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第一章 目覚めた記憶
第11話 由々しき事態
しおりを挟む――乙女ゲームのシナリオが変わってきているのは、ヒロインが転生者だからではないか……。
確かに、フレデリック様のルートで出会いイベントが起こるまでの間、彼女の存在を全く知らないという設定だったのが狂ってきているのだから、そう考えるのが自然なのだろう……信じたくはないが。
「ヒロインさんのその後の動向も含めて、とっても気になって仕方がないですけれど……。今はいい加減、ここから移動しませんこと?」
何時までもこの場所で立ち話をしているわけにも参りませんし。
入学式直後の教室での初顔合わせをすっぽかしただけでも、随分と悪目立ちしてしまったでしょうから。
「あ、そうですね。そう言えばここは校門前でしたか」
「ええ。早く移動しましょう?」
「はい」
今から教室に戻るのも何なので、とりあえずは寮の方へと向かうことにした。
――歩きながら今後の方針を話す。
「詳しくはまた後日。それぞれが覚えている乙女ゲームの情報を持ち寄って、交換する場を設けるということでいいですか?」
「ええ、概ねは」
「概ね……? 他に何か問題ありましたっけ?」
「フレデリック様、 お気づきではありませんか? 表面上だけ見つめました場合、これは由々しき事態ですわよ」
「え、なに? 何のことです?」
どうやら本気で分からないらしい。
疑問符だらけの彼に、私の懸念を話す。
「ですから、第三者から客観的に見た私達の状況のことです。事実だけ見ると、私を追って貴方がこの学園に入学したという風に、受け取られかねないではありませんか?」
「あぁっ……それは気づかなかった! え、ちょっと待って、それってまずいよね!?」
「ちょっとどころではありませんっ。今頃、きっとそれぞれの婚約者にも情報が行っているのでは?」
「ううっ、そんな……どうしよう。リリーに誤解されちゃうよ」
「その上、こうした目立つ場所で私を捕まえて長々とお話なさるなんて、疑ってくれと言っているものでは? ヒロインさんとどうこうなる前に、身の潔白が危うくなってしまいましたわ……。この始末、どうなさるおつもりですの」
「いやぁ、まいったなぁ。リリーは信じてくれるかな……くれるよね? ね!?」
「知りませんっ」
――この方、今、リリアンヌの事しか考えていらっしゃいませんわねっ。
「一旦、彼女から離れてしっかりと現実を見てくださいませ。攻略対象の皆様方は総じて、素晴らしく頭脳明晰でいらっしゃる設定でしたわよね? 今こそ、そのハイスペックさを役立てる時ではありませんか。責任を取って、何か対策をお考えくださいな」
猪突猛進型で直情的な設定である私が何か考えても、 きっと上手くいかないでしょう。
その点彼なら、ヒロインさんにさえ出会わなければ優秀さが崩れない方ですもの、きっと良いアイデアが出てくるでしょう!
――フレデリック様、期待しておりますわ!
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