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居候【檸檬視点】その2
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忘れ物を届けてもらった時は少し警戒して、家の近くのカフェであった時は更に警戒してしまった。ねこまんまが、そんなことするわけないと思いつつ……念の為出待ちをして話してみると、会社の近くなんだという。
後をつけられていたわけではないと知り、安心した。
あゆみさんのパーク行きたい病が発動した時、ねこまんまが……桜が、行くと言うから自分も行くことにした。
猫耳のカチューシャをつけた桜がキラキラして見えるから不思議だ。
揃えたかのように見える、黄色い耳のカチューシャを桐谷くんがつけようとして、咄嗟に交換してもらう。
いつもなら、なるべく顔が隠れるものにしたはずなのに、どうしたんだーー?
自分で自分の行動がわからない。
途中から二人で回ったパークは、蒼一と来た時より何もかもが煌めいて見えた。
“いつから”とか“なんで”とか、わからない。会わない間も、ふとした拍子に桜のことを考えるようになっていた。
いくら怪しい人がいるからって、家に居候させるなんて、きっと桜じゃなきゃしなかった。
◇◇◇
気付けば席に戻って、3人で狩りをしていた。
桜は攻撃に必死で、チャットを打つ暇はなさそうなのに対し、棗さんはペラペラとチャットを打ちながら狩りをする。
「今日も、棗はトークが絶好調だね」
同じ部屋でゲームを操作する桜が口を開いた。
「だね。二人はなんだかんだ、仲良いよな」
自分で言っておきながら、胸がチリっとした。
「ーーーーーー?」
「ゲームだから、話しやすいんじゃない? オフ会してから、ゲストークはすっかりなくなったどね。男の人同士って、そういうのも結構平気で話すのかなとか本気で考えたよ」
「はは……棗さんが特殊なだけじゃないかな。桜も大変だったな」
実際蒼一とは、そう言う話はあまりしたことがない。しかし彼はこの前初めて彼女ができたのだから無理もないが。
“何か今日、二人ともいつにも増して静かじゃん? どした?”
ゲームの中の棗さんが、そう言った。
“リアルで話してた。今、訳あって檸檬くんの家に居候させてもらってるんだよね”
「あ、それ言っちゃっていいの?」
「ん? 棗ゴールドさんと繋がりないし、大丈夫だと思う」
“ちょっと、何その美味しい状況! 檸檬くん!”
“いや、棗さん絶対ゲスいこと考えてるでしょ”
“現実で困ったこと起きちゃって、たまたま居合わせた檸檬くんが助けてくれたんだよー”
狩場でスキルを発動して敵を倒しながら、棗さんはニヤニヤ顔だ。
“じゃー、俺がせっせとチャット打ってる向こうで、会話しながらヤってるわけだ”
“変なとこでカタカナ入れないでよね。チャットしてゲーム操作しながら話す余裕は中々ないよー”
“だね。リキャストタイムカウントしてるし難しい”
実際次の魔法を打てるまでの時間を数えるから、そこまで話しながらゲームをする余裕はない。
“二人は、付き合ってるわけ?”
“だから違うってーー”
「ごめんね廉くん、棗ってばしつこいんだから」
「大丈夫だけど、狩りしにくいね」
“そろそろ狩り終わりにする?”
その一言で、アイテム精算をしに街へと戻った。
ねこまんまが拾ったアイテムを分配していると、棗さんから個別チャットが来た。
“何があったか知らないけどさ、良かったな檸檬くん”
“どういう意味ですか?”
“ーー? とぼけなくてもいいじゃん? 檸檬くん、ねこまんまのこと好きだろ?”
“この前のギルドオフ会も、俺から離そうと必死だったじゃん。無自覚?”
「ーーっ」
好き? 俺が桜を?
サッと顔が熱くなる。
「あれ、廉くん顔赤いよ? どうしたの」
個別チャットを見られないように、慌てて閉じたーー。
後をつけられていたわけではないと知り、安心した。
あゆみさんのパーク行きたい病が発動した時、ねこまんまが……桜が、行くと言うから自分も行くことにした。
猫耳のカチューシャをつけた桜がキラキラして見えるから不思議だ。
揃えたかのように見える、黄色い耳のカチューシャを桐谷くんがつけようとして、咄嗟に交換してもらう。
いつもなら、なるべく顔が隠れるものにしたはずなのに、どうしたんだーー?
自分で自分の行動がわからない。
途中から二人で回ったパークは、蒼一と来た時より何もかもが煌めいて見えた。
“いつから”とか“なんで”とか、わからない。会わない間も、ふとした拍子に桜のことを考えるようになっていた。
いくら怪しい人がいるからって、家に居候させるなんて、きっと桜じゃなきゃしなかった。
◇◇◇
気付けば席に戻って、3人で狩りをしていた。
桜は攻撃に必死で、チャットを打つ暇はなさそうなのに対し、棗さんはペラペラとチャットを打ちながら狩りをする。
「今日も、棗はトークが絶好調だね」
同じ部屋でゲームを操作する桜が口を開いた。
「だね。二人はなんだかんだ、仲良いよな」
自分で言っておきながら、胸がチリっとした。
「ーーーーーー?」
「ゲームだから、話しやすいんじゃない? オフ会してから、ゲストークはすっかりなくなったどね。男の人同士って、そういうのも結構平気で話すのかなとか本気で考えたよ」
「はは……棗さんが特殊なだけじゃないかな。桜も大変だったな」
実際蒼一とは、そう言う話はあまりしたことがない。しかし彼はこの前初めて彼女ができたのだから無理もないが。
“何か今日、二人ともいつにも増して静かじゃん? どした?”
ゲームの中の棗さんが、そう言った。
“リアルで話してた。今、訳あって檸檬くんの家に居候させてもらってるんだよね”
「あ、それ言っちゃっていいの?」
「ん? 棗ゴールドさんと繋がりないし、大丈夫だと思う」
“ちょっと、何その美味しい状況! 檸檬くん!”
“いや、棗さん絶対ゲスいこと考えてるでしょ”
“現実で困ったこと起きちゃって、たまたま居合わせた檸檬くんが助けてくれたんだよー”
狩場でスキルを発動して敵を倒しながら、棗さんはニヤニヤ顔だ。
“じゃー、俺がせっせとチャット打ってる向こうで、会話しながらヤってるわけだ”
“変なとこでカタカナ入れないでよね。チャットしてゲーム操作しながら話す余裕は中々ないよー”
“だね。リキャストタイムカウントしてるし難しい”
実際次の魔法を打てるまでの時間を数えるから、そこまで話しながらゲームをする余裕はない。
“二人は、付き合ってるわけ?”
“だから違うってーー”
「ごめんね廉くん、棗ってばしつこいんだから」
「大丈夫だけど、狩りしにくいね」
“そろそろ狩り終わりにする?”
その一言で、アイテム精算をしに街へと戻った。
ねこまんまが拾ったアイテムを分配していると、棗さんから個別チャットが来た。
“何があったか知らないけどさ、良かったな檸檬くん”
“どういう意味ですか?”
“ーー? とぼけなくてもいいじゃん? 檸檬くん、ねこまんまのこと好きだろ?”
“この前のギルドオフ会も、俺から離そうと必死だったじゃん。無自覚?”
「ーーっ」
好き? 俺が桜を?
サッと顔が熱くなる。
「あれ、廉くん顔赤いよ? どうしたの」
個別チャットを見られないように、慌てて閉じたーー。
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