』、支援魔法の『HP回復』『MP回復』。

 ……以上。

 結構、多いな!?

 順番に試してみて、一通りできたのでほっとした。ちゃんと魔法として使えてる。

 ただ、一つ一つの技の威力は期待したほど強くなさそうなんだよね、残念ながら。レベル1よりレベル2の方が目を見張るほど火力が増すっていう訳でもないし。飛距離は延びてるけどね。少し強いかなって感じるくらい?

 それに、水魔法、火魔法共にほぼ単発技で、かろうじて『火炎噴射フレイムジェット』が小規模の範囲攻撃っぽいから、使い方には気を付けないと。

 魔法は、頭の中でイメージして技名だけ唱えれば発動できたので、それはよかったんだけど、集中しないと空振りしちゃうし時間も掛かる事がわかった。これは、魔物とかと遭遇するまでに少しずつ練習して体に馴染ませといた方がいいんだろうなぁ。


 支援魔法も試してみた。即効性はないので実感はしづらいけれど、でも『HP回復』『MP回復』は今すぐ役に立つという点で取ってよかったスキルだったよ。魔法の練習で減った分は補充された気がする、多分。

 一度掛けると一時間は持つらしく重ね掛けも出来て便利。それに魔力が思ったより減らないから常時発動出来そう。

 この、服の布地だけっていう紙装備でサバイバルするには、体力、魔力が唯一の生命線だからね。

 武術系スキル0だし本当、取ってなかったらと思うとゾッとする。

 ただ、こちらも回復率は低いらしく劇的な効果がある訳じゃない。

 まぁ、レベル1だし過信は禁物か。レベルが上がれば、回復率が微上昇していく感じらしいし。

 今は、無いよりましぐらいに思っといた方がいいかもね。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...